熱量あるIP活用を提供
NEWCONSの“文殊の知恵”
読売新聞社と小学館はこのほど、「IPマッチング」のオーダーメイドサービス「NEWCONS」(ニューコンズ)を開始した。「NEWCONS」はニュースペーパーとコンテンツとSNSをつないだ造語で、商品に合ったキャラクターや物語などIP(Intellectual Property=知的財産)の活用を提案し、ファンの心をつかむタイアップコンテンツの制作から効果的な拡散方法の設計まで行う。
「NEWCONS」の立ち上げメンバーから、小学館第四コミック局ガガガ文庫編集部の星野博規編集長、同広告局IP企画営業室の山口誠課長、YOMIURI BRAND STUDIOの下梶谷敦の3人にサービスが生まれた背景や今後について語ってもらった。
左から、小学館 広告局IP企画営業室 山口誠課長、同 第四コミック局ガガガ文庫編集部 星野博規編集長、YOMIURI BRAND STUDIO 下梶谷敦
NEWCONSが提供するサービスとは
――「NEWCONS」が提供するサービスについて教えてください。
下梶谷 ファンの心をつかむ「IPマッチング」を掲げ、コンテンツの制作からSNSでの拡散まで手掛けます。商品と消費者の間にIPを入れる、IPを媒介することで、その作品のファン層に効率的にリーチする狙いがあります。「NEWCONS」で提案するIPは、小学館の「少年サンデー」とライトノベルレーベル「ガガガ文庫」の作品です。話題化の起爆剤としては新聞広告を活用しますが、最終的に意識していることは、「このタイアップに賛同してくれる皆さんの声の輪がどれだけ広がるか」ということです。タイアップを実現してくれた商品や、企業への感動や感謝といったポジティブな声がSNS上で拡散され、その声がさらに新しいファンを生む。そして集まった声に企業が心を動かされてまた次のタイアップが生まれる――。ファンの皆さんにとっても企業さんにとっても有益なコンテンツを提供していく新しいフォーマットになればと考えています。
――小学館として「NEWCONS」を展開するメリットはどこにあると考えていますか?
星野 読売新聞に掲載されることで、作品としての知名度や認知度がアップします。タイアップやIPを使って何かをする場合はこれまで、みんなが知っているキャラクターとこれから全国展開するような商品など、どちらかと言うと、強い者同士の組み合わせが目立ちましたが、「もう少し認知度を上げたい」という商品とIPを組み合わせたり、ファンに刺さっているキャラクターを商品とコラボレーションしたりすることでの化学反応を期待しています。
NEWCONSが生まれるまで
――小学館と読売新聞が今回、タッグを組むことになったきっかけを教えてください。
下梶谷 2014年に実施された「SUGOI JAPAN」※1で、ライトノベル部門のグランプリを受賞されたのが「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」※2です。当時、星野さんは編集を担当されていて、その当時からのお付き合いです。
星野 その後も内村光良さんの小説「ふたたび蝉の声」※3の編集をご一緒しました。
下梶谷 当時はIP活用企画の話はしていなくて、初めて一緒に広告のお仕事をしたのは2019年の敷島製パンの「超熟」からですね。新聞のビジュアルは、描き下ろしできちんと作りました。ただ当時は、SNSの設計をきちんとすることで反響を含めて企画に厚みが増すところまでは考えが及んでいませんでした。
星野 氏
星野 新聞に作品のイラストが掲載されることを自分たちも広めていくことを考えた時、「ガガガ文庫」が宣伝ツールとして読者にアピールする場所はツイッターです。作者や編集部の公式のツイッターでつぶやくと、「新聞を見た」などユーザーからの反応も大きいです。そこは相性がいいですね。大きな話題作りになると実感しましたね。
下梶谷 その後も一緒に仕事をさせていただく中で、事前にSNSをどう組み込むかをきちんと設計することが重要だということがわかりました。こうしてきちんとSNSでの反響を考えて実施したのが、昨年の日本コカ・コーラです。それまでの経験から「こうすれば結果が生まれる」ということを学んで実施し、大きな反響を得ることができました。
