イケア・ジャパン株式会社 イクオリティで世界のリーダーを目指す
「くらしにSDGs」プロジェクトに参画
ワークブック「SDGs探求ブック ジェンダー平等を考える」表紙
【制作・発行】読売新聞東京本社 教育ネットワーク事務局
【協力】イケア・ジャパン株式会社
日本全国の主に小中高校生に向けてSDGs活動をサポートする読売新聞の「くらしにSDGs~じぶんごとからはじめよう~」プロジェクト。2021年度の活動ではスウェーデン生まれの世界的ホームファニッシングカンパニーであるイケア・ジャパン株式会社様にご参画いただき、SDGsの目標5「ジェンダー平等」をテーマにしたワークブック「SDGs探求ブック ジェンダー平等を考える」をプロジェクト参画の大きな柱として作成しました。また、小中学校では同じテーマで「出前授業」が行われました。
イケア・ジャパンのCommunication Operations Manager、加藤明子(かとう・あきこ)様にイケアのSDGsへの取り組みや今回のプロジェクト参画についてお話をうかがいました。
イケア・ジャパン Communication Operations Manager 加藤 明子 氏
「より快適な毎日を、より多くの方々に」
――まず、イケアの発祥やカルチャーについて、教えてください。
加藤氏:スウェーデンの歴史とカルチャーがイケアの礎になっています。イケアには「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンがあります。イケア発祥の地、スウェーデンのスモーランド地方は資源が少なく、住んでいる人が「いかに協力してより良い暮らしをするか」に重きを置いてきました。イケアのカルチャーの土台には、こうした「より良い暮らしをすること」を日々考える、ということがあります。
――世界で事業を展開されている貴社の、SDGsへの取り組みを教えてください。
加藤氏:イケアは、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」というサステナビリティ戦略を持っています。より多くの人々がより快適で健康な暮らしを送ることができるようにサポートしていきたいと考えています。イケアのサステナビリティに関する目標は、SDGsに沿って2030 年までに達成することを目指しています。まず、地球の資源に限りがある中で、次の世代にどうつないで、地球環境を築いていくか。また人権にかかわる不平等についても真剣に取り組んでいます。こうした中でイケアのサステナビリティへの取り組みには3つの柱があります。
最初の柱は、「健康的でサステナブルな暮らし」です。イケアには「デモクラティックデザイン」という考え方があり、形、機能性、品質、サステナビリティの要素を兼ねたものを多くの人が手に取りやすいように低価格で提供することが、製品開発の段階でマストとなっています。イケアの製品を通じて、より快適で持続可能な暮らしに貢献ができればと思っています。
2つ目が「サーキュラー&クライメートポジティブ」です。循環型ビジネスをサポートするために、店舗の「サーキュラーハブ」と呼ばれるスペースでは、お客さまが使ったイケアの商品を買い取ってメンテナンスしています。家具に別のお客さまのもとで、いわば「第二の人生」を送ってもらう仕組みです。また、2020年の1月時点で使い捨てプラスチックを使った製品は廃止し、現在は再生可能なものへと素材を変更しています。消費者向けのパッケージも2028年までにはプラスチックの使用を廃止し、再生可能な素材またはリサイクル素材に切り替えていきます。
3つ目が「公平性と平等性」です。イケアの従業員は全員が「コワーカー」と呼ばれます。コワーカーの快適な毎日を目指すために「平等」であることが非常に大事です。イクオリティ(平等性)、ダイバーシティー(多様性)、インクルージョン(多様性の受け入れ)に力を入れています。
「ジェンダー平等」についての積極的な取り組み
――日本で重視されているSDGsの取り組みは何でしょうか。
IKEA港北の「サーキュラーハブ」
加藤氏:日本では長きにわたり、サーキュラーに取り組んでいます。また、プラントベースフード(植物由来の食品)の提供など、食のカテゴリーを通じて健康的でサステナブルな暮らしに貢献することにも注力しています。そして、「平等」はより良い暮らしの基盤になります。中でも、「ジェンダー平等」については社内でも取り組みを積極的に行っています。イケアの管理職にあたるリーダーの男女比率はフィフティー・フィフティーで、バランスの良い形になっていると思います。もちろんジェンダー・ペイ・ギャップ(男女賃金格差)もありません。
イケアは、家具や生活の仕方によって家の中の暮らしをより良くできると考えています。家での暮らしにも「平等」を届けていきたい。一緒に住む家族やパートナー、友人との関係性といったところから、「平等」な暮らしが始まると考えているためです。
スウェーデンの冬は非常に寒く、夕方前には暗くなります。家で過ごす時間が長く、家をどう快適にするかを考えます。家での暮らしが大事というのは、スウェーデンの素敵なカルチャーだと思います。家は何よりも大切な場所です。自分の家を「本当に快適だな」「居心地が良いな」、と見た目の住みやすさだけでなく本当に心から住みやすい環境を目指すうえで、お手伝いができればと思っています。
「ジェンダー平等」を「じぶんごと」に
――「くらしにSDGs」プロジェクトにご参画いただいた理由を教えてください。
