「世界らん展」のプロモーション力
花と緑のライフスタイルを「届ける力」
東京ドーム
株式会社 東京ドーム
興行企画部 副部長
岩村 直道 氏
「ラン好き増やす」イベントに進化
イベント会場としての東京ドームは、巨人戦を中心に年間スケジュールが決まっていく。巨人戦や都市対抗などを含む野球の試合で年間約100日が埋まり、残りの日数で様々なコンサートや文化イベントの予定が組まれる。
2020年で30回目を迎える「世界らん展」もそうした文化イベントの一つ。2019年、「世界らん展日本大賞」から「世界らん展-花と緑の祭典-」と名称を変え、イベントをリニューアルした。それを世界らん展運営委員会の事務局長として手がけたのが、東京ドームで興行企画部副部長を務める岩村直道さんだ。
では、「世界らん展」はどのように変わったのだろうか。「ラン愛好家のためのイベントから、ラン好きを増やすきっかけとなるイベントにしませんかと、関係者の皆さんに呼びかけました」と岩村さんは話す。
まず、ラン以外の植物の展示スペースを増やした。盆栽とランを組み合わせて展示して和のスタイルを紹介したり、物販コーナーで様々な観葉植物や雑貨を販売したり、「花と緑の祭典」になったことを来場者に強く印象付けた。イベントの核となるコンテスト部門でも、生活にランをどのように取り入れるかを提案する「ライフスタイルディスプレイ」というカテゴリーを新設。優秀賞受賞作の一つは、アクリルの透明なイスにランを押し花にして飾るなど、テーブルセッティングでランを取り入れる工夫が評価された。
また、以前は午後5時半までだった営業時間も変えた。勤め帰りに立ち寄れるよう、8日間の会期中5日間、午後9時まで営業し、夜6時以降は会場の照明を落として幻想的な雰囲気を演出。これらが奏功して来場者は30~40歳代の女性を中心に増加し、会期を短縮した2016年以来、最多となった。
会場は夜になると幻想的に
一番のフォトスポット、オーキッド・ゲート
「新聞社ならでは」の力を実感
岩村さんは、リニューアルを手がける過程でらん展のイベントとしての可能性の大きさに加え、新聞社がかかわることの影響力の大きさも実感したという。「実行委員会に読売新聞社とNHKが入って熱心に告知をしてくれるので、園芸に関心のある人ならだれでもらん展のことを知っています。ですから、イベントに関わる様々な事業者の方に新しいコンセプトを説明しやすい。加えて、新聞社が主催に入る『安心感』があります。通常の事業であれば、まずは信用、信頼の構築からスタートです。らん展ではそこが必要ないため、東京ドームとしては、イベントをどのように制作、発信していくかにエネルギーを集中できるわけです」
そうした新聞社ならではの広報能力や社会的な信用を活用して、「さらにらん展を盛り上げていきたい」と岩村さん。今後、アジアを中心とした訪日外国人の誘客を図ったり、自治体に出展を呼びかけたり、岩村さんが取り組んでみたいことはさらに広がっているようだ。
憧れの「日本大賞」
世界らん展 組織委員会 幹事長 高橋昌美氏
高橋氏
1987年に川崎の向ヶ丘遊園で開催された「第12回世界蘭会議」の大成功を受け、東京ドームを会場にした「世界らん展」が始まりました。そこから30 年以上を経て、今や3000 種・10万株のランを擁する世界最大級の国際らん展となったことは感慨深いです。世界らん展の審査システムは、そのレベルの高さから世界中のらん展のお手本にもなっていて、ランの栽培をする人たちにとってこの「日本大賞」を取ることは大きな憧れ。また、「世界らん展」におけるラン・緑の即売マーケット(写真下)は、室内で行われるものとしては日本最大でしょう。「世界らん展」を通じて、花があるくらしの提案や花文化の普及に尽力したいですね。(談)
英国王立園芸協会(RHS)発行の雑誌にも
記事が。
世界らん展2020―花と緑の祭典―
2020年2月14日(金)~21日(金)開催