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ojoトップ  > 特集  > 広告デザインに活かす「伝える」技術:【 雑誌に学ぶ 】雑誌の世界へ引き込む 写真を“読ませる”レイアウト

特集広告デザインに活かす「伝える」技術

(2013.2.4/2013年2・3月号 特集)

【 雑誌に学ぶ 】雑誌の世界へ引き込む 写真を“読ませる”レイアウト
マガジンハウス   『Hanako』編集長   北脇 朝子 氏 藤村雅史デザイン事務所   代表取締役   藤村 雅史 氏

左から北脇氏、藤村氏

2008年、マガジンハウスの雑誌『Hanako』は大幅なリニューアルを敢行。判型を広げ、ビジュアルに重きを置き、情報誌でありながらライフスタイル誌ともいえる内容へとシフトした結果、販売部数を大きく伸ばした。その立役者である編集長の北脇朝子氏と、さらなる進化を求めた同誌が2011年よりデザイン面でタッグを組んでいるアートディレクターの藤村雅史氏に、読み手を引き付ける雑誌のデザインについて聞いた。

──女性に長く親しまれている『Hanako』ですが、5年前のリニューアルを経て読者層を大きく広げました。まずは、リニューアルの背景についてお教えください。

北脇   雑誌には夢を見せてくれるものや芸術性の高いものなど様々なタイプがありますが、『Hanako』はどちらかというと読者の生活に寄り添って、日常の中にありながら気づいていないちょっとした贅沢やうれしい発見に共感してもらう、そんな性格の雑誌です。それはリニューアルを経ても変わらない、雑誌の根幹になる部分です。
  ただ、ネットなどで情報が簡単に手に入るようになった現在は、単なる情報を載せているだけの雑誌はなかなか存続しづらくなっています。私は現職に就く前に関西で発行していた『Hanako WEST』の編集、編集長を経験していました。その時に元々の情報誌からL判の女性誌へと転換することになり、女性にとって役立つ情報という根っこを保ったまま、この時代にどうしたら読者に受け入れられ、ちゃんと買っていただける『Hanako』がつくれるのか、ずっと模索してきました。
  そのひとつの策が、写真で読ませながら誌面の流れをしっかりと組み立てることでした。といっても、雑誌制作ではそれはごく基本的なことですが、あるテーマに対してどのような導入を設け、何をどう紹介したら読者に共感してもらえるかを改めて深く考えるようになりました。
  街や食の特集を読んでもらって、その楽しさを疑似体験してもらうことは、ある種のエンターテインメントでもあります。その演出を考えると、やはり雑誌ならではの写真やレイアウトといったビジュアルの力が非常に大きいと感じていました。
  特に頭を悩ませたのは、情報誌でありグラビア誌であり、読者の共感を集める“Hanako”である、という3つの柱を同時に成立させることでした。おかげさまで大きくビジュアル中心のつくりへとシフトしたことがうまくいき、東京の『Hanako』編集部へ移ってきましたので、おのずとその方向へのチェンジを求められている部分もありました。

人気を得た「読者目線」にさらに新鮮さを加味

──単なる情報提供ではなく、記事を読んで「行ってみよう」「食べてみよう」と思ってもらうには、写真とレイアウトの力が非常に大きいのですね。

北脇   そうですね。でも難しいのは、読者との距離感が近く共感を大事にしている『Hanako』の大前提は「わかりやすい誌面づくり」なので、あまり突拍子もないレイアウトにはできない点です。誰にでもわかりやすく読みやすく、すっと入り込めた上で、思わず「あっ!」と声に出してしまうような新鮮な気づきを誌面にどれだけ込められるか。それにはとても緻密なレイアウトが求められると思っています。
  今でも毎号が試行錯誤なのですが、よりテーマの中にぐっと入ってきてもらうために、情報の質や量はもちろんのことながら、カラーグラビアなど写真の見せ方や、流れをつくるレイアウトを大切にしています。

