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広告リポートfrom Europe

(Thu Jun 05 15:45:00 JST 2014/2014年6・7月号 from Europe)

フランス流「毒」の効いたコミュニケーション
国友 俊   パリ駐在

  パリ赴任となり、現地の新聞を読んでいて気付いたことの一つは、オランド大統領の顔写真を見かけない日がないということだ。フランス国民は政治への関心がとても高い。長らく続いている不景気の影響もあってか、政治家は国民のフラストレーションをぶつける格好の的となっている。

  その一例として、あるブラックユーモアが最近メディアで注目を浴びた。大統領と有名女優との不倫騒動、これをネタにする広告が続出したのだが、中でも最も関心を呼んだのが、大統領が不倫相手に会うためにバイクで移動する時に被っていたDEXTER製のヘルメットだ。本製品は報道を受けてから間もなく、約1,000個が爆発的に売れて在庫切れに。同社は「大統領への御礼の手紙」と称した広告を日刊紙に掲載し、読者の笑いを誘った。

  この他にも、ラジオ会社が、今年グラミー賞を受賞したヘルメット姿の二人組アーティスト「ダフト・パンク」に似せて、「大統領、あなたも彼らのファンだと知っている」と皮肉じみた新聞広告を掲載したり、ハイヤーサービスの会社が、大統領の住むエリゼ宮から女優宅までの道のりを示した地図を利用し、その区間の利用料金を明記した上で「スモークウインドーのプライベートカーで、低料金のプライバシーを確保します」と広告で謳(うた)った。ユーモアあふれるコピーではあるが、女優の自宅の場所まで明記してしまう見境のない広告はプライバシー侵害に当たらないのかとハラハラしてしまう。

  仮に日本の首相が同様の不祥事を起こした場合、これを広告表現に利用する日本企業が果たしてあるだろうか。日本では、スキャンダル利用によるマイナスイメージや、“世間”という新たな敵を生んでしまうリスクをまず考えるのではないだろうか。

  元来、フランス人は不倫スキャンダルに寛容なようで、今回の一件も大きな政治問題にはなっていない。オランド大統領が事実婚であるという前提こそフランス独特だが、日本で同様のスキャンダルが発覚すれば、マスコミがこぞって取材に押しかけ、謝罪や弁明に追われる日々が続くことは間違いないだろう。

  また、広告の事例ではないが、昨年9月には、度が過ぎたフランスの風刺画が批判された。政治風刺で有名な週刊紙「カナール・アンシェネ」は、2020年東京オリンピックの開催と福島原発の問題をからかう風刺画を掲載。読売本紙(2013年9月13日付朝刊)でも取り上げるほどのセンセーショナルな内容で、3本の手や足がある力士が土俵上で向き合い、防護服姿のレポーターが「すばらしい。フクシマのおかげで相撲が五輪競技になった」と中継しているという内容だ。日本政府からは正式に謝罪を求めたが、同紙は「日本政府と東京電力こそ遺憾の意を表明すべきだ」と反論している。

  実はこうした風刺はこれが初めてではなく、フランス国営テレビでは、サッカー日仏代表戦でのフランスの敗戦を悔しがり、大活躍したGK川島選手の腕が4本ある合成写真を映し、「福島の影響ではないか」と揶揄(やゆ)する発言をしていた。

  フランス人の「エスプリ」は、すべてがここまで「毒」の効いたコミュニケーションとは限らないが、一つの特徴であるこの種のブラックユーモアを、「文化の違い」と容認するのか「モラルが低い」と批判するのか、判断にはもう少し時間がかかりそうだ。

国友 俊・パリ駐在

週末に家族でルーブル美術館へ出掛けました。いざ、名画『モナ・リザ』の前へと足を進めましたが、館内は大混雑。他人の肩越しに見る『モナ・リザ』は、まるで通勤ラッシュの電車の中で無理やり鑑賞させられているような不思議な感覚でした。