――制作しながらいろいろな知見を積んだわけですね。
下梶谷 その結果、もっとこういう事例ができたら、という話になり、ガガガ文庫から対象作品を広げてフォーマット化しようと、「NEWCONS」が生まれました。
フロント営業からIP企画につなぐ
下梶谷
――「NEWCONS」での3人の役割について教えてください。
下梶谷 読売新聞の営業担当者から相談を受けるのが僕の役割ですね。商材とターゲット、企画を展開する時期や予算なども聞きます。その内容をもとに、「このIPを提案に使わせてほしい」また「この商品にはどんなIPがふさわしいのか」といった相談を山口さんにします。IPが決まると、YBS(YOMIURI BRAND STUDIO)で「オリジナルショートストーリーをやりましょう」「キービジュアルはこんなクリエイティブで」「SNSではこういう風に拡散していきましょう」と企画を設計します。それが実現可能かを、ガガガ文庫なら星野さんから作家さんに相談してもらい、企画の詳細や制作期間などを詰めていきます。
山口 IP営業は「ライセンス営業」ととらえていただくと分かりやすいかもしれません。小学館が発行していたり制作に携わっていたりする雑誌ブランドや書籍などの価値を高め、面白いものとして広めていくためのビジネスの窓口になります。その先に編集部があり作家さんがいて制作の関係者がいます。いわばIP活用の「入り口」のようなポジションで全体をみています。
――いわゆる「広告営業」とは異なるのですか。
山口 氏
山口 そうですね。広告局のポジションにはなるので、その中に雑誌のセールスを担当している媒体担当もいますが、それ以外に新しい形でコンテンツや雑誌ブランドを使って何かを企画したいという際の窓口になります。
IPの相談では、最初は誰もが知っている「ドラえもん」や「コナン」などに目が向きがちです。もちろん、「ドラえもん」や「コナン」もとても魅力的なコンテンツですが、「有名だから使いたい」と希望される場合も多いわけです。そんな時、「この作品には、こんなファンがいる。この人たちに仕掛けた方が効果は高いかもしれません」など相談内容に応じて提案させていただきます。「NEWCONS」では、ガガガ文庫とサンデーのコンテンツを活用しますので、ガガガ文庫についてはご相談いただいた段階で、すべての案件を編集長である星野に話します。
星野 相談された案件は、私から作家の先生に「こういうことできますか」と話をします。
承諾が取れたらスケジュールやクリエイティブの方向性を含めて確認をしてもらって、先生にラフを上げていただくなど、具体的なやり取りに入ります。
タイアップする「必然性」
下梶谷 IP活用をご提案するときは常にタイアップする必然性について考えています。例えば、ドラえもんだったらドラえもんの大好物のどら焼きにかかわる会社であればファンは納得できますよね。さらに、作品に登場していたり関わりがあったりする商材については、ファンも「タイアップしてくれたらいいな」と期待しているケースがよくあります。そういう商材と実際にタイアップするとファンの皆さんも喜んで、商品に対しても好意的な目を向けてくれます。メーカーなど企業に対しても「タイアップを思い切って展開してくれた」とファンの間で感謝が生まれます。脈略のないコラボの場合はファンによってはマイナスの感情も起こるわけです。ちゃんとファン心理に寄り添っていくことを心がけています。
星野 ここ数年、企画を考えるうえで、編集的な視点と営業的な視点が近くなってきていると思います。これまでは、「有名な作品をとりあえず商品のパッケージに使いたい」「何かキャラクターをタレントさんみたいな形で使いたい」というお話をよくいただきました。現在は作品も多岐にわたっている中、SNSをはじめユーザーが自由に発信できるようになり、よりストーリーがわかりやすかったり、生まれやすかったりするようなしっかりした理由がある組み合わせが好まれています。面白いと思ってもらえる企画性や発信したくなる仕掛けがあるといいですね。
拡散の仕組み
