BtoB企業にも欠かせない生活者とのコミュニケーション ── インタビュー(II)
幅広い層に訴求する新聞広告で
一般・社内双方に手ごたえ
清水建設
- ◆ BtoB企業ながら世間一般をターゲットに広報宣伝を行う
- ◆ 担い手確保を目指して建設業のイメージアップを図る
- ◆ 広告掲載で得た知見をもとに来年第二弾を
経営トップを中心とした委員会で広報戦略を立案・推進
清水建設 株式会社
コーポレート企画室
コーポレート・コミュニケーション部長
栗本 尚幸 氏
私どもは総合建設会社という、いわゆるBtoB企業ですので、一般の消費者に直接、モノやサービスを提供するビジネスではありません。しかしながら、普段の広報宣伝活動は、広く世間一般に当社のイメージアップを図る目的で展開しています。その母体となるのが、2007年5月に発足したシミズバリュー(SV)推進委員会です。社長を委員長とする8人の役員からなるこの委員会で、全社の広報活動戦略を決めています。
建設業界を身近に感じてもらいたい
SV推進委員会の活動として、08年5月にコーポレートメッセージ「子どもたちに誇れるしごとを。」を発表、続いて6月に第1弾テレビCM「いつかきっと篇」を制作、10月から「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系列)でのCM放映を始めました。CMは、子どもたちがモノづくりに取り組む姿にスポットをあてた「つくるに夢中篇」、従業員の子どもたちが登場する「つくるに夢中 シミズキッズ篇」など、今ではシリーズ7作品を数えます。この間、新聞でもテレビCMと連動した広告を掲載してきました。
BtoB企業ですから、一般の生活者向けに広告を出しても、受注に結びつくわけではありません。それでも広告出稿を続けるのは、私どもの仕事を広く知っていただきたい、建設業界そのものの理解を深めていただき、魅力を感じてほしい、業界の担い手として、建設業を目指す方々が、多く出てきてほしいという想いからです。
新聞広告をメトロの車内ディスプレーで告知
今年8月3日付けの読売新聞朝刊(全国版)に掲載した、日本最大の女子写真サークル「カメラガールズ」とのタイアップ広告も、そうした願いを込めて作成しました。特に今回は、弊社の土木部門からの強い要請があって実現しました。建設会社の事業は、大きく分けるとビルや病院、学校など建物を造る「建築」と、ダムやトンネル、空港・港湾などのインフラストラクチャーを中心とする「土木」の二つがあります。弊社の場合は、どうしても建築のイメージが強いので、土木部門の社員から「もっと土木のことを知ってもらいたい」という声が寄せられ、企画しました。
土木部門と広報セクションとで議論する中で、現在、最盛期の土木現場である八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を一般の方々の目線で切り取ってもらうアイデアが生まれ、「カメラガールズ」さんとタイアップすることになりました。
2017年8月3日 朝刊
カメラの中にカメラ女子とダムの写真が
納まった建設会社らしからぬ新聞広告を掲載
「カメラガールズ」が群馬県の八ッ場ダムの普段入ることができない現場を見学・撮影。広告以外でもダムパシャ特設サイトで多くの写真やムービーを紹介。SNSではダム好き、写真好きが反応した。
掲載後は、一般の方々や社内からよい反応が寄せられました。キャッチコピーの「ダムって、遠い存在だと思ってた。」「暮らしのそばに、じつはドボク。」を読んで、「ダムって、実は身近な存在だったのだな」と感じられた方が多くいらっしゃったようです。
今回の広告の前段として、一昨年と昨年に社会インフラによって一般の方々の暮らしがいかによくなるかをアピールする「家族の心まで近づけたい」というコピーの広告を出しています。いくつかの賞に選ばれるなど、高い評価をいただきました。今回の広告は、さらに幅広い層に訴求することを目的として、読売新聞を選びました。
今回、弊社として初めて、東京メトロの車内ディスプレーで新聞広告を告知する映像を放映するなど、複数媒体を使った大がかりな広告展開を行いました。このたびの広告展開は弊社としては初めてづくしで、チャレンジングなものでしたが、期待以上のご評価をいただいたので、今回の知見を生かして、来年以降予定している土木PR第2弾を展開していきたいと思っています。
青少年に向けた啓蒙活動を実施
清水建設では、新聞やテレビでの広告宣伝活動に加え、「シミズ・オープン・アカデミー(SOA)」「木工教室」など、青少年に「ものづくり」「建設」に興味を持ってもらうための活動を続けている。SOAは2008年9月に開講以来、施設見学会や高校生向けのセミナーなどを開催し、17年8月末までに約1500団体、約4万5000人が参加している。
セミナーを実施
東京木工場による木工教育を開催