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世界に羽ばたくダート競馬へ
「ダート三冠競走」のプロモーションにパノラマ広告

今年から始まった「ダート三冠競走」。地方競馬全国協会では競馬ファンはもちろん、広く一般にも名の通るレースとなることを目指して、様々なプロモーションを展開した。インパクトのある配布物として取り入れた「パノラマ広告」は、PRイベントや地方競馬場だけでなく、JRAの競馬場でも配布され、SNSでも拡散された。「競馬と親和性の高い新聞」のパノラマ広告を使った大胆なプロモーション戦略の考え方とは?

2024年4月に発行されたパノラマ広告(新聞4ページ連版)

2024年4月に発行されたパノラマ広告(新聞4ページ連版)

中央競馬と地方競馬の枠を超えた「ダート三冠競走」

関口 和徳 氏

地方競馬全国協会 企画部 広報課長
関口 和徳 氏

――地方競馬全国協会の役割についてお聞かせください。

関口氏:国内には中央競馬場が10か所、地方競馬場が15か所あります。中央競馬は日本中央競馬会(JRA)が主催していますが、地方競馬は各地方自治体が主催しています。その地方競馬の公正円滑な実施を推進する組織が地方競馬全国協会(NAR)です。主な役割は、馬主・競走馬の登録や騎手の養成、免許の交付など、個々の主催者では対応できない業務を一元的に行うことです。また、地方競馬の売上金の一部を畜産振興に充てるなどの社会貢献活動も行っています。今回の「ダート三冠競走」のような地方競馬を活性化させる施策やその企画、広報も協会の役割になります。

――2024年からその「ダート三冠競走」がスタートしました。
経緯を教えてください。

関口氏:中央競馬場には芝とダートの両コースがありますが、地方競馬場はダートのみの馬場がほとんどです。中央競馬で行われる皐月賞・東京優駿(日本ダービー)・菊花賞の「クラシック三冠」はいずれも芝で行われます。これまで日本では、ダート競走は芝に比べてやや地位が低く見られていました。一方で、世界最高の賞金額を誇るサウジカップやドバイワールドカップなど、中東やアメリカで開催される競馬はダート競走が主流です。日本でも競馬の国際化に伴い、ダート競走のレベルを上げ、競走馬の層を厚くする必要が出てきました。そこで新しいダート競走体系を中央競馬、地方競馬の枠を超えて整備し、これまでの「芝の三冠」に対して「ダートの三冠」を地方競馬場を舞台に開催していくことになったのです。具体的には、大井競馬場を舞台に2024年から、羽田盃(4月)、東京ダービー(6月)、ジャパンダートクラシック(10月)を中央競馬と地方競馬のダート交流重賞として開催するものです。

競馬と新聞の親和性の高さに注目

――「ダート三冠競走」のプロモーションに読売新聞のパノラマ広告を活用されました。

関口氏:今回の「ダート三冠」は日本の競馬界初の試みであり、広報展開においても、既存のプロモーションではやってこなかった何か新しいことをと考えていました。そこで、読売新聞の新聞4ページ連版(裏表8ページの別刷り)のインパクトあるパノラマ広告を手法として取り入れました。パノラマは、レース開催に合わせて競馬場やイベント会場で配布するなど、プロモーションの随所で活用しました。このパノラマのほか、スポーツ報知では新聞の一面と終面を覆ったカバー広告、読売新聞本紙の15段広告を出稿しています。新聞を中心にプロモーションを組み立てたのは、競馬と新聞の親和性の高さからです。最近はスマホで競馬情報を得る人たちも増えてきましたが、競馬新聞もあるように、競馬と新聞は切っても切れない関係にあります。また、発行部数の多い読売新聞本紙にも出稿したのは、競馬ファンだけでなく、広く一般にも「ダート三冠」の存在を知ってほしいという思いがあったからです。