加藤氏:「平等」が人権の中心であり、良い暮らしの基盤であるという点で、イケアは、「イクオリティ」で世界のリーダーになることを目指しています。加えて、子どもは世界でいちばん大切な存在であるとイケアはいつも思っています。持続可能な社会を築くうえで、これからの時代を担う子どもたちと一緒に「ジェンダー平等」という社会課題の解決に向けて進めていければと考えています。
特に2030年に向けてSDGs目標があります。2030年は、今の小学生、中学生の世代が大人になり、社会の中心になっていきます。様々なことを学んでいる段階の子どもたちが「ジェンダー平等」を「じぶんごと」としてとらえるきっかけを作りたいと模索する中、読売新聞の「くらしにSDGs」プロジェクトの「学びを通じてよりよい未来を築く」というビジョンに共鳴しました。
――実際に「くらしにSDGs」プロジェクトにご参画されていかがでしたか。
加藤氏:今回、様々な取り組みを行うことができました。最も重点を置いていたワークブック「SDGs探求ブック ジェンダー平等を考える」はとても内容が充実していました。内容に深みがあり、多角的に問題をカバーしています。スウェーデン大使、在日スウェーデン商工会議所、内閣府、NPO、イケアのコワーカーのインタビューなどが掲載され、様々な意見が学べる内容になりました。
ワークブックより一部抜粋
ワークブックの内容(一部抜粋)はイケア・ジャパンのHPでも紹介
「出前授業」では、「ジェンダー平等」をテーマに、読売新聞教育ネットワーク事務局とつながりのある複数の学校で行うことができました。授業は、聞いたことを家庭に持ち帰ってもらえるような内容にしたいと考えていました。具体的には「社長の絵を描く」という宿題を出して、何人くらいのお子さんが男性の絵を描いたかというところから始めました。「社長は男性がなるものだ」という「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み、偏見)」に気づいてもらうという作業です。後日、感想やアイデアを記した「アクションシート」から子どもたちの正直な声を聞くことができました。「男女の差があることを初めて知った」、「お父さん、お母さんと話してみた」といった声、「家事・育児をするお母さんを『助ける』『手伝う』という考えがそもそもよくないのではないか」という声もありました。子どもらしいクリエイティブなアイデアを聞けたことは貴重な体験でした。学校現場を訪れたことで、「学校の外の人の声も聞きたい」という先生方の思いを感じ、私たちもそこに答えなければと思いました。
(子どもたちのアクションシートはこちらから見られます)
都内の小学校での出前授業の様子
「国際人権デー」と「国際女性デー」に合わせて新聞広告を掲載
――読売新聞本紙に掲載された広告でのねらいはどんなところにあったのでしょうか。
2021年12月6日全国朝刊
編集記事では、「出前授業」の様子、駐日スウェーデン大使のインタビューを掲載。
加藤氏:12月10日の「国際人権デー」を前にした12月6日の朝刊編集特集下のスペースでの展開は、「家からはじめよう」をキャッチコピーとして、より良い暮らしのために、家での平等を「じぶんごと」として考えてもらえる内容としました。概念的な「平等」というよりは、自分の暮らしの中の「平等」ってどういうことなのだろう、ということを提起したいと考えました。クリエイティブとしては、「より良い暮らし」がビジュアルで伝わるように制作しました。
2022年3月8日(国際女性デー)全国朝刊
3月8日の国際女性デーの当日の広告は、イケア・ジャパンとして、「ジェンダー平等」についてどう取り組んでいるのか、をクリアにお伝えしたいと思い、読み物のように具体的に説明しました。「出前授業」に参加してもらった子どもたちの感想や、「くらしにSDGs」プロジェクトで集まったアイデアも紙面に入れています。イケアで働くコワーカーが日々どのようにジェンダー平等を目指しているかという点も意識してクリエイティブを制作しました。ビジュアルに関しては、毎日「ジェンダー平等」の意識のもと、一生懸命働いているコワーカーたちの生き生きとした表情を全面に出すことを第一にねらいました。
――読売KODOMO新聞と読売中高生新聞には、ワークブックのダイジェスト版が掲載されました。
紙面を切って折りたたむことでダイジェスト版が出来上がる
加藤氏:リッチな内容のワークブックを、小中高校生にもっと広めたいと思い、そのダイジェスト版をタブロイド判4ページで掲載しました。掲載された紙面を切って折りたたんで、ワークブックのダイジェスト版を作る、というアクティビティを入れながらジェンダー平等について学ぶのは、面白いアイデアですよね。私自身も楽しむことができました。
SDGs17の目標すべてにフルスロットルで取り組む
――今後、SDGsの流れで取り組みたい施策について教えてください。
加藤氏:みんながサステナブルで健康的な生活を送ることが持続可能な社会につながると考えています。SDGs17の目標のすべてについて、イケアはフルスロットルで取り組んでいます。引き続き、「平等」については力を入れていきたいと考えています。一企業で解決できる課題ではないので、政府、NPO、NGO、大学をはじめとする教育機関、メディア、市民の皆様と強固な関係性を築き、一緒に動いていけたらと思います。
世界でまだまだ立場が弱い方々の状況を改善するには私たちはどうすればよいか、私たちに何ができるか。社会をポジティブに動かすパワーをどう築き、広めていけるかを考えていきたいですね。
――ありがとうございました。