SDGsの活動を分かりやすく、親しみやすく伝える
「読売KODOMO郵便新聞」が生まれた背景
日本郵便 常務執行役員 小池信也氏
読売新聞のプロジェクト「くらしにSDGs」パートナーである日本郵便は、「手紙」を通じた「サステナビリティの推進」に力を入れている企業である。手紙と新聞、共に「文字を起点にする」企業の協働から「読売KODOMO郵便新聞」は生まれた。
2022年3月10日読売KODOMO新聞(中面4ページ広告特集のフロント面)
「手紙振興」がSDGsにつながる
日本郵便 常務執行役員
小池 信也 氏
――「読売KODOMO郵便新聞」が生まれた背景からお聞かせください。
小池氏:日本郵便がこれまで取り組んできた「手紙振興」、「サステナビリティの推進」に沿った企画だったからです。
われわれが「手紙振興」の一環として「手紙の書き方体験授業」の取り組みを始めたのは2010年です。「手紙の書き方体験授業」は最初、全国の小学校が対象でしたが、現在は対象を中学、高校、特別支援学校にまで広げて実施しています。体験授業を実施する学校に毎年アンケートを取っているのですが、年々手紙を出す子どもは少なくなっています。主な要因はスマホの普及のようです。最近は高校生になるとほぼ100%スマホを持っています。年賀状を出すのは中学1年生の女子がピークで、部活の先輩に出すらしいのですが、年齢が上がるにつれて少なくなり、高校生では10人に1人くらいしか出さなくなります。さらに深刻なのは、自宅の住所を言えない子どもたちが増えていることです。昨年の同アンケートでは、小学6年生で自分の住所が言える児童が63%、郵便番号を言える児童は38%しかいませんでした。中学3年生でさえ自分の住所が言える生徒は85%です。しかも、この数値は年々下がっています。災害時にスマホが使えず、自分の住所が言えなければ、家にも帰れません。このような背景のある中で、2021年度「手紙の書き方体験授業」の小学校での実施率が初めて70%を超えました。
――全国の7割の小学校での実施は驚きです。
小池氏:中学校でも4割、高校でも3割の学校が実施しています。それから、東京2020オリンピックの時、ホストタウンに外国の選手が合宿しましたが、地域の子どもたちがその国の選手に応援の手紙を書き、それを大使館や本国に送って交流を深めるという活動も行いました。その時できた組織が「ホストタウンアピール実行委員会」で、現在も活動を続けています。25年には大阪万博もありますし、手紙を通して世界をつなげる活動にも引き続き貢献していきたいと考えています。
――日本郵便では、サステナビリティへの取り組みも数多くされていますね。
小池氏:日本郵便では「日本郵政グループサステナビリティ基本方針」のもと、「日本郵便サステナビリティ基本方針」を定めてサステナビリティの取り組みを推進しています。「地域社会」「地球環境」「人」の3分野についてCSR重点課題を選定し、SDGsの各目標と連動した活動を推進しています。先ほどの「手紙の書き方体験授業」も、SDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」に沿ったものです。それから読売KODOMO新聞でも紹介させていただきましたが、「紙を使うと森が減る」という誤解があります。紙の原料の木は、育てて増やせる持続可能な資源です。日本郵便では2022年用年賀はがき全てに、適切に管理された森林の木材を使用して作られたFSC認証紙を採用しています。今後は、一般のはがきもFSC認証紙に切り替えていく予定です。
また、温室効果ガス排出量削減にも取り組んでいて、電気自動車の導入も進めています。これまでも東京都を中心とした都市エリアで配送に使用する車のEV化を進めており、2025年度までに軽四輪自動車約13,500台、自動二輪車等約28,000台をEVに切り替える予定です。さらに、ドローンと配送ロボットを使って郵便物や荷物を運ぶ検証作業も進めています。東京都奥多摩町で昨年度も実施し、過疎化が進む地域などで無人で手紙や荷物を届ける手段も模索しています。
2022年3月10日読売KODOMO新聞(中面4ページ広告特集の見開き面)
「ぽすくまと仲間たち」から返事が届く
「くらしにSDGs」プロジェクトが発行する「読売SDGs新聞」で取り組みを紹介
――読売新聞のプロジェクト「くらしにSDGs」のパートナーに名を連ねていらっしゃいますね。
小池氏:読売新聞で児童・生徒のSDGsの学びを深め、家庭での実践につなげる「くらしにSDGs」プロジェクトを社として推進しているというお話は、昨年から伺っていました。日本郵便の手紙振興やSDGsに対する取り組みを社会に広く知ってもらうという意味でも、プロジェクトに参加することは意義のあることだと思っていました。プロジェクトが発行する「読売SDGs新聞」でも、日本郵便の活動を紹介していただきましたが、さらに読売新聞との協働で何かできるかご相談する中で生まれたのが、「読売KODOMO郵便新聞」です。今年は3月と7月の2回出稿しています。
