「東海道新幹線10大ニュース企画」「号外配布」で
東海道新幹線開業60周年記念を迎えた感謝を伝える
東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)は東海道新幹線が2024年10月1日に開業60周年を迎えるにあたり、読売新聞、中日新聞、東京新聞共同による広告企画を実施した。読者からの投票により決定した「東海道新幹線10大ニュース」の記事体広告掲載、東海道新幹線の駅構内での号外配布を行うことで、誰にどのようなメッセージを伝えたかったのか。広報部の粂川浩二部長にお話を伺った。
東海旅客鉄道株式会社 広報部
部長 粂川 浩二 氏
長距離の短時間移動を当たり前にした東海道新幹線
――東海道新幹線60年の歩みについてご紹介ください
粂川氏:かつて東京大阪間の鉄道輸送には6時間半かかっていましたが、1964年の東海道新幹線開業によって4時間に短縮されました。その後3時間10分、さらにのぞみの開業で現在は最速2時間21分の到着が実現しています。開業当初は210km/hだった最高速度も現在は285km/hに到達しました。さらに、今年のピーク時(8/9)には1日あたり483本もの新幹線が運行し、1日の運行が60本だった開業時とは隔世の感があります。
安全面でも開業当初から画期的だったATC(自動列車制御装置)を磨きつつ、地震の際に発せられるP波を検知し自動停車するという新しいテクノロジーの実装や、脱線防止ガードを新たに敷設する等、現在進行形で技術革新を続けております。
東海道新幹線の60年は「長距離の短時間移動を当たり前に」という国民の皆さんの生活様式を支え続けてきた歩みです。また、東海道新幹線の駅の近くに街ができたり再開発が行われたりするなど、社会や地域の発展を支えてきました。
――60周年にあたり、本企画以外に他にどんな取り組みをされましたか
粂川氏:今年2024年は当社以外もさまざまな企業がアニバーサリーイヤーでした。例えばミツカンさんの「味ぽん」、大関さんの「ワンカップ」は当社と同じく60周年、読売ジャイアンツは90周年ということで、タイアップしたイベントを実施させていただきました。また、絵本作家の鈴木のりたけさんには60周年の記念ロゴやポスターのデザインをご依頼。ご覧いただいた皆さんに、上京や家族旅行、受験など、東海道新幹線とのこれまでの関わりを思い出していただけるようなものになったと思います。鈴木のりたけさんはかつて当社の社員で新幹線の運転士として乗務していたこともあったというご縁もありました。
鈴木のりたけ氏のデザインのイラスト
新聞社の資産を活かした新聞社にしかできない企画
――今回、10大ニュース企画を実施した経緯と理由をお聞かせください
粂川氏:まず、60周年を迎えるにあたって一番伝えたかったのは、利用者の皆さんに対する「これまでのご愛顧への感謝」です。それが伝わるような企画をということで読売新聞社と中日新聞社が知恵を絞ってくださいました。その他にいくつかアイディアをご提示頂いたのですが、10大ニュース企画というアイデアが出た時に素晴らしいなと素直に思いました。
ポイントとしては、まず購読者が非常に多いためたくさんの人に感謝の気持ちが届くという点、さらにこれまでの歩みを振り返るにあたって過去の記事を使って頂くことで、そのニュースに対する当時の温度感もお伝えできるのではないかという点です。新聞社ならではの資産を活かした、新聞社にしかできない企画だったと思います。
また、10大ニュースを新聞広告として掲載するだけでなく、10月1日に主要各駅でPR号外を配布するという提案も受け、これまた素晴らしいなと。東京駅、静岡駅、名古屋駅、新大阪駅の4駅で開業60周年を迎える式典を行う予定だったので、それに合わせて号外を配布することで、より多くの人に60周年を振り返っていただくと同時に、私どもの感謝の気持ちをお伝えできると強く感じて、もうこれしかないと確信しました。
PR号外の表面では60年の歩みを紹介、裏面に同日の新聞広告でも掲載した10大ニュースの記事広告を掲載するという構成となりました。表面は富士山をバックに走る東海道新幹線、裏面には当時の紙面が掲載され、ビジュアル的にもインパクトのあるものになって良かったです。
3紙の題字が並んだPR号外
予想を超える2万件の投票。号外配布も予想より大幅に早く終了
――新聞広告、PR号外の反響はいかがでしたか
