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編集長・副編集長対談

『マリ・クレール』の来た道、行く道
~日本随一のハイエンド誌はさらに進化する!~

021年6月24日号
2021年6月24日号

今春、誌面が刷新された『marie claire(マリ・クレール)』。これまでのファッションや美容に加え、ライフスタイルやサスティナビリティに関する旬な話題が注目を集めています。さらにウェブサイト『marie claire digital』(marieclairejapon.com)もフルリニューアル。専門記者出身のライターによる深掘りの分析記事も充実し、モードに関心のある人だけでなく、知的好奇心に満ちた読者の幅広い関心にも応えています。そうした誌面とデジタルを横断するコンテンツ制作の舞台裏を、これまでの『マリ・クレール』の歴史も踏まえて、田居克人編集長と高橋直彦副編集長が話し合いました。

田居克人編集長
高橋直彦副編集長

海外コレクションでの出会いから

高橋直彦(以下、高橋) 田居さんと初めて会ったのはイタリア・ミラノでしたね。

田居克人(以下、田居) そう。1998年の10月、アルマーニのレセプションで隣の席になったんですよね。

高橋 こちらは読売新聞の記者になって、初めての海外コレクション取材。緊張の連続だったのですが、田居さんは余裕な感じで……。当時すでに『マリ・クレール』の編集長でした?

田居 ええ。編集長になったのは1997年ですから。

高橋 その後もいろんな場面でご一緒しましたが、この度、副編集長を兼務することになり、コンテンツを一緒に作ることになるとは。

田居 確かに。でも、高橋さんには読売の記者時代にパリコレのリポートなどを何度か書いてもらったりしていますから、実はご縁があったのかも。

『marie claire』創刊号(1937年)

『marie claire』創刊号(1937年)

カルチャー誌としての『マリ・クレール』

高橋 『マリ・クレール』日本語版って、いろんな意味で「初」という冠がつく雑誌なんですよね。

田居 1937年にパリで創刊された『マリ・クレール』の日本語版が、中央公論社から創刊されたのが82年7月。海外発のモード誌の日本語版って、今でこそ数多く発行されていますが、その先駆けとなったのが『マリ・クレール』なんです。それが一つ目の「初」。

高橋 特に80年代後半、知的で教養あるカルチャー誌として男性の愛読者も増え、出版界でも話題になりましたよね。

田居 日本語版創刊当時は川久保玲さんや山本耀司さんらがパリコレに進出して、西欧流のエレガンスに異議申し立てをした時期とも重なりました。そうした動きを「一過性の流行」と言うより、「文化的な事件」としてビビッドに伝えたのが『マリ・クレール』でした。

吉本ばななも村上春樹も! 絢爛たる内容と執筆陣

田居克人編集長

高橋 コム・デ・ギャルソンの伝説的なPR誌『Six』を手掛けた小指(こざす)敦子さんがファッションページの編集を務めていて、ゴルチエなど海外のデザイナーのインタビューなども『マリ・クレール』でいち早く読んだ記憶があります。

田居 ファッションを単なる流行で終わらせたくないという編集者の思いが伝統的にあるんですね。カルチャー関連の内容が充実していたのも特徴でした。辻邦生さん、村上春樹さんといった作家の新作も積極的に掲載されました。吉本ばななさんの『TUGUMI』が連載されたのも『マリ・クレール』だったんですよ。

高橋 例えば、88年の4月号なんてすごい。「春のモード・スペシャル特大号」と一応銘打っていますが、「バイロイトの庭でワーグナーの“迷宮”とマーラーの“夢”を語る」というテーマでジュゼッペ・シノーポリさんと浅田彰さんの対談が採録されていたり、飯島耕一さんによる「詩聖タゴールの絵画的世界」という評論が掲載されていたり。この時代の目次を眺めているだけでも、絢爛たる内容と執筆陣に手前味噌ながら驚きます。

ハイエンドな情報をピンポイントで配布

田居 その後、発行が他社に移り、2009年に休刊してしまったのですが、フランスから日本語版復刊の打診が私にあり、読売新聞の傘下となっていた中央公論新社から12年7月に『marie claire style』として再び発行されることになりました。

高橋 日本外国特派員協会で行った再刊の記者会見を取材した記憶があります。その発行形態がユニークで、読売新聞の朝刊に折り込んで無料で配布したんですよね。

田居 当時、そうした形で雑誌を発行するのは日本で初めて。英国の『フィナンシャル・タイムズ』から『HOW TO SPEND IT』という付録が雑誌の大判の形で発行されていて、そうした動きが再刊のヒントになりました。

高橋 『marie claire style』は大都市圏を中心に全国で配布され、ウェブを通じてPDFでも読むこともできました。手応えはありましたか?

