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オンラインセミナー「RIKEI BLOSSOM」
三菱グループの理系女性社員が女子高校生を応援

2022年8月27日、三菱みらい育成財団はオンラインセミナー「RIKEI BLOSSOM」を読売新聞と共催した。三菱グループで働く若手理系女性社員と全国から応募した124人の女子高校生とのグループディスカッションなどが行われ、その様子は読売新聞本紙、読売中高生新聞、読売新聞オンラインで紹介された。次世代の人材育成をサポートする三菱みらい育成財団が実施したオンラインセミナーの背景、狙いとは何だろうか。

2022年9月24日全国朝刊に「RIKEI BLOSSOM」の編集特集を掲載

2022年9月24日全国朝刊に「RIKEI BLOSSOM」の編集特集を掲載

藤田 潔氏

一般社団法人 三菱みらい育成財団
常務理事
藤田 潔 氏

――三菱みらい育成財団の理念・活動からお聞かせください。

藤田氏:創業者である岩崎弥太郎が三菱グループの最初の会社を興したのが1870年。三菱みらい育成財団は三菱グループ創業150周年記念事業として、2019年10月に設立した財団です。三菱グループは創業100周年の記念事業として助成事業を行う三菱財団、シンクタンクの三菱総合研究所を設立しています。毎月第2金曜日にグループ主要企業のトップが集まる「三菱金曜会」が開催されているのですが、そこで150周年の記念事業にふさわしい事業は何か、その数年前から委員会を作りさまざまな議論をしてきました。

私たちは今100年に一度といわれる大変革期を迎えようとしています。株主資本主義への疑問、地球温暖化、格差拡大、世界各地で起こる紛争……、こうした複雑な問題は、従来の延長線上にある考え方では対処できません。しかも、解決には長い時間が必要です。そこで我々が注目したのは、高校生を中心とした15~20歳の世代の教育でした。残念ながら今の高校は大学進学のための予備校と化していますが、この時期の教育は創造力豊かに自由に個性を伸ばすためにあるべきです。15~20歳世代への教育プログラムに助成することで、未来の日本を変えていくことはできないか。「次世代人材の育成」が三菱みらい育成財団の役割です。全国の高校、高等専門学校、大学、教育NPOなどにおける新しい教育の取り組みの支援を財団の主な活動の柱にしています。助成対象は2022年12月現在、220団体、参加者数12万人を超える規模になっています。

――読売新聞教育ネットワークの「高校生医療体験プログラム」も助成いただいています。

藤田氏:医師を志す高校生が実際の手術に立ち合うなど、先端医療と地域医療の現場に密着する読売新聞東京本社教育ネットワーク事務局のプログラムですね。上皇さまの執刀医として知られる順天堂医院の天野篤先生が、母校である浦和高校の生徒に「成績がいいから医者になるのではなく、医者になるなら覚悟を持ってなってもらいたい」という思いから始めた活動を読売新聞社が次世代支援企画としてプログラム化したものです。参加できる生徒は限られていますが、一人ひとりの学びを読売新聞の媒体を通じて広く社会と共有することも、プログラムの大切な取り組みであると考えています。

理系を志望する女子高校生のロールモデルに

――「RIKEI BLOSSOM」が発案された経緯というのは?

藤田氏:理系の女性が少ないというのは、財団の理事長である平野が経団連はじめ、さまざまな場で交わした意見交換の中で出てきた課題です。その課題の解決を後押しできるような取り組みができないかというところが最初の出発点でした。

最近の日本では未だに理工系を専攻する学生が少なく、特に女性の比率は2割程度と極端に低く、イギリス・フランス・スウェーデンの約半分の水準です。一方、 国際的な学力調査によれば、日本の女子生徒の理科・数学のレベルは先進国中上位にあります。大学に進む段階でこうしたギャップが生じるのはどうしてか。一つは、「女子は数学が不得意」という無意識の偏見であり、もう一つは、その結果としてロールモデルが少なくキャリアパスが見えないことがありそうです。

そこで考えたのが「RIKEI BLOSSOM」でした。企業内で活躍する理系の女子社員と高校生がディスカッションできる場を設け、社員に大学で学んだことや仕事のことを話してもらえば、それが女子高校生たちにとって1つのロールモデルとなります。理系進学のイメージがわきやすくなり、志望する女子高生に気づきを与えられるのではないかと考えたのです。

――具体的にはどのように展開したのでしょうか。

藤田氏:まず、財団のアドバイザリーボードメンバーのおひとりでもある東京大学生産技術研究所の大島まり先生に社会における理系分野のすそ野の広がりや、社会課題の解決に向けたさまざまな分野との連携などについてお話しいただきました。その後は物理・数学・都市工学・生命科学・応用化学などの理系分野を専攻し、現在は三菱グループ各社の第一線で活躍する若手女性社員25人をメンター役に、同じく理系専攻の女子大学生・大学院生をモデレーターとして、全国79校からエントリーした124人の女子高校生たちとグループに分かれディスカッションするという構成です。

