次世代エネルギーSAFの認知を向上し、
「世界を希望で満タンに」
コスモエネルギーグループは2025年4月、日本初の国産SAF(Sustainable Aviation Fuel:サフ)の大規模生産を開始した。これに伴い、新聞広告、テレビCM、屋外広告などを用いたコミュニケーションを展開。このあまりに画期的で夢のある新燃料の量産事業におけるプロモーション上の課題と狙いについて話を聞いた。

コスモエネルギーホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部長
笈川 政浩 氏
持続可能な航空燃料「SAF」を日本で初めて量産化

2025年4月7日朝刊
――4月7日に掲載された新聞広告では「SAF」がテーマでした。SAFについてくわしく教えてください。
SAF(Sustainable Aviation Fuel)は化石燃料由来ではなく、廃食用油などを原料とする航空燃料です。従来の航空燃料と比較してライフサイクル全体でCO2排出量を約80%削減でき、環境への負荷を軽減します。EUでは、すでに2025年から域内の空港で供給する燃料にSAFを混合することが義務化されています。日本政府は2030年までに国内のジェット燃料使用量の10%をSAFに置き換えることを目標としています。
――その「SAF」の貴社内での位置づけや、今回の新聞広告出稿の意図について教えてください。
コスモエネルギーグループは長期経営ビジョンとして「Vision2030」を掲げ、次世代エネルギーの取り組みを推進しています。その先駆けとなるのが今回の日本初となる国産SAFの量産化です。すでに複数の航空会社と供給契約を締結。2025年4月から堺製油所(堺市)でSAFの製造を開始しました。
ただし、この事実はまだ広く知られていません。そこで、まずは、「サフ」という読み方を含め、SAFとは何かを広く知っていただくことが重要だと考えました。

コスモエネルギーホールディングスのSAFスペシャルサイトより
新聞広告を使った理由はSAFの認知拡大と採用活動
――新宿駅メトロプロムナードには3mの巨大エビ天のオブジェ付きポスターも掲出しました。新聞広告やテレビCMのキービジュアルも「エビ天」でした。
使用済みの食用油を再利用して、それがジェット燃料としてあの大きな機体を飛ばす燃料になるということ自体が驚きですし、何より地球に対する環境負荷を大幅に軽減することは多くの人の共感を呼ぶはずです。問題は、それをどうわかりやすく伝えるか。身近な食材がエネルギーになっていることをどのように表現するかが重要と考えました。とんかつはどうだろう?唐揚げは?コロッケでは?揚げ物を盛り合わせたオールスターズでもいいんじゃないか、など様々な意見がありましたが、エビの尻尾がビジュアル的にも分かりやすくて面白いということでエビ天にしました。

新宿駅メトロプロムナードに掲出されたポスター(2025年4月28日〜5月11日)
――テレビCMや新聞広告を中心に展開された理由はなんですか。
今回の広告で伝えたかったのは、「SAFという持続可能な航空燃料の存在」と「その日本初の量産化を実現したのがCOSMOである」という2点でした。それを世の中に広く知ってもらうという意味で、テレビCMと新聞広告というマスメディアを有効活用したいと思いました。プリントメディアには雑誌などもありますが、最も多くの方にリーチできるのは新聞であり、新聞に掲載することで情報の信憑性も増します。
実はリクルーティングについても意識しました。採用活動で感じるのは、エネルギー業界というとまだまだ保守的なイメージがある、ということです。SAFという燃料の先進性と将来性が、従来のイメージを見直してもらえるきっかけになるのではないかと考えました。
――こうした未来を見据えた事業は、貴社のブランドに対する考え方とも繋がりがあるのでしょうか。
COSMOのグループ理念とブランドステイトメントに加えて、2024年に「ブランドフレーム」の刷新を行い、コスモエネルギーグループが大切にしたい6つの価値観を定義しました。「誠実」「共生」「安全」はこれまで大事にしてきた企業文化として既に定着しており、「これからも大切にしたい価値観」です。一方、「挑戦」「自発」「進化」はこれからの未来を見据えて「これからより重要になる価値観」です。

コスモエネルギーホールディングス「BRAND BOOK 私たちの『これから』」から

社内的には「誠実」「共生」「安全」と比較した際、「挑戦」「自発」「進化」の価値観がまだ十分に備わっておらず、社外の人からも「挑戦」「自発」「進化」のイメージがある企業として見られていないと認識しています。ですが、コスモエネルギーグループが日本で初めて量産化したSAFは、単なる新しい商品サービスという枠を超え、企業としての「挑戦」「進化」というイメージ醸成にも繋がる事業です。学生さんにもSAFを通じてCOSMOに興味を持っていただきたいと考え、コンテンツマーケティングやデジタル広告等を活用したコミュニケーションも実施しました。
――新聞広告ではどのようなターゲットを意識したのですか。
ビジネスや環境関心が高い層のほか、学生さんやその親世代も意識しました。コスモエネルギーグループが日本で初めてSAFを量産化したことを保護者が知っていれば、お子さんが就職先として当社を選ぶ際に背中を押してくれることもあるのではないかと考えています。
航空業界・エネルギー業界からの好意的な評価
――広告の反響はいかがでしたか。
SAFのコミュニケーションに対し、航空会社をはじめとする業界関係者から好意的な反応をお寄せいただけています。ある航空会社のトップの方からはコスモエネルギーグループが率先して世の中のSAF認知度を向上させるコミュニケーションを進めていることに激励と謝意を頂戴しているところです。また、エネルギー業界の関係者が集う場においても同業他社の方から「共感できる広告」として高くご評価いただけています。今回のような「日本初」を訴えるような広告は、通常、競合他社からの共感は得づらいものですが、「SAFの普及が重要である」という問題意識が共通であるため、ご評価いただけているのだと考えています。
――今後のコミュニケーション展開について教えてください。
SAFに取り組む企業としての存在を広く認知してもらうには、まだ道半ばです。現在のSAF認知度は全体の3割程度であり、引き続き多様なメディアを活用した継続的なコミュニケーションが必要だと考えています。「国産SAFの量産化第一号企業」として、さらに発信を強めていく意向です。
――新聞社に期待することはありますか。
SAFについて、すでに読売新聞の記者の方には堺工場を取材の上、記事を掲載していただきましたが、新聞社に期待することは、「コスモエネルギーグループの広告」ではなく、「SAFそのものの認知向上」にお力添えをいただきたいという点です。SAFという言葉や技術がまだ一般的に知られていない現状を踏まえ、SAFという存在自体が社会に広まるような記事を増やしてほしい。「記事の力」「記者の力」は非常に大きく、社会的認知や関心を広げるうえで不可欠だと考えています。