店の席についたときに見える料理の角度など“主人公目線”を大事にした写真やレイアウト(写真は2012/11/22発売号)。

──具体的には、どのような見せ方があるのでしょうか。

北脇   例えばリニューアル当時は、読者の目線に徹底してこだわり、“読者が主人公”だと考えて制作していました。評判のレストランの料理を紹介するにしても、俯瞰で撮影するのではなく自分が行って席についたときに見える角度から撮って誌面に大きく載せました。自分がまるでこれからその料理を食べるかのように見せ、特集の世界の中へと入ってきてもらう効果を狙っています。
  一方、リニューアルして3年目頃からはもう少し異なる方向性も探っています。女性誌などでよく、女優やタレントがナビゲーターになって街を紹介しますが、リニューアル後の『Hanako』ではそうした第三者目線でのテーマの扱い方をほとんどしてきませんでした。そこで最近では、自分目線だけではなく第三者の体験や感じ方を通してそのテーマを楽しんでもらうような構成も試しています。以前も行っていなかったわけではないのですが、前述の“読者が主人公”のつくりを徹底してきましたので、その点ではまた次のステージを探っているところです。

──そのパートナーになっているのが、藤村さんですね。

北脇   ええ。藤村さんには、2011年の秋からデザインディレクションをお願いしています。リニューアルは大きな反響を得ましたが、そのときのパターンに凝り固まらず、時代や人が変わっていくように雑誌も変わっていかなければと。その意図で、女性誌や男性ファッション誌など様々な雑誌のディレクションを担当されてきた藤村さんに加わっていただきました。

藤村   北脇さんはビジュアルの基本的な扱いをわかっているから、ビジュアルをどうつくりたいのか、頭の中にすでにそのシーンがあることが多いと思います。ですから僕とは、例えばそこで狙い通りの気持ちを読者に呼び起こすには、前段にこういう内容のページが必要なのではないか、といった特集の構造づくりの話や、シンプルにそのイメージを具現化するのにどうしたらいいのかといった話を主にしています。レイアウト上の相談役のようなものですね。
  特に僕が加わった頃は、リニューアル後の誌面の良さを活かしながら新しいアプローチを探っている段階でした。例えば、あまり使ってこなかった、店が人でにぎわっているような人の気配を感じさせる写真を使うべきかやめるべきか、そんな相談をことあるごとにしてきました。

特集1本を一人が担当 一貫した視点で追求

──特集テーマの発案から、それが誌面になるまでに、デザインチームとどのように連携しているのですか。

北脇   エリア、飲食、ショッピング、旅行やカルチャーなどの様々なテーマでトレンドを追求していますから、そもそも特集で扱う内容が非常に幅広いんです。ですから、その内容によって相談の仕方は本当にケースバイケースです。
  最初に台割と特集全体の通しのラフをつくり、それを見ながらどこかのタイミングでデザインチームとすり合わせをします。その後、実際のデザインに起こしていく作業に入ります。その段階でページのラフを細かく書き、配置できそうな写真を切って張り付け可能なパズルのような状態にし、いろいろと入れ替えてデザインを検討していきます。文字を読まずとも、目に自然に入る順に写真を見ていくとそこから内容が伝わってくるように、まるで写真を“読む”ことができるくらいまで写真の並びにはこだわります。

手書きラフと使用候補写真のミニチュアを使い、主に担当編集者と編集長、デザイナーの三者で特集の流れやどの写真をどう扱うかなどを並べ替えながら決めていく。

藤村   普通の雑誌だと、編集長と編集部員が集まって企画会議をしてテーマを決めたり、デザインの細部を詰めたりしていきますが、『Hanako』の場合は一人が丸ごと1本の特集を担当するので、会議といっても編集長と担当者と僕という非常にコンパクトな体制になります。その分、意思の疎通がとても速く、編集長のやりたいことが僕にも部員にもよく伝わると思いますね。
  『Hanako』の特集主義、しかも一人が1本の特集を通しで担当するというやり方は、業界を見てもほとんど例がありません。担当者は大変といえばそうですが、一人で担当すると全体に一貫性が出てきますし、その上であえてそこから外したページをつくる、などの新しいチャレンジができる。僕はこの体制は理想的な形だと思っています。

──例えば1月4日発売号の特集「聖地へ。」は、扉ページの写真が印象的です。どの写真を使うかの判断基準は何でしょうか。

北脇   特集の良さや深みがより伝わるのはどちらか、という決め方です。もちろん、最初から「店の特徴をそれぞれ紹介する」など切り口と写真のイメージを決めてつくるページもありますが、あまり決め込まずに、集められた素材の中でどのように編んでいくかを相談しながらつくっていきます。
  特集「聖地へ。」でも、担当編集者が取材に行く前にコンテはすべてつくっていましたが、実際の構成は素材となる写真が仕上がってから改めて考えていきました。出雲と伊勢のどちらの記事を前にするかも、事前に決めていませんでした。
  扉ページの写真の候補には他にも、これから旅をすることを感じさせる参道口の宇治橋、参道のにぎわいなどいくつもありましたが、今回はやはり伊勢神宮の遷宮に注目した特集でしたので、旅をするならここを目指すであろう、伊勢神宮の内宮を望む写真を最終的に配置しました。

