味の素が発信する新しい形の「共食」とは。
「おかえり新聞」「おかえり新聞ジェネレーター」による広告施策を実施
味の素株式会社(以下、味の素)は、食を通じたウェルビーイングへの取り組みの一環として、新しい「共食」の形を提案する企画を実施した。読売新聞朝刊では新聞広告「おかえり新聞」を掲載し、特設サイトではオリジナルのデジタル新聞を自動生成する「おかえり新聞ジェネレーター」をリリース。アナログとデジタルを組み合わせた施策にはどのような狙いがあったのか、クリエイティブ担当の照喜名省吾さん、メディア担当の山本桃子さんにお話を伺った。

令和の食風景への課題感。「共食」に注目した背景とは

味の素株式会社
クリエイティブ担当
照喜名 省吾 氏
――なぜ「共食」を取り上げることになったのでしょうか
照喜名氏:味の素は「食を通じたウェルビーイング」をテーマにさまざまな取り組みをしています。美味しい食品を提供するだけにとどまらず、食卓や食事をより楽しく嬉しいものにしていくことも、食を通じたウェルビーイングの実現には欠かせません。
当社が行った調査によると、1人で食事をする回数が多い人より、誰かと食事をする「共食」の回数が多い人の方が幸福度が高いという結果が出ています。ここから「共食」はウェルビーイングの実現にとって大事で、共食の価値を発信していくことが社会に何か良いきっかけを与えるのではないかと考えました。
山本氏:また、「共食」というテーマは生活者の皆さまの日々の食卓に寄り添う当社としても取り上げる親和性が高い領域です。なかなか家族が揃って食事をとることが難しい時代だからこそ、意義のある発信になったのではないかと思います。
――共食の訴求に、「おかえり新聞カバー/おかえり新聞ジェネレーター」を実施した理由を教えてください
照喜名氏:新聞広告を折っていくと、遅れて帰ってくる人の食事にかぶせるカバーになり、そこにはその人に向けたメッセージが書いてある。遅れて帰ってきた人は、まずこの食卓カバーを見て家族団らんを体験することができます。さらに二次元コードを読み取り特設サイトにアクセスすると、家族が「新聞ジェネレーター」で制作したオリジナルのデジタル新聞を読むことができます。家族の1日の出来事やメッセージを読むことで、ここでも家族のあたたかさを感じることができる。新聞社ならではの媒体の特長を活かした提案と、一人でも家族に思いを馳せることで「共食」を疑似体験出来るというコンセプトが面白いと感じました。
山本氏:また、時事的なテーマや課題を企画とうまく接着させる点も、新聞社ならではの要素を感じて非常によいなと思います。「共食」という、ある意味真面目で固いと思われるテーマですが、それをそのまま伝えるのではなく、生活者に伝えるための疑似体験を創出するというコンセプトの元で伝える切り口が新しく感じました。
伝わりやすさを重視して、「家族の団らん」をキーイメージにしたメッセージに
――クリエイティブ面、PR面で重視したポイントについて教えてください
照喜名氏:読売新聞と話し合いながら最終的に決まったキャッチコピーが「団らんを贈ろう。」という家族を想起させるものになりました。共食の大切さは家族に限ったことではありませんが、「最近お父さんとご飯食べてないな」「今日は何時に帰ってくるんだろう」という感情が芽生えやすいのは家族ならではなのではないかと感じました。毎日必ず同じところに帰ってくる家族というコミュニティーに対して「一緒に食卓を囲めない家族に“団らんを贈ろう”」というメッセージを届けられると、共感が得られやすいのかなと思いました。
今回の施策は紙面を読むだけでなく、折る、書く、読みとるといった生活者のアクションが必要な場面が多かったので、実際に手を動かしてもらえる仕掛けをどう設計するかも配慮しました。組み立てて使うものであることを理解してもらう、そして新聞ジェネレーターに飛んでもらうことをどうわかりやすく伝えるかなどを何度も相談しながら固めていった記憶があります。
山本氏:新聞紙面の中で最も訴求力が高い朝刊に掲載することは決まっていましたが、施策設計上「いかに新聞を読んでいない多くの方にも今回の企画に触れてもらえるか?」という視点はメディア担当としても重視したいポイントでした。ですので、紙面出稿のみに留まらず、事前のPRや事後のメディア展開を含めてどうこの施策をバイラルさせて、共感の輪を広げられるか、何度も読売新聞と議論の上固めた経緯です。
新聞社ってここまでできるんだという驚きがありました
――施策に対する反響で感じられたことはありますか
照喜名氏:おかえり新聞は読売全国朝刊・朝日全国夕刊・産経全国朝刊に掲載され、これを元にPRを実施し、SNSや他メディアでの拡散が行われました。見てくれた方からは「斬新な切り口だ」「アイデアが優しい」「アナログでもデジタルでも取り組めるところにほっこりした」「食の環境にも取り組む味の素さんさすが」といった温かいコメントをいただきました。難しいテーマだったと思いますが、取り組んでよかったなと思っています。

味の素株式会社
メディア担当
山本 桃子 氏
山本氏:「共食」は大きなテーマでありつつも、ともすると「共食って大事なんだよ」とお説教っぽさも出てしまう可能性もあるかと思います。そうなると、生活者の皆さんにとって遠い言葉になってしまう難しさもあると感じました。様々な生活背景をもち、多様な食卓シーンが拡がるところへ投げかける際に、そこを誤解なく伝えるためには工夫も必要で、今回の取組は当社としても非常に学びになりました。
――読売新聞(新聞社)と一緒に企画を作って感じたこと、今後期待することを教えてください
照喜名氏:今回の企画に関しては新聞紙面だけでなく、新聞ジェネレーターというシステム開発やLP、動画など非常に幅広い範囲をカバーしていただきました。特に新聞ジェネレーターに関してはゼロからの開発だったので、新聞社ってここまでできるんだという驚きがありました。あらゆるメディア・クリエイティブに対してハブとなることでいろんな可能性があるんだなというのが、読売新聞と取り組んで初めて知った点です。
今後も、読売新聞が持つ新聞社ならではの生活者との接点やコンテンツ制作のリソースは頼りにしています。様々な種類のコンテンツを組み合わせて統合的なコミュニケーションを作り上げていくという部分で期待したいです。
山本氏:今回読売新聞から、自主的に様々なコンテンツを組み合わせた提案をしていただいたことで、紙面以外のケイパビリティーを沢山お持ちであることを改めて実感できました。
ここをスタート地点として、社会をより豊かにする楽しくチャレンジングなお取り組みを今後ご一緒できることを楽しみにしています。