粂川氏:まず10大ニュースへの投票を募るサイトを8月中旬にオープンしました。短い募集期間でしたが、2週間で2万件の投票をいただきました。ここまでの反響は想定しておらず、さすが新聞社だなと感動しました。
10月1日付の朝刊で結果発表の広告を掲載すると、当社にも多くの「懐かしかった」との声や当時の思い出話をいただきまして、この企画がいろんな方の心に届いたのかなと思っています。
10大ニュース候補の選出に関しては、読売新聞社、中日新聞社からも多くの候補を提案いただき、弊社も一緒に議論した上で、43項目のニュースを選定しました。その中から皆さんに投票していただくという形式で実施しました。10大ニュースに選ばれた記事を見ての発見もあり、例えば3位のドクターイエロー引退は「第3位に選ばれるほどドクターイエローに愛着を持っていただいていたのだ」と驚かされました。
>>>「東海道新幹線10大ニュース」特設サイトはこちら
PR号外は当初始発前の出発式の時間から配布を始め、昼くらいまでに配布終了することを想定していました。ところが、噂を聞きつけてわざわざ新幹線の改札の方まで受け取りに来ていただく方が多くいましたし、TVニュースでの報道などを見てお客様用の電話の窓口にどこに行けばもらえるかの問い合わせもたくさんありました。想定より大幅に早まって、朝9時頃には用意していた部数の配布を終了。SNSなどネット上でも話題になり、非常に注目を集めた施策であったことは間違いありません。
広い訴求エリアと強いインパクトを実感した
――読売新聞と中日新聞によるタッグはどのようなメリットがあったでしょうか。
粂川氏:私どももマスメディア各社とお取引がございますが、競合にあたる2社からの共同提案というのは今まで例がなかったことなので、まずは非常にびっくりしました。強い覚悟を持って提案に臨まれたんだなと。私どもとしてもお話を伺って良いものにしていかなければいけないという気持ちにさせられたのを覚えています。
メリットとして感じたのは3社共同で行うことで、ターゲットとなるエリアが非常に広くなった点。まさに東海道新幹線の運行エリアである首都圏、中部・東海エリア、関西圏の読者層を網羅でき、届けたい層に当社からの感謝を伝えることができました。
さらに号外という点でやはりインパクトがすごかった。紙面の上部に読売新聞、中日新聞、東京新聞の3つのロゴが並んでいるのはやはり普通ではないので、受け取った皆さんも驚かれたようです。また、早朝から新聞社の社員の皆様が駅に立たれ、各駅で5〜9名程度が配布作業にあたっていただきました。両社の本企画への熱意が伝わって嬉しかったです。
号外を配布している様子
「これまでのご愛顧への感謝」をしっかり伝えることができた
――本企画でいちばん伝えたかったメッセージは何でしょうか。
粂川氏:繰り返しになりますが、「これまでのご愛顧への感謝」というのが一番伝えたかったことです。開業以来の累計乗客数は70億人を超え、2023年度の実績ですが、一日平均43.2万人の方にご乗車いただいています。私どもとしては東海道新幹線という日本の大動脈をこれからもしっかり支えていくとともに、より太くしていきたいと考えていますが、それは皆さんからのご支持をいただいてこそ。本企画ではそれがしっかり伝わることを大切に企画を練りました。
――今後、東海道新幹線に関するどのようなプロモーション活動を考えていらっしゃいますでしょうか。
粂川氏:まだ具体的には施策が決まっていないのですが、まずは激甚化する災害にも対応できるよう安全に安定して 輸送を提供する力を向上するとともに個室の導入などサービス面を磨いていきたいと考えています。
――今後、読売新聞に期待することは
粂川氏:引き続き取材を通じて、ファクトに基づく本質をついた報道をしていただくことを、一読者として読売新聞に期待しています。当社は日頃からさまざまな媒体から取材をいただきますし、SNSで情報拡散いただくことも多いですが、やはり報道機関を通した情報発信は安心感があります。読売新聞には日本最大の発行部数を持つ新聞社として、今後そうした強みを持ち続けていただきたいなと思います。当社も報道対象の一つですので、広報部門としてはしっかり情報開示をして真摯に取材対応させていただく所存です。
また、読売新聞は多くの読者を抱えておられますので、当社の広告宣伝につきましても引き続きご協力をいただけますとありがたいと考えています。