8年ぶりの大展示会「Canon EXPO 2023」と
12回の新聞広告で見せたキヤノンの本気
Canon EXPOは、キヤノンが2000年から5年ごとに開催している一社単独の総合展示会。今回は新型コロナウイルスの影響などで8年ぶりの開催となったが、これまで取引先に限っていた招待者を一般のお客さまにも拡大。展示会の1か月前から「キヤノンの挑戦」、「キヤノンが変わる。」と題した2つのシリーズ全12回の全面広告を掲載し、展示会の機運醸成を図った。
生まれ変わったキヤノンを見せる
キヤノン株式会社
宣伝部 部長 岡本 芳弘 氏
――Canon EXPOはどんなイベントなのか。概要からお聞かせください。
岡本氏:弊社では2000年から5年に一度、ニューヨーク、パリ、上海、東京の4か所でキヤノングループの最新技術や新製品をお客さまに紹介する製品技術展として「Canon EXPO」を開催してきました。本来なら2020年に開催する予定でしたが、今回はコロナなどが重なり、8年ぶりかつ日本のみでの開催としました。これまでキヤノンの事業領域は、カメラや映像機器などの「イメージング」、プリンターや複写機などの「プリンティング」が中心でしたが、この8年間で画像診断機器などの「メディカル」、半導体・ディスプレイ製造装置などの「インダストリアル」事業が大きく成長してきています。「Future Focused. Always. 未来の可能性を、ひろげ続けよう」をスローガンに掲げ、東京国際フォーラムで実施した代表取締役会長兼社長CEOの御手洗の基調講演を皮切りに、展示会をパシフィコ横浜ノースで開催しました。
――展示会場をパシフィコ横浜ノースにした理由というのは?
岡本氏:Canon EXPO 2015までは、お取引先を招待したプライベート展示会でした。今回は一般の方々にも来ていただける展示会にしようということで、国内最大規模の多目的ホールであり、柱のない作りのパシフィコ横浜ノースを会場に選びました。
展示会場では、生まれ変わったキヤノンの姿、そしてこれからも変化し続ける姿を4つのゾーンに分けて紹介しました。1つ目は、会場入り口でまず目に入る「コアコンピタンスの丘」です。約2.4mの高台を作り、そこからメディカルを中心に配置し、プリンティング、イメージング、インダストリアルの4つの事業領域の製品が一望できるようにしました。
①コアコンピタンスの丘、②ソリューションの広場、③ホリスティックの森、④シナジーの泉
ニュースリリース より
会場の様子
会場内を進むと、2つ目の「ソリューションの広場」に入ります。ここでは、前述の4つの事業領域から生まれた製品やサービスが実際の社会や暮らしでどのように役立っていくのかを紹介しました。
さらに進むと、3つ目の「ホリスティックの森」に到着します。キヤノンには、コアとなるイメージング技術を拡張させた「商品に組み込まれている技術」と開発・設計やものづくりなどにおける「商品を生み出す技術」を持っています。これらを複合的に組み合わせることができる開発環境がキヤノンの強みであり、「ホリスティックの森」ではこの取り組みを事例とともに紹介しました。
さらに、それらの技術を使ったキヤノンの新しい分野への展開や共創の可能性を示す場として「シナジーの泉」という4つ目のエリアを設けました。ここでは、さまざまなお客さまとオープンイノベーションで共創ビジネスを作っていこうとするキヤノンの考えを訴求しました。
――会場では、紡ぐプロジェクト※の展覧会「横尾忠則 寒山百得展」の作品もパネル化して展示されていました。
岡本氏:2作品を弊社の大判プリンターで出力し、展示させていただきました。東京国立博物館で開催中の展覧会に展示されている作品の複製を紹介できるということで、キヤノンの技術訴求にもなりますし、話題にもなりました。読売新聞の記事を見て、作品がどこにあるのか尋ねるお客さまもいらっしゃいました。
※紡ぐプロジェクト:皇室ゆかりの美術工芸品や国宝・重要文化財など日本の美を未来へ伝え、世界へ発信していくために、文化庁、宮内庁、読売新聞社が官民連携で取り組む事業の総称。キヤノンは、同プロジェクトに特別協賛。独自の技術を利用した美術品の高精細デジタルデータをプロジェクトの公式サイトに提供している。
一般のお客さま、社員の家族を招待するオープンな展示会に
――新聞広告を見ると、パシフィコ横浜ノースでの展示会は10月19日、20日の開催となっています。
岡本氏:実は今回の展示会は、10月18日から22日までの5日間の開催でした。初日は国内外のお取引先やマスコミ関係者などの招待制の特別内覧会とし、2、3日目は一般公開、4、5日目は社員とその家族を対象に開催しました。会場が都心から離れた横浜だったため、立地の点から多くのお客さまに来ていただけるのか少し懸念もありましたが、結果として来場者は3万人を超え、前回時を上回る盛況となりました。
――展示会の対象を一般、さらには社員とその家族にまで広げたのは、なぜですか。
岡本氏:会社が大きく変わろうとしている中、キヤノンと言うとカメラやプリンターの会社というイメージを持っている一般のお客さまはまだまだ多いですし、社員の家族ですら、キヤノンの事業を詳しく知らない人たちが増えています。扱っている事業領域の幅広さから、社員の中にも他部門のことは詳しく知らないという人もいます。
例えば、キヤノンとメディカル事業を担うグループ会社のキヤノンメディカルシステムズは、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団と共に自家iPS細胞製造装置を開発中ですし、宇宙事業を展開するキヤノン電子では高解像度撮影が可能な超小型人工衛星の開発や販売も行っています。展示会場では、キヤノンの生産技術を使ったおもちゃのブロックの自動組み立てなどを展示し、子どもたちに人気を博しました。社員に生まれ変わったキヤノンの姿、これからも変化し続ける姿を知ってもらう。それだけでなく、その家族にも、自分の親・子どもがこのような幅広い事業領域を手掛ける会社で働いているということを広く知ってもらうのが、今回の展示会の大きな目的のひとつでしたので、前述のように社員のお子さんにも楽しんでいただけたことは喜ばしいことでした。
展示された開発中の自家iPS細胞製造装置
(画像の装置はコンセプトモデル)
――「Canon EXPO 2023 オンライン」※も拝見しました。
岡本氏:リアルの展示会場に並べているものは基本的に全てデジタルでもお伝えしようという方針でした。加えて、そのままでは面白くないので、デジタルならではの演出も加えるなど工夫を凝らしました。
※2023年12月26日に終了
各事業のトップが自らのメッセージを展開
――Canon EXPO 2023に先立ち「キヤノンの挑戦」シリーズの広告を7回、また開催期間中には「キヤノンが変わる。」シリーズの広告を5回掲載しています。その意図は?