田居 当時、雑誌全般の発行部数が頭打ちの傾向があったのですが、読売新聞の販売店網を駆使することで、『マリ・クレール』のハイエンドな情報を求める読者にピンポイントでお届けすることができるようになりました。発行部数も他のモード誌に比べてケタが一つ違うほど圧倒的に多い。ターゲットにしている知的で富裕な顧客層に確実にリーチする媒体として広告を出稿していただくラグジュアリーブランドにも喜んでいただき、このビジネスモデルに追随する新聞社や出版社が相次ぎました。

『marie claire style』 創刊号(2012年7月)

『marie claire style』 創刊号(2012年7月)

社会的に関心を集めるテーマを積極的に特集

高橋 そして21年4月から雑誌の発行が読売新聞東京本社になり、誌名も『marie claire』となりました。内容も当然、アップデートしているんですよね。

田居 もちろんです! お伝えする内容をファッションや美容に加え、ライフスタイルにも広げています。旅やインテリア、そしてウエルネスなどの最新情報を『マリ・クレール』流の美しいビジュアルで紹介しています。7月29日号では初の試みとして「green」をテーマに各ブランドによるSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを紹介しています。高橋さんにも小泉進次郎環境相にファッションと環境についてインタビューしてもらい、その採録も掲載しています。これからもこうした社会的に関心の高いテーマを積極的に特集していきたいと思っています。

高橋 小泉さんも『マリ・クレール』の新しい取り組みに興味津々な様子でした。高級ホテルのラウンジなどでも配布を始め、楽天マガジンでも無償で読めるようになり、さらに読者層が広がっていますね。また美容室向けのサイネージに動画配信を実施するなど、たくさんの方の目に触れる展開もしています。

2021年7月29日号 2021年7月29日号
2021年7月29日号

2021年7月29日号

ウェブサイトではカルチャーにも注力

高橋 そして6月にはウェブサイト『marie claire digital』もフルリニューアルしました。

田居 こちらはライフスタイルに加え、誌面に収容しきれなかったカルチャー情報などにも力を入れています。読売新聞で映画やファッションなどを長年取材した専門記者にも参加してもらい、これまでのウェブコンテンツでは難しかった読み応えのある分析もアップしています。今後、動画も増やしていきたいと考えています。

高橋直彦副編集長

高橋 こうした記事は、読売新聞クオリティーの校閲も経ていて、目立たない部分ですが正確性にも力を入れています。また、スマホで見たときに最も読みやすいようデザインも最適化されています。個人的には国際的な雑誌という特性を活かして、ヨーロッパなどで発行されている『マリ・クレール』記事の翻訳が独自のコンテンツだと思っています。特に英国王室の話題などは他の媒体では読めない充実した内容になっていますね。

田居 新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちの生活様式も大きく変わっています。そうした中で何が本物で本質なのか、『マリ・クレール』が培ってきたラグジュアリーな世界観を誌面とデジタルを通して多面的にお伝えしていきます。広告主の皆さまにも新生『マリ・クレール』の一層のご支援をよろしくお願いいたします。

田居克人(たい かつと)
マリ・クレール事業室
marie claire編集長

出版社勤務の後、PAN-AMやUNITED AIRLINEの機内誌のアートディレクターを務め、その後『ELLE JAPON』や『marie claire japon』などのファッション誌の副編集長、編集長を歴任。現在は読売新聞東京本社から発行される『marie claire』『YOMIURI STYLE MAGAZINE』編集長。1999年よりファッションメディアの責任者で構成される「日本ファッション・エディターズ・クラブ」の代表理事、日本外国特派員協会会員。

高橋直彦(たかはし なおひこ)
マリ・クレール事業室
marie claire副編集長

国内外のコレクションをはじめ、SIHH、バーゼルワールドなどスイスの時計見本市、イタリアのミラノ・サローネを長年取材。読売新聞記者として、スタイル面などのラグジュアリービジネスやライフスタイルに関する紙面の企画・作成を数多く手がけてきた。プライベートで夢中なのは茶道。

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