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YOMIURI EXECUTIVE SALON(YES)2023を開催

10月23日、読売新聞社/マリ・クレールは、グローバルなビジネスに携わっているお客様約100名をお招きし、都内で「YOMIURI EXECUTIVE SALON(YES)」を開催しました。

■読売新聞東京本社 村岡彰敏社長あいさつ

村岡彰敏社長

読売新聞東京本社代表取締役社長
村岡 彰敏

はじめに主催者を代表して読売新聞東京本社の村岡彰敏代表取締役社長があいさつしました。村岡社長は、「ラグジュアリーブランドの素晴らしいクリエイティブな広告をたくさんご出稿いただき、多くの読者から好意的な反響が寄せられています。私自身も皆様の広告を一読者として見たり読んだりし、クリエイティブな広告が読売新聞の媒体価値を高めてくださっていると実感しております」と新聞広告にかかわる方々への感謝を述べました。

■メディアプレゼンテーション「Beyond Credibility -信頼性のその先へ-」

東京本社ビジネス6部の島田和春部員がメディアプレゼンテーション「Beyond Credibility -信頼性のその先へ-」を行い、ラグジュアリーブランドの最新の広告からみた新聞の新たな活用事例をはじめ、デジタル分野の取り組みを紹介しました。加えて島田部員はファッション雑誌「マリ・クレール」を読売新聞グループの総合力との融合によってさらに進化させていく方針を伝えました。具体例として、よみうりゴルフ倶楽部(東京都稲城市)で今年9月に開催した女性限定のゴルフコンペやBS日テレとともに制作する1社提供番組「マリ・クレールTV」をあげました。

≫ プレゼンテーション資料(一部抜粋)はこちら

■齋藤精一氏による講演「POWER OF CREATIVE」

齋藤精一氏

クリエイティブディレクター
齋藤 精一 氏

ゲストのクリエイティブディレクター・齋藤精一さんが「POWER OF CREATIVE」と題して講演を行いました。

講演の中で齋藤氏はクリエイティビティをもっと経営やモノづくりの中に取り込んでいくべきと語り、クリエイティブの力でどのように現代社会の問いを抽出し、解決していくかについて、自身が関わった興味深い事例と共に説明しました。

≫ 齋藤氏の講演の内容はこちら

■懇親会

坂本裕寿局長

読売新聞東京本社ビジネス局長
坂本 裕寿

第一部の後、懇親会が行われ、主催者を代表して東京本社ビジネス局の坂本裕寿局長があいさつし、マリ・クレールの田居克人編集長が乾杯の発声を行いました。田居編集長は「『マリ・クレール』がここまで続けてこられたのも皆様のご協力とご支援の賜物です」と出席者にお礼を述べました。また今夏に就任したマリ・クレール・デジタルの宮智泉編集長が紹介されました。

マリ・クレール編集長 田居 克人(左)、
マリ・クレール・デジタル編集長 宮智 泉

ご来場の皆様と和やかに懇談

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■齋藤精一氏 講演「POWER OF CREATIVE」

今、求められるクリエイティブの力とは

今日は「創造の力」についてお話をさせていただきます。

クリエイティブの定義は時代とともに、どんどん変わってきています。今では子育てや介護など、いろいろなことをクリエイティブでとらえることができると考えています。グッドデザイン賞の審査委員長を務めていますが、「モノ」だけではなく「コト」のデザインを意識しています。僕の仕事の半分以上が行政の仕事です。「こういうものって何でできないのだろう」ということをどんどん行政に提案しています。現在は2025年の大阪・関西万博の共創プログラムディレクターや「国立デザインミュージアム」をつくる活動もしています。

経営やモノづくりにクリエイティブを取り込む

現在、いろいろなところで変化が起きていますが、中でも大きく変化したのが価値観です。戦後はモノの豊かさが必要になり、1980年代のバブル期には、文化の豊かさを示すものとして文化施設ができ、2000年代に入って社会の豊かさを大切にする価値観が浸透してきました。コロナ禍の前から人の豊かさが求められるようになり、ウエルビーイングについて意識されるようになりました。テクノロジーの進化が価値観の変化に影響しています。経済効果だけでなく、人の幸福感と照らし合わせることで、企業も大きく成長が見込める領域だけではなく、小さな課題に対しても積極的に投資するようになっています。経済と文化の関係性も変化しています。

こうした中、ソーシャルデザインやローカルデザインに投資するブランドが多くなってきました。日本でつくられた家具など日本のモノづくりに関心を持って積極的に使うブランドが増えています。この活動自体を広告化して自分たちのブランド価値を高めるところもあります。日本だからこそ生まれるデザインアートがあり、ブランドの試みが地域を強くすると考えています。デジタル技術の活用で、こうした活動に対してのリターンが見えやすくなったことも、背景にあると思います。

デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用するデザイン経営が注目されていますが、クリエイティビティをもっと経営やモノづくりの中に取り込んでいくべきです。日本だけではなく世界でさまざまな変化が起きている中で、デザインやクリエイティビティに対して投資をしていくことが求められていると思います。

