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テレビCM×新聞広告で飛躍的な売り上げ増
スケッチャーズの広告戦略に見るマス広告の力

スケッチャーズは世界第3位、全米第2位のシューズブランド。2022年から手を使わずに履ける「ハンズフリー スリップインズ」シリーズを日本市場に投入。23年からテレビCM、24年3月からはコンスタントに新聞広告を掲載し、大きく売り上げを伸ばしている。販促にデジタル広告が不可欠と言われる中で、スケッチャーズがマス広告にこだわり、成果を収める要因はどこにあるのだろうか。

24年3月から12月にかけて掲載された新聞広告

24年3月から12月にかけて掲載された新聞広告

発売以来、大きく売り上げを伸ばす「スリップインズ」シリーズ

佐藤 文稔 氏

スケッチャーズジャパン合同会社
マーケティングディレクター
佐藤 文稔 氏

――スケッチャーズは世界的に人気のあるブランドですね。

佐藤氏:世界第3位、全米第2位のシューズブランドです。1992年にカリフォルニア州マンハッタンビーチで設立され、現在は世界190以上の国と地域に展開し、5000店舗以上の直営店を運営しています。年間売上1兆円を超えるグローバル企業で、「コンフォートテクノロジーカンパニー」を標榜する、履き心地のテクノロジーをフィロソフィーとしてきた会社です。日本市場の規模はまだまだ大きいとは言えませんが、2022年に発売した手を使わずに履ける「ハンズフリー スリップインズ」が好調で、2ケタ成長で売り上げを伸ばしています。

――「スリップインズ」は、スケッチャーズのシューズテクノロジーを使った商品ということですか。

佐藤氏:手を使わずに履ける「スリップインズ」の特長は、独自のかかと部分のテクノロジーです。スケッチャーズは、スニーカーを中心にハイヒール以外のあらゆるシューズを作っていますが、現在、全シューズのカテゴリーで、このハンズフリー スリップインズ テクノロジー搭載モデルを展開しています。

マス中心に展開される「スリップインズ」の広告戦略

――そのスリップインズの広告をマス広告中心に展開されていますね。

佐藤氏:「スリップインズ」の発売は2022年秋からテレビCMとラジオ広告、雑誌広告を開始し、2024年3月からは新聞広告の掲載を始めました。

大きく売れ始めたのは2023年9月22日、バナナマンの日村勇紀さんとタレントのLiLiCoさんを起用し、「手を使わず履ける」という機能をわかりやすく伝える15秒CMをオンエアし始めてからです。コマーシャルを流し始めた翌日の9月23日から公式ホームページのトラフィックが大幅に増加しました。

――プロモーション展開に新聞広告を加えた理由というのは?

佐藤氏:大きくはテレビCMと同じで、ブランド認知を上げることと、「スリップインズ」という商品の機能を伝えるということです。それから「スリップインズ」のターゲットは「手を使わず履ける」という機能を求めている人たち全てであって、幅広い年代に向けたものですが、実際に購入している層は50代60代が多くなっています。やはり、かがむのが面倒くさい、膝が痛い、腰が痛いという方が多い年代にアピールする。そうしたニーズの高い層にリーチするという点や、新聞に掲載されていることによる信頼性の醸成も、新聞を選んだ理由です。24年3月からの新聞広告にはテレビCMと同じ日村さんとLiLiCoさん、10月からはWBC日本代表の前監督の栗山英樹さんに登場いただいています。

24年10月から掲載された新聞広告

24年10月から掲載された新聞広告

――24年3月〜12月の10か月間に計20回ご出稿いただきました。新聞広告の反響はどうでしたか。

佐藤氏:思った以上の反響がありました。特に分かりやすい反応としては電話で、新聞掲載後通常の10倍近い問い合わせが来ます。土日に出稿するとしたら、週明けの月火はオペレーター増やして対応しています。出稿を重ねても、変わらず反響があるのは嬉しいです。また、電話で最も多いのが「どこで売ってるんですか」、2番目が「今買いたい」、3番目が「値段がいくらですか」です。通販ではないので、そういうお客さまは店舗やECサイトをご案内しますし、最近は広告に値段を入れるようにしました。また、こうした問い合わせが増えれば、当然、商品を買うお客さまも増えます。2023年9月以降、各店舗やECサイトの売り上げは昨年を大きく上回りました。