3月はSDGs入門編として、日本郵政のSDGsの取り組みをわかりやすく紹介するとともに、はがきの書き方を詳しく紹介しつつ、最後のページでSDGsのゴールとなる2030年の未来へ向けた「みんなの決意」をはがきで募集しました。応募者全員には、日本郵便のキャラクター「ぽすくまと仲間たち」から返事が届くという仕組みです。この返事のはがきには、洋服の繊維ごみを50%使ったサーキュラー コットン ペーパーを使っています。
2022年3月10日読売KODOMO新聞(中面4ページ広告特集)
7月は夏休み実践編として、「『暑中見まい』を書こう!」というテーマで展開。栃木県那須塩原市の小学6年生が、ホストタウンをきっかけにオーストリアと絵はがきのやり取りをしているエピソードを入り口に、暑中見舞の書き方を子どもたちにわかりやすく解説しています。新聞の場合、はがきの書き方を横に置いて、手本にして書くということもできます。紙面を残しておくというお子さんもいると思いますね。それから「ぽすくまと仲間たち」への暑中見舞を募集し、「ぽすくまと仲間たち」から必ず返事が届くという仕組みは3月と同じです。
2022年7月7日読売KODOMO新聞(中面4ページ広告特集)
子どもたちから送られた「暑中見舞い」
――読売KODOMO新聞の特集のどのような点を評価されていますか。
小池氏:日本郵便の活動を世の中により広く、親しみやすく伝えることができ、非常に評価しています。SDGsについては小学校や中学校で子どもたちも学んでいると思いますし、日々の生活にも直結した問題ですが、実は理解が難しいテーマでもあります。日本郵便が行っている「手紙振興」や「サステナビリティの推進」もSDGsそのものだと思いますが、その取り組みを世の中に伝える難しさも感じていました。そうした活動を「読売SDGs新聞」や「読売KODOMO新聞」を通して、より分かりやすく、親しみやすく伝えることができたと思っています。「ぽすくま」に手紙を書くと返事が必ず返ってくる。しかも、それはサーキュラーコットンで作ったはがきで、日本郵便が行っている「手紙振興」や「サステナビリティの推進」と全部つながっている。それを分かりやすく、親しみやすいかたちで、広く伝えることができたことは非常に素晴らしかったと思います。
大人にも手紙振興を
――読売新聞との協働はいかがでしたか。
小池氏:今回の「読売SDGs新聞」「読売KODOMO新聞」の紙面作りを通して、日本郵便と読売新聞は「文字を起点にしている」というところで非常に親和性が高い、相性が良いことを実感しました。今後もさまざまな取り組みができるのではないかと期待しています。
――今後、実施したい、取り組みたい広告・宣伝施策があれば教えてください。
小池氏:手紙やはがきなどの郵便物の数は、2001年度をピークに4割以上減っています。最近は、メールすらまともに書けない新入社員が増え、入社後に教えるところや、大学でもメールの書き方を教えるところが出てきたと聞いています。メールでさえそうなのですから、手紙はなおさらです。郵便物が減少する中で、手紙を書くイベントも行っていますし、引き続き小・中・高などの学校で手紙の書き方体験教室を実施し、拡大していくことに加えて、大学生や大人にも、手紙に親しんでいただける取り組みを行っていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
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企業の取り組みを手本に子どもたちがSDGsを実践(くらしにSDGsプロジェクト)
読売新聞は2021年7月から「くらしにSDGs~じぶんごとからはじめよう®」プロジェクトを実施しています。子どもたちは、SDGsに関連する副教材や企業からの出前授業を通して、より実践的な形でSDGs達成のヒントを得て、一人ひとりが行動に移しています(参照リンクhttps://kyoiku.yomiuri.co.jp/sdgs/kurashi/)。
本プロジェクトは、「読売SDGs新聞」を年間2回発行し、日本全国の小中高校からSDGs学習に積極的な学校が登録する「SDGsチャレンジ校」というネットワークを通して、各学校にお届けしています。各企業のSDGsテーマにあわせて、これらの副教材の中でも各パートナー企業による出前授業やSDGsに対する取り組みをご紹介しています。
2022年度は芙蓉総合リース、日本郵便、JAグループ、住友不動産、日本証券業協会、JPRSが参画し「SDGsチャレンジ校」には約224校・約5万2千人の児童・生徒が登録しました。昨年のスタート時より延べ9万2千人の生徒に副教材を配布し、約800人の児童・生徒に出前授業を実施しています。
7月にはプロジェクトの一環として、毎日の食べ物を自分の国でつくる「国消国産」を進めるJAグループと協力して、身近な食や農業について学びを深められる冊子「SDGs探究ブック あしたの『食』どうする?」を作成・配布しました。SDGsの視点から考えた農業などについてわかりやすく説明しています。学校で勉強するだけでなく、児童・生徒が家庭や日常の暮らしのなかでSDGs活動を進めていくためのヒントが掲載され、夏休みの自由研究などにも活用いただきました(参照リンクhttps://note.com/zenchu_ja_kouho/n/nc817f97a36cc)。