「企業努力」をストレートに訴求して、
報道発表と息の合った新聞広告を展開する
「当たり前を、やめました!」「ギュギューッと、巻きました!」、紙面に並んでいるのは、イオントップバリュの担当社員がお手頃価格を実現するためにこれまで行ってきた数々の“企業努力”。イオンのプライベートブランド「トップバリュ」が出稿した新聞広告の時機と背景について、PR、広告、プロモーション展開を聞く。
イオントップバリュ 取締役
ブランド&コミュニケーション本部長
森 真紀 氏
「トップバリュベストプライス」の広告は意図的にやってこなかった
2024年10月24日朝刊
――トップバリュベストプライス500品目の発売を伝える今回の新聞広告の狙いは、何だったのでしょうか。
「トップバリュ」は、イオンがこだわりを持って企画・開発・製造し、お買い得価格と品質を両立させているプライベートブランドです。トップバリュには、「トップバリュ」「トップバリュ グリーンアイ」「トップバリュベストプライス」の3ブランドがありますが、中でもトップバリュベストプライスは、定番商品を中心にお手頃価格を重視した商品です。お客さまに店頭で直接手に取っていただき、納得して購入していただく商品と位置付けており、これまでメディアを使った広告を意図的に行ってきませんでした。
しかし、昨今の物価高を背景に、お客さまの節約志向が継続しています。本年秋冬にかけても500品目のトップバリュベストプライス商品を新発売、リニューアル発売することから、この10月が、トップバリュの企業努力についてきちんとお知らせするタイミングだと考えました。
――広告の右下にも「トップバリュ」「企業努力」の検索窓がありますが、今回は企業努力を全面に打ち出した広告になっていますね。
今回紙面で紹介した「計画生産」「物流効率の最適化」「商品仕様の見直し」などは、トップバリュのWEB サイトに以前から掲載しているものです。「だから、トップバリュ。~企業努力の取り組み紹介~」というページで、「トップバリュ」「企業努力」で検索すれば、そのページが出てきます。トップバリュのさまざまな企業努力を改めてお客さまに広く知ってもらい、より多くのお客さまに店頭で手に取ってもらいたい。それが今回の新聞広告の狙いです。
――「この『価格』できました。」というキャッチコピーもユニークでした。
これは社長の土谷が発した言葉です。実は、掲載の3日前までは別の文言でした。「企業努力でこの価格が実現できたことを、もっとストレートに言ったほうがいい」という指摘が、そのままキャッチコピーになっています。今の時代、企業メッセージをどう伝えるか難しくなっています。例えば「〇〇宣言」という言い方も、少し間違えれば“上から目線”と捉えられかねません。「この『価格』できました。」は私たち商品を開発した立場からの言葉ではありますが、お客さまに私たちの気持ちをストレートに伝える平易な言葉になったと思っています。
また、今回500品目の開発・製造で行っているそれぞれの企業努力は、お買い得価格を実現するために弊社が常に取り組んでいる、いわば経営方針ともいえるような内容です。商品の品質やおいしさにこだわっているのはもちろんですが、それを取り巻くさまざまなコスト削減にも努めています。その個々の商品の企業努力を説明した文章は、商品担当の社員から原価削減に向けた努力や工場での取り組みをヒアリングし、簡潔な文でまとめたものです。
記者発表と報道のタイミングを合わせたプロモーション展開
――新聞広告を含めた一連の広告、プロモーションは、今回どのように展開したのでしょうか。
プライベートブランドに力を入れていくというグループの方針でスタートした今回の広告・プロモーションは、準備期間が非常に短い中で進めてきました。起点となったのは、10月22日のトップバリュベストプライス500品目発売の記者発表です。プレゼンは社長の土谷が行いました。前の週に「10月の食品メーカーの値上げは約3000品目」いうメディア報道があり、また、プライベートブランドに力を入れていくことを表明したイオングループ決算発表直後の記者発表でしたから、新聞・雑誌社をはじめ多くのテレビ局にも来ていただき、さまざまな企業努力でお買い得価格を実現した500品目の新商品・リニューアル商品について報道いただきました。その記者発表にタイミングを合わせて、店頭POPとチラシは21日から、新聞広告は24日に掲載。テレビCMも急遽制作し、11月13日からオンエアしました。
――店頭POPはどのような形だったのでしょうか。
新聞広告は私たち企業の立場からの言葉でしたが、店頭POPはこれを目印に買ってもらうものなので、「コツコツコスパ。」というお客さま目線のキャッチコピーにしています。チラシも、この店頭POPや商品を複数紹介する形で10月22日から順次展開し、SNSでも毎日1商品ずつ紹介していきました。また、テレビCMは店頭POPと新聞広告を合わせた形で制作しています。
店頭POP
テレビCM
メディアの力を知り、WEBページをブラッシュアップするいい機会に
――広告の反響はいかがだったでしょうか。
予想以上に好意的な反響をいただきました。「安い理由がわかって安心した」「企業の努力が感じられる」という声をいただいたり、SNSにも多くの投稿が見られました。
一方で、今回広告で紹介した商品を多くのお客さまからお買い求めいただいたことで、販売店舗から大量の追加発注が来ることもありました。イオンのプライベートブランドは自社工場を持っておらず、いわば製造委託先様の工場をお借りして、自社で企画・開発した商品を製造いただく仕組みです。そのため製造する時期も予め決まっており、急な追加製造が難しい商品もあります。商品の開発担当社員はその対応に追われながらも、ありがたく受け止めていました。
――広告やプロモーションの今後の方針や計画があればお聞かせください。
今回のように短期間でプロモーションを計画・実施したのは、特殊なケースだと思います。記者発表とその後の報道、広告・プロモーションのタイミングがうまく重なり、大きな反響が得られたと思っています。同じことを意図的にプランニングするのは難しいと思いますが、メディアの力を知る機会になりました。また、トップバリュの企業努力を紹介するWEBページを見直しブラッシュアップする、いいきっかけにもなりました。トップバリュならではのコンテンツ、報道を含めたメディアの力、お客さまとのさまざまな接点を意識して、今後も企業努力や商品価値を伝えていく努力をしていきたいと思います。