「ブランド認知が低いからこそマス広告が有効

――スケッチャーズでは、テレビCMや新聞広告を使うことは多いのでしょうか。

佐藤氏:一つは米国本社の方針があります。世界的なスポーツメーカー、シューズメーカーでは、有名スポーツ選手などとの契約料が大きな割合を占めますが、スケッチャーズはマス広告、特にテレビCMに力を入れています。また、特に日本市場の場合はブランド認知率の問題もあり、マス広告が有効だということもあります。

――どういうことでしょうか。

佐藤氏:SNSやネットの検索は、ブランド認知率が高い方が有利に働きます。普段何かをSNSで検索するとき、ある程度知っているものの方が見つけやすいものですよね。検索するためには、ある程度の予備知識やブランド認知が必要です。スケッチャーズの日本国内での助成認知はまだまだ低いです。「まずは知ってもらう」コミュニケーションに伸びしろのあるフェーズです。また、特に「スリップインズ」の場合は、「手を使わず履ける」という非常にシンプルな機能訴求です。現在の認知度と、伝わりやすい機能訴求とが、昨年来のテレビCMと今年の新聞広告が功を奏している要因だと思います。「履き心地が良い」というのは主観的なものなので、それを機能性という分かりやすいメッセージで乗せられたことが、マスでの発信に上手くかみ合ったと考えています。

――「コンフォートテクノロジーカンパニー」ならではの訴求ポイントということですか。

佐藤氏:スケッチャーズでは、「履き心地」のためにたくさんのテクノロジーを使っています。履いた時に気持ちがいい、長時間履いていても疲れない、クッション性がいい、裸足で履いても当たるところがないなど、「コンフォートテクノロジーカンパニー」の名に負けない靴作りをしています。スケッチャーズの「スリップインズ」のテレビCMや新聞広告は、その中で消費者の心に刺さる一つの機能を強調しているということです。機能面を伝えるには、新聞というメディアはとても相性が良いと実感しています。

幅広い年代に「スリップインズ」の浸透を

――テレビCMからはじまり、新聞広告によって拡げられたコミュニケーションは、国内認知を上げ、商品を訴求するステップを着実に促進していますね。

佐藤氏:認知度の高いブランドは、マス広告を使ったブランド広告をやっても、あるいは止めても、それによる効果や変化はすぐに現れてはきません。メーカーのブランド担当者は、どうしてもすぐ結果の出る方向に流されがちになります。ターゲットをセグメンテーションして、細分化して、デジタル広告ならそこでエンゲージメント、反応がどのぐらいあったかがわかるから、そこによりどころを求めがちになります。そういう意味では、スケッチャーズは国内ではまだ小さなブランドだからこそ、マス広告の効果が目に見えるという面があります。実際、私の今までのキャリアの中で、これだけマス広告でプラスの効果が出た記憶はありません。

――今後どのような展開を考えていますか。

佐藤氏:引き続きマスメディアを中心に「スリップインズ」の広告展開を進め、ブランド認知を高めていく考えです。24年の出稿を通して新聞の消費者へのダイレクトな効果を大いに感じられたので、今後も継続していきたいと考えています。日本人は元来靴の脱ぎ履きが多いですし、手を使わずに履ける「スリップインズ」は生活にフィットします。日常生活や就業シーン、旅行など、「スリップインズ」を履いていると便利なシーンがたくさんあるので、2025年はそのあたりも訴求してきたいですね。また、若年層への浸透を図るため、俳優の賀来賢人さん、菜々緒さんと新たに契約しました。2025年はテレビCMは賀来賢人さん、菜々緒さん、新聞広告は日村さん、LiLiCoさん、栗山さんで、幅広い年代に「スリップインズ」のブラント認知を高めていき、日本市場でのさらなる成長を目指したいと思っています。

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