岡本氏:2シリーズ計12回の新聞広告で伝えたかったのは「キヤノンは本気だ」ということです。「キヤノンの挑戦」では、各事業の役員に登場してもらいたいと当初から考えていました。それぞれの事業にはリーダーシップを持って活躍している役員がいます。それぞれの役員の事業に対する考えや挑戦を自らの言葉で表現することで、キヤノンの成長力をお伝えしたいと思ったのです。掲載順にもかなりこだわりました。最初に御手洗が現在のキヤノンの全体像を語り、次にCSR・サステナビリティの責任者が語る。その後、半導体製造装置、メディカル、プリンティング、監視カメラなどのイメージソリューション、最後がカメラのイメージコミュニケーション。一般に「知られていないキヤノン」の順です。
また、展示会本番に向けて読者の注目が上がっていくよう開催の1か月前から、毎週2~3日おきに計7回掲載していきました。
――「キヤノンの挑戦」シリーズの制作で工夫した点は?
岡本氏:記事体の広告では、文字量が多くなってしまい、それだけだと読んでもらえません。そこで紙面の上半分はそれぞれの事業を象徴するユニークなビジュアルを入れ、読者の目に止まるようにしました。例えば、最後のイメージコミュニケーションの紙面では、高画質のVR撮影ができるEOS VR SYSTEMの紹介をしていますが、ゴスペラーズさんのVR映像のビジュアルを使い、「なんだろう」と読者の目を引く工夫をしました。また、紙面の文字数も限られていますので、全ては語り尽くせません。詳細は展示会でご覧いただけるよう、紙面に「Canon EXPO 2023」の特設サイトに遷移できる二次元コードを入れ、スマホをかざせば展示会の事前登録ができるようにしました。
――「キヤノンが変わる。」シリーズは目的が違うのでしょうか。
岡本氏:「キヤノンが変わる。」は、展示会が始まるタイミングに合わせ、平日5日間連続で掲載しました。展示会で実際にどんな技術が見られるのか、紙面を通じてお伝えし、集客に繋げるのが狙いです。カメラやプリンターだけではない、今までのキヤノンとは違うグラフィックを使って、「これがキヤノンなの?」と思ってもらえる表現にしました。例えば、「プリンティングの未来が変わる。」のビジュアルは、床と家具以外はほとんど全て、壁紙を含め、キヤノンの家庭向けプリンター、商業・産業印刷機で出力したものです。「こんなきれいな広告を朝から見られてうれしい」という読者からの声もいただきました。夜の真っ暗な埠頭を弊社の最新のSPADセンサーを搭載した高感度カメラで撮影した「社会の安心が変わる。」のビジュアルに対しては「夜、暗いところを明るく映し出せるのは安全面からも社会的によいことだと思う」という声が届きました。
新聞はイベントと連動した告知、採録に効果的な媒体
――今回の12回の広告の掲載は経済紙のほかに、一般紙では読売新聞を選定していただきました。
岡本氏:キヤノンの事業領域において、BtoBの製品、ソリューションが多くなっていることを考えれば経済紙のみの掲載でいいのかもしれませんが、キヤノンの最新技術や変わっていく姿を日本中の多くの方々に知っていただきたく、読売新聞に広告を掲載しました。そういう時に、発行部数約660万部の読売新聞は、非常に有効な媒体だと思っています。特に今回のように、企業の「今」やメッセージを真摯に社会に伝えようと思ったとき、新聞は不可欠な媒体だと思います。
――今回の12回の新聞広告掲載後の反響はいかがでしたか。
岡本氏:新聞読者の皆さまから、これからの社会に有用な技術だから頑張ってほしい、応援していますという好意的なメッセージを多くいただきました。加えて、新聞広告の最大の効果は、世の中に対してはもちろん、社員にも「キヤノンは本気だ」ということを伝えられたことです。会長の御手洗をはじめ各事業トップの役員たちが自分の言葉でそれぞれの事業について責任を持って語った「キヤノンの挑戦」シリーズは、パネルにして各職場に掲出しています。そういうインナーに対する効果も大きかったと思います。
今回の「Canon EXPO」はキヤノン単独で実施した展示会でしたが、イベントと連動した告知、その採録に効果的な媒体は新聞だと思っています。2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ、2021年開催の東京オリンピックでは、報道写真とキヤノンの広告が連動した「一瞬」企画を掲載しましたが、イベントとうまく連動することで、世の中に大きな話題を作ることができました。「紡ぐプロジェクト」のような文化イベントも同様です。その根底には、新聞の信頼性、丁寧に説明すればじっくり読んでもらえる、興味を持ってもらえるという新聞の特性があると思います。