今、クリエイティブの意味は、変わってきています。新たなものを生み出すのは限界がきていてゼロからイチを生み出す、GAFAのような企業をつくるのは難しいと感じています。フォーカスしなければならないのは、「既存のアクションとどれだけつながっているか」ということです。僕は、人をはじめ、知恵やモノ、地域と世界をつなぐという面でクリエイティブの力が大いに発揮できると考えています。

クリエイティブの力で、社会にどんな問いを抽出するか

日本だからこそやるべきことは、今の社会をちゃんと考察して問題を抽出し、それを解決する方法としてプロダクトやサービスを生み出し、拡大して社会実装することです。

クリエイティブの力で、最初にどのような問いを抽出するか。どのように北極星を目指していくか。全員が違う船、違うスピードで向かっていても目指すものが北極星です。では、実際にどんな問いを抽出したのかを僕がかかわった事例で紹介します。

奈良県の奥大和エリアに位置する吉野は桜が開花する時期に年間の観光収入の約7割を稼ぎ出しています。コロナ禍で観光客数が落ち込み、観光復興を目的に始めたのが、歩く芸術祭「MIND TRAIL(マインドトレイル)奥大和 心のなかの美術館」です。奥大和の吉野・天川・曾爾という3つのエリアで、それぞれアート作品を訪ねて歩き回るスタイルです。その土地の歴史や知恵が見えるようなものにしたいと考えました。豊かな自然や文化をはじめ地域のさまざまな観光資源を有効活用することができ、地域の方々が「毎年11月にどうやって稼ぎ出すか」を考えるフェーズに入っています。

神奈川県横須賀市の沖合に浮かぶ無人島、猿島で開催している芸術祭「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」は、暗闇で自然とアートに触れる環境をつくりました。「人間はスマートフォンをはじめ、テクノロジーに翻弄されすぎではないか」という疑問がベースにあります。横須賀市でも各文化施設がバラバラに動いていたため、地域をつなげる試みとして「唯一無二の暗闇の芸術祭」として立ち上げました。

同じような試みの大きな規模のものが2025年の大阪・関西万博です。万博は国がホストになるイベントです。日本の地域の視点や知恵、文化を世界に提案していきます。日本の地域の試みをつないで世界発信することで地域を強くするきっかけをつくりたいと思います。大阪、関西、インターネット上、日本全国の地域を万博会場にすることも考えています。

東京では、「東京ブランド」の再構築を図っています。東京の地場産業は、クリエイティブ産業であると思っています。金太郎飴のような都市開発から脱却し、東京のそれぞれの街がしっかり役割分担をして競争し、東京の価値を高めていこうとしています。

テクノロジーの進化がクリエイティブに変化を及ぼす

近年の「DX」(デジタルトランスフォーメーション)をはじめ、「Web3」「ブロックチェーン」など技術革新をベースとしたさまざまな変化は、クリエイティブにも影響を与えています。クリエイティブがこうしたテクノロジーの進化で何が変わったかというと、「ファンダムエコノミー」と「クリエイターズエコノミー」がようやく発動することなのかなと考えています。

インターネットやデジタル化の進展で新たな市場が生まれています。これまで消費者の立場だった個人がクリエイターとして商品やサービスを発信、提供して収益を上げることができるようになっています。これがクリエイターズエコノミーです。

ファンダムエコノミーは、ある特定のものごとに興味関心のある人たちだけでつくり手と受け手の関係がある、または全員がつくり手として関わっていきます。BTSのファンはアーミーと呼ばれていますが、ファン、消費者同士がSNSでコンテンツを編集して共有し合っています。この場合のファンは、受動的な消費者ではなく、行動する主体、生産者でもあり、ファン同士で価値交換を行っています。

こうした消費者と提供者との関係をどうするか。クリエイターズエコノミー、ファンダムエコノミーを発動することがどこまで許容されるのか。著作権の問題やガバナンスの課題を考え、クリエイターにきちんと収益として戻ってくるような仕組みをつくることが急務です。メディアでいうと、ちゃんと記者が取材したものはマークを付けるなどして収益をつけるようにするものです。クリエイターズエコノミーをつくるためには、プラットフォームをつくる必要があります。

ファンダム、クリエイターズエコノミーがメディアの中に入ってくると面白い

メディアは、記者が足を使って取材して今を伝えることに強みがあります。メディアのこれからを考えた時、メディアが一つのプラットフォームになることが重要です。さまざまなメディアがありますが、最近すごく面白いと思っているのがローカルメディアです。テレビでは、ケーブルテレビが一番面白くなるかもしれません。

どうやってローカルに絞るか、どのようにグローバルにしていくかについてもメディアの役割分担をどうするかという点で大事な課題です。ファンダムのように、ローカルメディアとしてメディアのコミュニティーをどれだけ育てることができるかもカギを握ります。さらにファンダム、クリエイターズエコノミーがメディアの中に入ってくると、もっと面白くなると思います。シンキングではなくアクションしないと手遅れになることが多いので、私たちの方でもお手伝いできることがあれば一緒にアクションできるかなと思っています。

齋藤 精一(さいとう せいいち)

パノラマティクス(旧ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰
1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。03年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのを機に帰国。06年株式会社ライゾマティクスを設立。16年から社内の3部門の一つ「アーキテクチャー部門」を率い、2020年社内組織変更で「パノラマティクス」へと改める。2020年ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。2023年グッドデザイン賞審査委員長。

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