2024年4月22日読売新聞朝刊掲載

2024年4月22日読売新聞朝刊掲載

――具体的にパノラマ広告をどのように活用されたのでしょうか。

関口氏:競馬ファン向けと一般の方々向け、いずれのプロモーションにも活用しました。たとえば大井競馬場で「ダート三冠競走」初戦の羽田盃が行われた際には、来場したファン向けに配布しました。そして更なる認知拡大を狙って開催した渋谷モディ、名古屋駅、KITTE丸の内でのPRイベントでは、広く一般の方々に配布しました。さらに、協会として全国の競馬を盛り上げていくため、各地でご活用いただけるようにすべての地方競馬場にパノラマ広告を送付しています。JRAの東京競馬場と京都競馬場に関しては、我々が直接競馬場に行って、手渡しで配りました。

騎手候補生の協力で実現したゲートインした出走馬の写真撮影

――パノラマ広告の制作ポイント、こだわった点があればお聞かせください。

関口氏:今回のプロモーションのキービジュアル「JAPAN DIRT PRIDE 世界に羽ばたくダート競馬へ」で最も重視したのは、「世界に羽ばたくダート競馬」という世界観をどう表現するか、という点です。

サラブレッドがダートを疾走する新聞4ページのメインビジュアルは、全体が暗い中に一筋の明かりが射す当初案から、光の中を疾走する今のビジュアルに修正しました。そして特に力を注いだのは、折りたたまれたパノラマを最初に開くと現れる、出走前の馬がゲートに入っている写真でした。

競馬関係者や競馬ファンならわかると思いますが、ゲートインした馬を正面から取るのは危険で普通の競馬場では撮れない写真です。

ゲートインした出走前の馬を正面から撮影

ゲートインした出走前の馬を正面から撮影

――どのように撮影したのですか。

関口氏:協会が騎手を養成している栃木県那須塩原市の地方競馬教養センターで撮影しました。馬がゲートに入っていられるのは、約3秒という僅かな時間です。3秒経ったらゲートを開けずに後ろから馬を出す、というのを何度か繰り返し、何とか撮影しました。騎手候補生のみなさんと大勢のスタッフの協力があって実現した写真です。パノラマ広告では、ゲートの写真を中央から開くと、迫力ある出走写真とともに「日本ダート三冠ロード、始動。」というメインビジュアルが展開される仕掛けになっています。

パノラマ広告は世界観を伝える一つの作品

競馬場で配布している様子

競馬場で配布している様子

――パノラマ広告に対する一般の方々や競馬ファンの反応はいかがでしたか。

関口氏:配布物はその場で捨てられてしまうことも多く、周辺にも迷惑をかけてしまうことがあります。しかし、今回のパノラマ広告に関しては、東京競馬場、京都競馬場等で直接配布しましたが、その心配はありませんでした。ほとんどの方に大事に持ち帰ってもらえましたし、写真に撮ってSNSに上げる方もいました。パノラマ広告は読売新聞の別刷り広告ということで、一面には新聞社の題字、各ページにはノンブルが入っていて、信頼感があります。また、我々もただの告知ではなく、「ダート三冠競走」の世界観を伝えるべくパノラマ広告を制作しました。みなさんに一つの作品として残しておきたいと思っていただけたなら、これほどうれしいことはありません。

関口 和徳 氏

――今後はどのようなプロモーション、展開を考えているのでしょうか。

関口氏:ダート三冠競走最終戦の「ジャパンダートクラシック」は10月2日に行われます。今年度はこれまで実施してきたプロモーションを踏まえつつ、「ダート三冠競走」の魅力を競馬ファンのみならず、広く皆さんに伝えていこうと思います。今年は地方競馬にとって大きな改革の年だったこともあり、今までにない大胆なプロモーションを実施することができました。今後も、競馬と親和性が高い新聞広告の活用を検討しつつ、みなさんの興味関心を引く思い切ったプロモーションを展開する予定です。

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