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STORYストーリー

1人でも多くの人に、歯の健康の大切さを伝えたい
コンテンツの狙いと効果~親しみやすさ・分かりやすさ~

全身の健康と深く関係している、お口の健康。厚生労働省では、お口のケアや歯科健診の大切さを伝えるため、動画制作やセミナー開催など、さまざまな啓蒙活動を展開している。昨年度の結果をもとに親しみやすさ、分かりやすさの観点から改善を重ねたコンテンツの意図や反響を聞いた。

梶谷 京子さん

厚生労働省 医政局 歯科保健課 歯科口腔保健推進室 梶谷 京子さん

歯の健康が、全身の健康に大きく影響する

――お口のケアや定期的な歯科健診は、健康を保つ上で非常に重要だと伺っています。改めて、お口の健康が乱れるとどのような影響があるのか、教えてください。

口のケアというと、一般的に、むし歯や歯周病などを防ぐことが目的というイメージを持たれると思うのですが、実はそれだけではありません。口の健康は、全身の健康にも大きく影響するんです。例えば、歯周病は糖尿病や心臓病にも影響があると言われています。口の病気だけではなく、体全体の病気にも関連があるということ、そして健康を保つためには定期的な歯科健診を通じてむし歯などにならないようにする、むし歯などになっても酷くならないうちに治すことが重要だということを、もっと皆さんに知っていただく必要があると思っています。

――自宅でのケアに加えて、歯科健診を受けることもやはり必要なのでしょうか。

そうですね。もちろん、自宅で行う日頃のケアもとても大切です。加えて年に数回、歯科医師や歯科衛生士といったプロフェッショナルによるケアを受けることが、口の中の健康を保つ上では大変重要です。自分だけではどうしても行き届かない部分が出てくる可能性もありますし、自分では特に悪いところがないと思っていても、むし歯や歯周病などが気付かないうちに進行していることもあります。定期的に健診を受けることによって、今、自分の口の中がどのような状態なのか、日頃のケアが正しく行えているかを知ることができます。

課題の「若い世代」に向け、発信力を高めるため意識したコンテンツ

――歯科口腔の健康推進、啓蒙活動を行う上で、課題に感じていることはありますか。

令和5年度に国が行った調査によると、過去1年間に歯科健診を受けた者の割合は、58.8%であり、増加してきているものの、若い世代の受診率は、まだ低い状況です。若い世代でも小学生、中学生といった年代は、学校で健診があるので、みなさん受診されるのですが、大学生や若いサラリーマン、子育て世代の方たちはなかなか健診を受ける機会が少ないのではないか思います。歯科から遠のいてしまう世代の方たちにいかに関心を持ってもらうかが、大きな課題の一つです。

過去1年間に歯科検診を受けた者の割合の年次推移(20歳以上、男女・年齢階級別)
(平成21(2009)年、24(2012)年、28(2016)年、令和5(2023)年)

過去1年間に歯科検診を受けた者の割合の年次推移

厚生労働省調べ

――お口のケアの重要性を伝えるために、どのような発信をなさっていますか。また、課題である若い方に向けて、何か施策で意識したことはありますか。

口のケアや定期的な歯科健診の大切さを伝えるために、「iiha-からだの健康、お口から-」というポータルサイトを立ち上げて、動画やコラムなどのコンテンツを通じて情報を発信しています。サイトを立ち上げて2年目になりますが、特に若い世代に興味をもってもらえるよう、今年はさまざまな工夫をしました。

例えばコラムについて、昨年度のアンケート調査の結果をもとに、歯周病や歯科健診などに関するものだけではなく、ホワイトニングや口臭など、若い方たちが関心を持ちやすいものをテーマに設定しました。それから、お笑い芸人の「土佐兄弟」さんに出演いただき、実際に彼らが歯科健診を受ける動画も作っています。厚生労働省のさまざまな動画を掲載しているページがあるのですが、この動画のサムネイルがその中に並ぶと、いい意味でいわゆる「お役所」らしい動画とは違うものができたかなと思います。

ポータルサイト「iiha-からだの健康、お口から-」

ポータルサイト「iiha-からだの健康、お口から-」

入り口のハードル下げ、楽しく学んでもらうためにさまざまな工夫

――コンテンツに対する反響はいかがでしたか。

個人的に印象に残っているのは、オンラインセミナーを受講してくださった方たちの反応です。昨年度は、対談形式で出演者に歯のケアなどについてお話いただく内容だったのですが、今年度は、「ターゲット層である子どもたちと保護者に届くよう、効果的なコンテンツを作りたい」と考え、読売新聞さんと小学館さんのお力を借りて、子どもが楽しめる、見ている方たちが親子で一緒に参加できる作りにしました。

初めての試みでどうなるのか不安もありましたが、実際に始まってみると、子どもたちはクイズに一生懸命に答えたり、動画に出てくださったタレントさんと一緒に歯みがきの練習をしたり、とても積極的に取り組んでくれました。親子で一緒に参加していただくことができ、みんな本当に楽しそうでした。笑顔があふれるセミナーになり、実施してよかったと心から感じています。省内からも、動画などに関して「面白いね」と好意的な声がたくさんありました。

――いわゆる「お役所」らしくないコンテンツ作りには、どのような意図があったのでしょうか。

一つは、最初の入り口のハードルを下げるという狙いがありました。「歯科について学びたい、詳しく知りたい」という方ばかりではありません。まずは、みなさんに興味を持ってもらうことを意図して今回のような作りにしています。動画を見る最初のきっかけは、「タレントさんに目がいった…」だけかもしれませんが、気軽に目を通していただくことで、楽しく歯科健診の大切さについて知ってもらえたのではないかと考えています。

「歯医者さんはなんとなく怖い」というイメージの方もいらっしゃいますし、「歯科健診って子どもの頃に受けたことはあるけれど、何をされていたのかよく分からない」という方もいらっしゃると思います。歯科健診とはどういうものなのか、具体的にどんなことをするのかを知っていただくことで身近に感じていただけたらいいなと考えています。

1人でも多くの人に情報を届けるために

コラム「自分に合った歯ブラシを選ぶコツ!~みがき方が選択のポイント~」より

コラム「自分に合った歯ブラシを選ぶコツ!~みがき方が選択のポイント~」より

――お口の健康、定期的な歯科健診の大切さを啓蒙していくために、今後やってみたいこと、検討している取り組みなどがありましたら教えてください。

むし歯や歯周病を防ぐことだけではなく、「噛む」「飲み込む」といった口の機能の重要性も合わせて、広くお伝えしていきたいと考えています。口の機能を保つことで、自分の好きなものを味わうこと、バランスの良い食事をとること、また、「話す」「笑う」といったコミュニケーションを楽しむことにつながるなど、口の中の健康を保つことが、様々な観点から長く健康な生活を続ける上で重要だということを知っていただきたいと思っています。

ただし、私たちだけの発信では限界もあります。また、ライフステージごとに様々な課題があります。1人でも多くの方に情報を届けるためにも、いろいろなコンテンツを作り、発信方法を駆使して、あらゆる方向で歯科口腔の健康の大切さを伝えていきたいと思っています。

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