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パノラマ新聞で伝える島の歴史と文化
広報と教育、両面からの情報発信

伊平屋(いへや)村は、沖縄県の最北部、沖縄本島の北方約117kmに位置する離島。この島の文化・歴史情報発信として読売新聞が提案したのが、「パノラマ新聞」だった。単に島の文化・歴史を知ってもらう広報ツールとしてだけではなく、読売中高生新聞、読売ワークシート通信と連携させることで、全国規模で、中高生、教員など特定の読者層にアプローチすることにも成功している。

伊平屋村教育委員会 教育長 石川清一氏

伊平屋村教育委員会 教育長 石川 清一 氏

――伊平屋村は、どのようなところですか。

伊平屋村は沖縄本島の北西に位置し、伊平屋島(いへやじま)と野甫島(のほじま)の2つの島で構成されている自治体です。自然豊かで美しい風景が多く残されていて、沖縄県内でも特に原風景に近い魅力を保っています。アクセスは那覇空港から運天港まで車で約2時間、そこから1日2便のフェリーで約1時間20分かかります。いわゆる“離島”ですが、それがかえって島の魅力を守る役割も果たしています。2025年4月末時点での人口は約1,180人。主要産業は「サトウキビ」「もずく」などの農水産業です。最近はマリンレジャーを中心とした観光地としても注目されています。「クマヤ洞窟」「念頭平松」「ヤヘー岩」は観光スポットであると同時に、村の文化財としても大切にされています。透明度抜群の海に真っ白な砂浜の続く「米崎ビーチ」には、キャンプ地も併設されています。また、毎年秋には「ムーンライトマラソン」も開催されます。月明かりの下を走るマラソン大会で、夜の島の幻想的な風景と地域住民の温かい応援が大きな魅力になっています。

伊平屋村とタブロイド新聞制作プロジェクト

――伊平屋村のタブロイド新聞制作プロジェクトは、どのような経緯で始まったのでしょうか?

このプロジェクトは伊平屋の文化・歴史情報発信事業の一環で、新聞発行は島の歴史民俗資料館の関係人口の増加を目的にしています。観光で島を訪れる「交流人口」だけではなく、村の文化や人々の営みに関心を持ち、継続的に関わってくれる人を増やすことが大きな目標です。令和5年度は比較的小規模な制作物に留まっていましたが、昨年度は村外から新たなアイデアを取り入れたいと考え、プロポーザル方式を採用して公募しました。

――その中から読売新聞の提案が選ばれました。評価されたポイントはどんな点だったのでしょうか。

当初はタブロイド形式の新聞を想定していましたが、読売新聞からあったのはパノラマ新聞8ページ(タブロイド16ページ相当)という思い切った提案でした。新聞紙面4ページがつながったパノラマ新聞は非常にインパクトがありました。そこに伊平屋島の成り立ちや日本最南端の天岩戸伝説とされるクマヤ洞窟、沖縄で最も古い地質が見られるヤヘー岩など、島の美しい風景や歴史・文化がビジュアルとして大胆に配置され、見る人に強く訴える構成でした。このインパクトと、教育的視点を兼ね備えた編集方針が決め手となりました。

パノラマ新聞のPRには、フォロワー数10万人超のインスタグラマーtatsumi.seaさんにも協力をお願いした。
2025年2月14日にはパノラマ新聞を紹介したリール動画も投稿される

――パノラマ新聞のタイトルは「結(ゆい)」ですね。

「結」は沖縄方言で、人と人の結びつきや共同・協働を意味する言葉です。世代を超えて歴史や文化を継承し、島と島外をつなぐ象徴としてこの名称を選びました。情報の受け手として島の中高生から島外の教育関係者・観光客まで幅広く想定しており、視覚的にも直感的にも訴求する紙面を心がけました。

パノラマ新聞を全国の中高生と教育関係者に届ける

――パノラマ新聞はどんなところに配布されたのでしょうか。また、その反響も併せて聞かせてください。

島内では村役場やフェリーのターミナルで配布しましたが、まず聞かれたのは「どこで作ったの?」でした。島外では、那覇の国際通りで行われた「伊平屋観光・物産フェア」で配布しました。来場した那覇商業高校の生徒たちが新聞に興味を持って読み込む姿が印象的でした。県外では、全国の図書館や教育委員会にも配布しています。配布する図書館は伊平屋村歴史民俗資料館の来館実績を踏まえエリアを選定しました。

――読売中高生新聞の広告特集として、パノラマ新聞のダイジェスト版を掲載していますね。

読売中高生新聞の広告特集は、パノラマ新聞のダイジェスト版として制作しています。視覚的にも理解しやすいよう配慮し、文字数を絞りつつも、歴史や文化の要素を盛り込み、パノラマ新聞と合わせて学校教育の一環として「郷土を知る」素材にしています。この読売中高生新聞の広告特集の中でも、パノラマ新聞を希望者にプレゼントしています。

2025年2月21日掲載 「読売中高生新聞」広告特集

2025年2月21日掲載 「読売中高生新聞」広告特集

2025年2月21日掲載 「読売中高生新聞」広告特集

2025年2月21日掲載 「読売中高生新聞」広告特集

パノラマ新聞の配布は、「読売ワークシート通信」でも行いました。新聞に掲載された記事を時事問題にし、全国の教員約2万人に毎週教材として送っているということで、その中でもパノラマ新聞の配布希望校を募りました。配布を希望してきた学校で多かったのは、滋賀県、大阪府、京都府、兵庫県といった関西の学校でした。実は沖縄に修学旅行が多いのも関西圏で、沖縄の文化をもっと知っておきたいということが背景にはあると思います。

読売ワークシート通信A4/6枚 2025年2月26日配信

読売新聞ワークシート通信:教育ネットワーク事務局が毎週水曜日に、小中高校の先生などに無料で提供している教材。時事問題の知識や記述力などが身につくよう、読売新聞や読売中高生新聞、読売KODOMO新聞などを基に、設問と解答記入欄が付いたワークシートに編集して配信している。

広報活動としての情報発信、教育のための情報発信

――パノラマ新聞の中で、石川教育長は「島発ち教育」ということをおっしゃっていますね。

伊平屋村では中学校卒業後、多くの生徒が島を離れて高校へ進学します。そこで大切なのが、島にいる間に心の基盤を育むことです。島の歴史や文化を学び、地域社会の一員として自立する力を養い、島を愛し、島の未来を作る人になること。これが「島発ち教育」の核となる考えです。島を出て、一人でアパート暮らしを始める子も多く、メンタル的にも強く、自立して社会に羽ばたいていけるように教育を目指しています。そういう意味で、今回のパノラマ新聞は子どもたちが島の魅力を客観的に再認識し、自分たちのアイデンティティーを育むための重要な教材になっていると思います。

――今回のパノラマ新聞を中心とした情報発信をどう評価されますか。

広報、教育両面から評価しています。パノラマ新聞は私たちが知らなかった広報提案であり、非常に魅力を感じましたし、多方面から反響がありました。また、読売中高生新聞や読売ワークシート通信などを使って、全国規模で、中高生向け、教員向けなど特定の読者層にアプローチできることは、教育関係者として非常に有益であり、可能性を大いに感じました。今後は、紙の新聞だけでなく、Webや映像コンテンツなど多様なコミュニケーション手法も視野に入れ、「歴史や文化はちょっと苦手」という人にも興味を持ってもらえるような情報発信もしていきたいと考えています。

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