2013/1/4発売号の特集「聖地へ。」の扉ページには、伊勢神宮の内宮に対面した写真を。旅のハイライトを入り口に、「遷宮を知る」Q&Aページ、写真をふんだんに使った誌面を続けた。

藤村   でも、レイアウトや写真の位置を一旦決めても、話し合いを重ねてどんどん変更していきますよね。

北脇   『Hanako』は前述のように、写真で“読ませて”いきながら、そこに無理なく情報がしっかり入っていくレイアウトを大事にしていますので、やはりどの特集でもレイアウトと写真選びはとことんやりますね。

──写真を入れ替えていきながら、皆で読者が何を感じるだろうかとすり合わせるのですか。

北脇   そうですね、この並びだと強く感じる、あるいはやさしいイメージなど、感じることを話しながら選んでいます。「聖地へ。」特集でも、このページは清々しい感じにしたい、あるいは神々しい感じにしたいといった自分の中にあるイメージを頼りに、それに合うような写真の組み合わせを探していきました。
  いずれにしても、上がってきた写真によって、どれをメーンにしてどう構成するかはまったく変わってくるので、撮影を依頼するカメラマンを誰にするかもすごくこだわりますね。

藤村   撮れる写真はカメラマンとの相性にもよります。撮影前のディレクションを終えたら、一旦カメラマンと担当編集に任せて、あとは集まった素材の中から何パターンもつくってみてより良い案を見極めていきます。

編集とレイアウトの化学反応を起こす

──お話を伺っていると、「読者の気持ち」という同じところに違う視点で向き合っている編集とデザイナーの関係性が、雑誌づくりに大きく影響していることがわかります。

北脇   編集とレイアウトは化学反応だと思うので、藤村さんとはパターンをどう破っていただけるかをいつも相談できる関係でありたいですね。定番のお店情報などパターン化すべきところと、読者の意表をつく情報の提示の仕方など、進化していかないといけないところのバランスを雑誌としてどう構築していったらいいのか、今まさに考えているところです。特集内容に関しても、これまでにしたことのない提案をしていきたいです。

藤村   “女子×お酒”で様々なシチュエーションを紹介した特集「女子呑み!」や、スマートフォンを中心としたデジタルライフを取り上げた特集「my life is digital life」は反響が大きかったですね。

北脇   数年前は女子でお酒という組み合わせは受け入れられなかったかもしれませんが、今は逆に女子がお酒のムーブメントをつくる時代になってきています。でも、同じ題材でもちゃんと読者にとって新鮮に見える特集の切り込み方ができるかどうかは、常に考えていなければと思います。
  とはいえ、『Hanako』は情報量が多いので、パッと開いたときにそれが何のページなのか瞬間でわからなければ迷子になってしまうんです。なので、これは出雲特集のお店紹介のページ、といった位置がすぐわかるようにしたいということも、いつも考えている点です。

藤村   ただ、今こういう位置のページにいますよ、ということをその通りにやってもつまらない。あまりに説明的につくっても、硬い印象になってしまいますから。それをデザインでどう解決していくかは、今後の内容の充実とともに僕の課題でもあります。

北脇   今の話もそうですが、パッと開いたときに「かわいい」ページなのか「楽しい」ページなのか、それとも「おいしい」ページなのか、明確にわかる必要があると私は思っています。このページをどうしたいか、その意志と読者の気持ちを行き来しながら、『Hanako』をもっと進化させたいと思っています。

雑誌視点で見た新聞広告好事例

東海・近畿「世界遺産特集」

東海・近畿「世界遺産特集」

2011年11月8日 夕刊(大阪本社版)・朝刊(中部支社版)

読む人のマインドに合わせたレイアウト

  「新聞なら新聞を読む人の、雑誌なら雑誌を読む人のマインドがある。媒体の特性と、それに接する人の気持ちを踏まえた訴求が効果を生むのでは」と北脇氏。無理に雑誌風のレイアウトにするのではなく、通常の新聞記事のレイアウトを活用することが、新聞読者に受け入れられる大きなポイントになるとアドバイス。