下梶谷 「い・ろ・は・すコラボ」は、「一色いろは」というキャラクターが「俺ガイル」の中で「いろはす」とも呼ばれている、という実にシンプルな理由によるコラボながら、毎年多くのファンの皆さんのご支持をいただいています。原作の渡航、ぽんかん⑧両先生が毎年、全身全霊を傾けて取り組んでいただけていることも大きいです。
星野 コラボレーションを聞いた瞬間に、ファンは盛り上がってすごい効果を生むという予感はありました。作家さんと相談をした時にも「面白い」とテンションが上がりました。ファンの反響もポジティブになるだろうし、作家も乗ってくれるという感触がありました。
山口 私もすごくいい企画だと思いましたね。ライセンスの一般的な考え方ではなかなか到達しません。新聞を使う設計は見事だと思いました。
「俺ガイル」は累計で1000万部を超えていて、とても売れている作品ですが、世間一般でみると残念ながらまだそこまでの認知がされていない。でも、商品と見事に連携し、新聞という場所で世間にドンと出て話題になっている。ちょっとうらやましいというか悔しいという気持ちになりましたね(笑)。
新聞を企画の核にするメリット
星野 ライトノベルはマニアックなファンが多いコンテンツです。ファンの規模でみると、認知を上げるにはネット広告でいいと考えがちですが、全国に配られて広い年齢層が目にする新聞に載ることで、ふだん認知しない層にリーチできたと考えています。また、マニアックなファンは、「好きなコンテンツ、キャラクターのグッズを手に入れたい」という欲求が高く、新聞広告を一種の「グッズ」と捉えるようです。新聞広告掲載がSNSで拡散され、紙面をグッズとして手に入れるところまでが「お祭り」になっていると感じています。彼らはWEBやSNSには慣れていますし、無料で見ることができる動画でもそこまで話題になりません。
下梶谷 新聞のメリットはビジュアルが大きいことです。定期刊行物でポスター的な価値があり、全国どこでも買えるグッズになります。
星野 その日しか買えない期間限定のグッズですね。「お祭り」に乗りたいという熱を引き出すことができました。地域によって刷り分けると、「全パターンほしい」というファンによってより「お祭り」が盛り上がりました。
山口 実際にこうした「お祭り」になる作品は多くあります。企画の力を借りて新たなファン層を掘り起こすこともできます。しっかりした世界観があってファンがいる作品のストーリーに沿い、お客さんにとって新たな発見につながるような企画の提案を目指しています。
星野 こうした企画は、ファンにとっては、「ぼくらだけが知っている作品のよさ」をピックアップし、「粋だな」という良いイメージをタイアップ先の企業に抱くこともあると思います。「コラボするなんてこの商品、この会社、わかっている」ということですね。新聞にキャラクターが掲載されることで作品もステップアップしたと感じ、応援してきた作品が世の中に躍り出たというシンデレラストーリーになります。
熱量のある企画はうまくいく
星野 私が現場の編集で、下梶谷さんも作品を読んでいらっしゃったっていう、割とミニマムなところから始まった話が、「NEWCONS」というサービスの誕生のきっかけですよね。
まず、企画として世に送り出したからこそ、いろんな反応があって、さらにサービスの展開を大きくしていって、他の作品でもできるということになり、今、ちょうど広がっているところにいます。こういう協働は、いわゆる「ガワ」から作っていってもなかなか実現しないことかなとは思います。
――人と人との関係性が影響するということですか?
星野 組織の偉い人同士が話したとしても、それは「ガワ」はできるけれども、一つ何かコンテンツを決めて、「じゃあこれでいきましょう」っていうところまでは行かないんじゃないかと思いますね。
下梶谷 そうですよね。それは大きいですよね。付き合いの長い星野さんなら、無理もお願いできるかなと思うところもありますし(笑)。
星野 何か「ガワ」だけ作った企画だと、しょんぼりしちゃうっていうか、静かになってしまうというのはありますね。コンテンツや商品に「熱量」を持っている人たちが面白いと思って進めている企画だったら、うまくいく。私たちはそこを目指しています。
――ありがとうございました。
【NEWCONSでIP活用をご提案するコンテンツ】
NEWCONSについての詳細は弊社の担当者までお問い合わせください。