「効く」プロモーション事例(Ⅲ)
文化財の本当の美しさ 高精細画像であざやかに
キヤノン
キヤノン株式会社
CSR 推進部長
木村 純子 氏
「紡ぐプロジェクト」には、日本の伝統文化や美を守り、育てていこうという趣旨に賛同し、キヤノンなど18の企業が特別協賛・協賛している。中でもキヤノンは、独自の技術を利用した美術品の高精細デジタルデータを、プロジェクトの公式サイトに提供している。
キヤノンCSR推進部の木村純子部長は協賛した理由について、2007年から同社が行ってきた「綴(つづり)プロジェクト」との親和性が高いことを挙げている。
「キヤノンの技術を活用し、オリジナルに極めて近い高精細複製品を作って寄贈するのが『綴プロジェクト』です。オリジナルの公開は難しくても、複製ならより身近に見てもらうことができます」
重要文化財である京都・建仁寺方丈障壁画は、昭和初期の台風で方丈が倒壊したが、その際に偶然襖(ふすま)がはずされて別な場所にあり、難を逃れた。貴重な文化財をなくしてはいけないと、現在は掛け軸の形に変えて京都国立博物館に保管されている。キヤノンではこの襖絵50面の高精細複製品を作り、建仁寺に寄贈した。オリジナルは掛け軸になっているが、オリジナルに限りなく近い複製の襖が、本来あった場所に戻され、桃山時代に制作された当時の雰囲気で見ることができる。
木村部長は「『綴プロジェクト』と同じ方向を向いているのが『紡ぐプロジェクト』。文化財の修理にまで踏み込んでいるところが素晴らしいと思います」と話している。
キヤノンは、「紡ぐプロジェクト」の公式サイト「紡ぐTSUMUGU:Japan Art & Culture」で紹介される美術品(平面作品のみ)の高精細デジタルデータの取得に協力している。「唐獅子図」(京都・本法寺蔵)は28分割で撮影、独自開発したカラーマッチングシステムで色味などを調整した。文化財の公開の機会は限られているが、「紡ぐプロジェクト」公式サイトでは、世界のどこからでも自由に画像を拡大して見ることができる。
「肉眼では見えなかった金色の毛が、拡大すると見えました。画像データを拡大して初めて、本当のことが分かったのです」と木村部長。高精細画像を詳しく調べることで、日本美術史の新たな視点からの研究にも役立つかもしれない。
◆公式サイト「紡ぐTSUMUGU:Japan Art & Culture」
日本語版https://tsumugu.yomiuri.co.jp 英語版https://tsumugu.yomiuri.co.jp/en