IT企業が気づいた新聞広告の「強み」 インタビュー(II)
ネットの世界を支えるドメイン「.jp」
その価値が広告紙面でしっかりと伝わった
株式会社 日本レジストリサービス
株式会社 日本レジストリサービス
広報宣伝室 室長
園木 彰 氏
社会インフラを提供
インターネットでは、コンピューターやネットワークを識別するために、住所に相当する「ドメイン名」が用いられています。読売新聞社のウェブサイト(https://www.yomiuri.co.jp)ならば、「yomiuri.co.jp」がドメイン名です。当社は、このドメイン名のように末尾に「.jp」が付くドメイン名の登録や管理を行う唯一の組織です。
「.jp」は日本に割り当てられたドメインです。日本に住所のある個人や組織が登録できるなど一定のルールを設けています。「co.jp」が付くドメイン名は、日本の上場企業の97%が登録していて、一目で日本企業と分かるブランド力があります。
また、「.jp」のドメイン名を持つウェブサイトやメールのアドレスが使えるようにするために、ドメイン名をIPアドレスに変換するDNS(Domain Name System)サーバーを24時間365日体制で運用しています。会社全体として、ネット社会では欠かせないインフラ(社会基盤)を提供するという公益性のある事業を展開しています。
インターネット利用の形は変わり続けていますが、スマートフォンはパソコンと比べて画面が小さく、ドメイン名が目立たなくなりました。いろいろなアプリの裏側でもドメイン名は使われているのですが、利用者からは見えません。それでもドメイン名は、インターネットでやり取りする上で欠かせない大切な存在です。当社の顧客は、ドメイン名を登録する方なので、一般のインターネットユーザーの皆さんというわけではありません。ただ、ドメイン名のエキスパート(専門家)集団として、一般のユーザーにドメイン名の役割を理解してもらうのは責務だと思い、広報や広告活動を行っています。
幅広くリーチする新聞広告
広告媒体は目的に応じて、使い分けるようにしています。インターネットに関する企業ではありますが、一般のユーザーに幅広く伝えようと思ったときに選ぶのが新聞広告です。やはり全国の幅広い層にリーチできるのが特徴です。
テレビCMも幅広く届きますが、15秒や30秒という短時間ですと、伝えられるメッセージの内容は限られてしまいますので、当社のような見えないサービスを説明するのは難しいと感じています。交通広告は、目の前にいる方にはよくリーチしますが、電車に乗られない方も多く、全国を網羅することができません。
テレビCMや交通広告はその場にいる方がたまたま見ていることが多いです。それに比べ、新聞の読者はお金を払って、能動的に情報を取得しようとしている方なので、情報をよく吸収してくれる傾向にあると考えられます。
もちろん、インターネット広告も利用しています。検索連動型広告が多いのですが、主にこれからウェブサイトを開設するような方に、「.jp」を選んでもらうのが狙いです。デジタルでは情報があふれていて、あっという間に流されてしまいますから、「.jp」の価値そのものを訴える広告は新聞が向いていると考えています。
2017年11月7日 朝刊
効果測定で実感「しっかり伝わった」
7月の新聞広告は、無数の糸とメッセージをちりばめ、ネット上の日常のコミュニケーションを表現しています。ドメイン名を正面から説明しても見てもらえません。まずはパッと目を引くことが大事だと考え、この内容にしました。
調査会社を利用して効果を測定したところ、広告の認知度は24%ありました。十分リーチできたという印象です。「当社や『.jp』というドメインがネットを支えている」という考えを持つ方は、広告接触前は20%でしたが、接触後は46%に上昇しました。実際に「『.jp』は単に日本を表すものだと思っていたが、どこかの企業に支えられているとはまったく考えていなかった」といった読者の声もいただきました。新聞広告をじっくり見ていただいたことで、伝えたかったことがしっかり伝わったと受け止めています。
新聞広告での課題は、若い人への接触が減っていることでしょう。ただ、昨年11月には厚切りジェイソンさんを起用した広告などを読売新聞の「就活ON!」のコーナーに4ページ展開しました。これは、抜き刷り広告として就職活動イベントでの配布も行い、若い方への接点として活用できたと考えています。また、親の影響も強いと言われる昨今の就職活動において、親世代からの企業認知にも役立ったのではないかと思います。
2018年7月30日 朝刊
日本レジストリサービス
2000年設立。ドメイン名の登録管理・取り次ぎとドメインネームシステム(DNS)の運用を中心とするサービスを行い、インターネットを支える各種技術の研究・開発にも取り組んでいる。日本に割り当てられた国別トップレベルドメイン「.jp」の登録管理組織であり、JP DNSの運用を行っている。また、国内外のドメイン名の最新動向やDNSの技術情報の発信を行っている。社員数は90人(18年4月時点)。
園木彰(そのき・あきら)氏
大学卒業後、ソフトウェア通信会社にシステムエンジニアとして入社し、Web開発やネットワーク業務に従事。2005年に日本レジストリサービスに入社し、Web担当を経て、広報宣伝室長。ドメイン名や「.jp」についての広報宣伝を担当している。