読売出版広告賞
ごあいさつ
読売新聞東京本社 取締役ビジネス局長 有田淳
読売出版広告賞は出版界のさらなる発展と出版広告の活性化に寄与することを目的に1996年に創設され、このたび30回目の節目を迎えました。これもひとえに広告主の皆様、選考委員の先生方のご高配の賜物と深く感謝いたします。
今期は2025年1月~12月までの1年間に読売新聞へ掲載された出版広告を対象に厳正な選考を行い、大賞に筑摩書房様、金賞にダイヤモンド社様、銀賞に文藝春秋様、銅賞に小学館様、特別賞に大空出版様が選ばれました。受賞各社の皆様に心からお祝い申し上げます。
読者離れや無書店エリアの拡大など出版業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした現状を踏まえて、昨年2月に弊社と講談社は「書店活性化へ向けた共同提言」を発表し、政府が6月に公表した「書店活性化プラン」にもその内容が盛り込まれています。読売新聞は、文化の拠点である書店の活性化や、本の街・神保町を支える施策などを推進する一方で、ビブリオバトルの運営や絵本専門士を活用した読書教育の充実など地道な活字振興の取り組みにも注力しております。
これからも活字産業振興に貢献するとともに、紙面で様々な雑誌・書籍を紹介し、良質な出版広告を掲載することで、出版・書店業界を盛り上げてまいります。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
第30回受賞作品
第30回読売出版広告賞は、2025年1月1日から12月31日までに読売新聞に掲載されたすべての出版広告が賞の対象となっています。
大賞
- 筑摩書房「日本経済の死角」
- 2025年4月30日付朝刊 全3段
- 制作/筑摩書房
- 営業局宣伝プロモーション部
- アートディレクター/福田紀泰
- デザイナー/長谷川美穂
- 幅允孝 選評
- タイトル、著者名、読み手の感想など、伝えたい優先順を整理し大きく見やすいタイポグラフィで凝縮させた広告の右半分。一方の左半分はたっぷりとった余白を生かし、「生産性」と「実質賃金」の折れ線グラフの狭間に浮かぶ「何かが、おかしい。」という問題提起のコピー。1つの新聞広告内で、密度の高低を共存させながら、最終的には不穏さを感じさせる一言へ誘う構成が見事です。加えて、4色広告であるものの効果的に色数を絞ったことで、グラフにおける生産性と賃金の乖離の大きさを強調させることにも成功しています。情報整理の的確さと思い切っためりはりが奏功した、実にきれいな広告でした。
金賞
- ダイヤモンド社「動物のひみつ」
- 2025年12月30日付朝刊 全3段
- 制作/ムシカゴグラフィックス
- デザイナー/石田隆(ムシカゴグラフィックス)
- 制作統括・コピーライティング/松井未來(ダイヤモンド社)
- 北村薫 選評
- 「面白くて、すごい」の間に「切なくて、」と入れるところが、生き物を語る言葉として見事なのだが、実はそれ以上に膝を打ったところがある。
興味深い話題を並べた広告の一番右に「驚くほど厚い!」とある。現代では、メールの文章に象徴されるように、短く簡単に、つまり、本でいえば薄くてすむ情報がもてはやされる。そういう中で、堂々と、これはページをめくり始めたら終らないでほしいと思う本だーーと胸を張る。
子どもに買ってやるのは親である。「700ページでこの値段はもはや価格破壊」といわれ、にやりとするのではないか。
銀賞
- 文藝春秋「コンビニ人間」
- 2025年11月8日付朝刊 全5段※掲載日は東京本社版
- 制作/文藝春秋宣伝部
- アートディレクター/杉原勝己(クリエイティブ・マインド)
- デザイナー/佐藤唯人(クリエイティブ・マインド)
- 嶋浩一郎 選評
- 出版広告の役割は新刊書を売るだけではない。本のマーケットを拡大するためには、既刊本に再び注目を集めたり、ロングセラーを売り続ける広告も大事だ。そんな広告を作ることの方が制作者にとって難しかったりする。「コンビニ人間」の広告は一見見慣れた部数をアピールする広告かと思いきや、「世界累計!」という今まで目にしたことのないコピーが踊っている。日本の女性作家の文芸作品が海外で注目を集める中、新たな読書市場を創造することに挑戦しているわけだ。小説を手に取るきっかけは様々でいい。小説にスポットライトを当てる方法はまだまだあるぞと感じさせてくれた。
銅賞
- 小学館「創刊100周年 小学一年生」
- 2025年1月1日朝刊 全15段
- 制作/電通
ジェ・シー・スパーク - クリエイティブディレクター/安達翼
- コピーライター/岩田純平
- コピーライター/岩田泰河
- コピーライター/杉岡美奈
- アートディレクター/宮本結以
- クリエイティブプロデューサー/清水楓太
- デザイナー/高橋由衣
- プロデューサー/杉山雅志
- 中江有里 選評
- ピッカピカの一年生♪ この文字を目にするだけで、自然とあのメロディとリズムで口ずさんでしまう。
一年生を擬音で表すなら「ピッカピカ」。
新年を迎えて開いた新聞は、いつもの朝よりも目に眩しい。青いグラデーションの先にある水平線は、太陽ととけあって、どこまでも明るい未来を想像させる。新一年生を寿ぐ広告を眺めながら、ふと思い出す。
一年生になったあの日のことを。背負った新しいランドセルの重さを。
創刊100年目の朝も、一年生もピッカピカだ。
特別賞
- 大空出版「まだある。」
- 2025年5月8日付朝刊 3段8割
- 制作/大空出版
- グラフィックデザイナー/竹鶴仁惠
- 小布施祐一 選評
- 何だろう、この自信は。きっぱり「まだある。」
まだある、と言うくらいだから、なくなりそうなものについて書いた本なのだろう。なのに自信満々。揺るぎない。最後のマル(句点)がとどめだ。誰が何と言おうと「まだある。」
パンチ力はあるが主語がないから、まわりを探すしかない。うまい。「今でも買える!懐かしのロングセラー商品」――なるほど。
読者の昭和愛にも訴えかける。スマホもSNSも、いいね!も炎上もなかった昭和生まれの商品が「まだある。」
瓶のチェリオが飲みたくなった。アップル味が好きだった。
(敬称略)