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STORYストーリー

自分たちの価値観を突き詰めた「百様図」、
見開き広告に、大丸と松坂屋が共に歩む思いを込める

鮮やかで幾何学的な紋様がひときわ目を引くビジュアルアイデンティティ。新聞記事下の見開き2ページ広告を使って、今回デザインが一新された大丸と松坂屋のショッピングバッグのモチーフ「百様図」が段階的に表現されている。およそ2年をかけて作り上げたモチーフの意味、見開き広告に込められた思いについて、株式会社大丸松坂屋百貨店のお二人に話を聞いた。

右)株式会社大丸松坂屋百貨店 ブランディング戦略室長 兼 営業本部営業企画部部長VMD担当 寺井 孝夫 氏<br>左)株式会社大丸松坂屋百貨店 ブランディング戦略室 百田 光里 氏

右)株式会社大丸松坂屋百貨店 ブランディング戦略室長 兼 営業本部営業企画部部長VMD担当 寺井 孝夫 氏
左)株式会社大丸松坂屋百貨店 ブランディング戦略室 百田 光里 氏

「自分たちは何者なのか」を改めて問い直し、
培ってきた価値観を新たなモチーフのデザインに反映

――今回一新された包材(ショッピングバッグと包装紙)について、デザインの詳細や意図を教えてください

百田 光里 氏

百田氏 新しいデザインに用いられているのは、四角と丸、そして青と緑を幾層もの紙で折り重ねて作った「百様図」というモチーフです。百様図というのは私たちが作ったいわゆる造語で、多様な価値観や個性が重なり合って美しい調和を生み出すという、これまで私たちが大切にしてきた考え方を表現しています。百様図は六層の紙を実際に使って造形しているのですが、何度も紙を切って重ねて、何百通りものパターンをデザイナーと従業員とで試行錯誤しながら、およそ2年の時間をかけて完成させました。こういったデザインを新しくするのは、大丸は35年ぶり、松坂屋は23年ぶりです。丸と緑は大丸、四角と青は松坂屋のシンボルマークをオマージュしていて、ふたつの屋号の歴史を今後も受け継いでいくという思いも込められています。

――どのような経緯で、包材を新しくすることになったのでしょうか。

寺井 孝夫 氏

寺井氏 一つの大きなきっかけになったのは新型コロナです。一時期、実店舗が全て閉鎖となり、お客様との接点はオンラインのみになりました。これまで実店舗でお客様の顔を見て物を売ってきた私たちが危機に直面し、会社として「私たちは何者なのか」ということを改めて問い直す必要性がありました。そうして2022年の春に出来たのがブランディング戦略室です。組織としてまず取り組んだのは、コーポレートとして目指すべきもの、大切にする価値観を突き詰めること。2010年に大丸と松坂屋が一緒になり「株式会社大丸松坂屋百貨店」が発足しましたが、合併以来、自分たちの存在意義をしっかりと認識できていないのではないか、という問題意識がずっとありました。

そうやって議論を重ねる中で何度も出てきたキーワードが「多様性」でした。私たちは「本店のない百貨店」です。その土地のお客様や歴史に育まれた15の実店舗が全国にあり、それぞれがとても豊かな個性を持っています。今の社会に必要とされる多様性を、私たちはもともと企業の文化として大切に培ってきたのではないかという気づきがあったんですね。その思いをデザインに落とし込んだものが「百様図」なんです。四角と丸というありふれた柄が重なり合うことでいろいろな図柄を作り、少し重なりがずれただけで表情が無限に変化する。この細かに変化する図柄の取り合わせを何度も試行錯誤して、私たちがビジュアルアイデンティティと呼ぶこのデザインを作り上げていきました。

スマホケースデザイン

社内のワークショップでは自分だけの色と図柄を重ねて百人百様のスマホケースデザインを作った

首都圏に大部数を持つ読売新聞だからこそ表現できた、
大丸と松坂屋、共に歩んでいくという思い

――今回のリブランディングの一連のプロモーションについて、ターゲットや発信方法で意識したことはありますか。

百田氏 今回のプロモーションでは、お客様はもちろん、従業員に対してもしっかりと届けることを意識しました。実は、実際にお客様向けのプロモーションを開始する前から全国の従業員が参加するワークショップを開催するなど、百様図の持つ意味や込められた思いを社内で共有するさまざまな取り組みをしてきました。その上で改めてこの広告を目にしてもらうことで、「自分たちの会社が、こんなに素敵な発信をしている」と感じて誇りを持ったり、働くモチベーションにつなげてくれたら、という思いがありました。

地方紙や全国紙など、新聞を使ったプロモーションもこだわった点の一つです。「実際に手に取って触ることができる」、「目にした後も手元に残る」、そして「小さな子どもからお年寄りまで幅広く届けられる」といったことは私たちが大事にしている価値に近いんじゃないか。こういった価値のある新聞というメディアは、私たちがやりたいことにフィットしているんじゃないか、という結論に至り、新聞を選択しました。

――読売新聞に掲載した広告は色使いも鮮やかでひときわ目を引きました。百様図が成り立つまでの図柄の変化を表現した美しい広告でした。

図柄の変化を表現した美しい広告

寺井氏 実は、この見開き2ページに大丸と松坂屋両方の広告を掲載したのは読売新聞だけなんです。広告掲載の手法としては、大丸がある地域には緑の大丸のデザインを掲載した広告、松坂屋がある地域には青の広告をそれぞれの地方紙に出稿しています。これに対して首都圏では八重洲に大丸、上野に松坂屋、と両方の店舗があります。そのため、読売新聞のセンター見開き10段を活用して、両店の関係が分かりやすく引き立つ広告を掲載することができました。新聞をパッと開いたときに印象的な二つのカラーが目に飛び込んでくる、首都圏に強いメディアパワーを持つ読売新聞だからこそ出来た大胆な表現だと思っています。2010年に大丸と松坂屋が一緒になって約15年、コーポレートとしてこれからも共に歩むという思いが詰まった、私たちが本当に表現したかったことをうまく表現できた広告になったと感じています。

従業員やお客様からの嬉しい反響
多様性を大事にする百貨店として目指す姿

――実際に広告を掲載して、社内外からどのような反響がありましたか。

百田氏 従業員たちからは、「自分たちらしいデザインを発信できて嬉しい」「百貨店としての誇りを感じた」と嬉しい反響がいくつもありました。お伝えしたようにワークショップを開いたり、各店舗の店長が集まる会議で都度デザインを共有しては意見をもらったりして、みんなで一緒に作り上げた百様図だったので、一緒に働くみんながそれぞれに感慨深いものになったのではないかと思います。また、お客様からもありがたい声をたくさん頂戴しています。広告を見て、新しいデザインのショッピングバッグを手にするために買い物に来てくださった方もいらっしゃると聞きました。デザイン作りからプロモーションひとつひとつを妥協せずにやってきて良かったなと心から感じています。

新しいデザインのショッピングバッグ

――改めて、大丸松坂屋百貨店として目指す方向性や今後のビジョンについて、お聞かせください。

寺井氏 多様であることを大事にして、均一にはならないよう、今後もお客様や取引先の皆様に向き合っていきたいと思っています。その土地その土地の中の素敵なもの、まだ皆様に知られていない価値を丁寧に拾い上げて伝えていけるような、そんな百貨店としてあり続けたい。まだまだ研いていかないといけない部分もたくさんありますし、そういう意味でより良い姿を追い求める企業活動というのは永遠に続いていくんだろうなと思っています。「一様」でないからこその私たちの強み、誇りに思える部分をみんなで共有しながら、まさに「百様」としての価値を大切にしていきたいですね。

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