三菱みらい育成財団「RIKEI BLOSSOM 開催レポート」より

――オンラインセミナーを実施する上で苦労された点はなんですか。

藤田氏:実務的な問題ですが、女子高校生の参加者集めです。理系女性社員は三菱グループ各社にリストアップしてもらい、理系の大学生も助成先の大学を通して確保できました。女子高校生も、我々の助成先の学校や、読売新聞の教育ネットワークのコネクションもありますので、簡単に集められるだろうと思っていたのですが、夏休み中の募集ということで、最後まで苦戦しました。

――オンラインセミナー参加者の反応はどんなものでしたか。

藤田氏:「商社・金融・不動産といった意外な業種や、研究職以外にも企画や営業やリスク管理といった意外な職種があることが分かった」「実際に企業で活躍する先輩たちの生の声が聴けたのは初めて」「『あまり専攻に思い悩むことはない。何を専攻しても将来の進路や可能性を狭めることはない』という先輩社員の話を聞いて進路についての迷いや不安がなくなった」といった声が参加した多くの女子高校生から寄せられました。

2022年11月18日付「読売中高生新聞」より抜粋

読売新聞を取り組みのパートナーにした理由

――「RIKEI BLOSSOM」を読売新聞と共催された理由はなんですか。

藤田氏:まず、読売新聞教育ネットワークの「高校生医療体験プログラム」もそうですが、教育分野に積極的にコミットしている新聞社だということ。それから読売新聞本紙だけでなく、読売中高生新聞という中高生のいる世帯で一番読まれている新聞を発行しているということもあります。

「RIKEI BLOSSOM」は女子高校生もそうですが、その保護者に届けたいという強い思いがありました。日本では、いまだに「有名大学に入り大企業に就職する」という画一的な発想から親も子も抜け出せていません。そのため、私たちは「次世代人材の育成」という財団の志を広く浸透させ、社会的認知度を上げていくことが大切だと考えています。「このままでは日本経済は立ち行かない」とビジネスの現場で感じている危機感が、教育現場で起きている課題とつながっていると感じてもらえば、保護者の意識もだいぶ変わってくると思っています。

――オンラインセミナー実施後、読売新聞では9月に本紙の編集特集、11月に読売中高生新聞中面4ページ広告、12月に読売新聞オンラインタイアップと、「RIKEI BLOSSOM」を紹介していきました。

藤田氏:読売新聞のさまざまな媒体を通して「RIKEI BLOSSOM」と三菱みらい育成財団の活動を伝えていただきましたが、すべてそれは高校生の保護者に届くこと、ひいては、より広い社会的認知、理解へとつながることを期待したものです。

読売中高生新聞
読売中高生新聞
読売中高生新聞

10代のための総合紙で発行部数No.1の読売中高生新聞(2022年11月18日付、中面4ページ広告)を使って、特に女子高校生の保護者に理系を志す意義を訴える

2022年12月、読売新聞オンラインのタイアップで理事長メッセージとして
「RIKEI BLOSSOM」開催の意図、財団の活動を伝える
https://yab.yomiuri.co.jp/adv/mitsubishi_mirai/

10年後、日本の教育はどう変わるか

――今後取り組んでいきたい課題はなんでしょうか。

藤田氏:助成事業は現在5つのカテゴリーを設けています。中核をなすのは全国の高校生を対象に彼らの「心のエンジンを駆動するプログラム(カテゴリー1、2)」、理系を中心に大学が高校生を対象に大学レベルの教育プログラムを提供する「先端・異能発掘・育成プログラム(カテゴリー3)」、大学におけるリベラルアーツを再構築する「21世紀型教養教育プログラム(カテゴリー4)」、そして従来の知識伝達教育とは異なる探究型の学び方を探る「教員養成・指導者育成プログラム(カテゴリー5)」です。

財団設立から4年目で理事長も交代する等体制が大きく変わることもあり、この5つのカテゴリーの助成事業と今回の「RIKEI BLOSSOM」も含めて、レビューをすることが先決と思います。実は、私たちの活動は、総事業費100億円、10年という期間限定のもの。産業界には、バブル経済崩壊後30年間にわたって経済の停滞を招いたことに対する自省と再生に向けて事業改革・社会構造改革をやり切らなければならないという切迫感があります。我々三菱みらい育成財団の活動で、10年後の日本の教育はどう変わるのか。その時、この事業をどう捉え、どう考えるか。財団の未来については、10年後の経営者の判断に任せようということになっています。

――ありがとうございました。

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