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広告リポートfrom America

(Mon Apr 06 10:00:00 JST 2015/2015年4・5月号 from America)

シェアの本場で対面性という逆説
井上 武範   前ニューヨーク駐在

  米国人にはシェアのハードルが低いと感じる。家賃が高いマンハッタンではルームシェアが当たり前だし、車で地方を走ればヒッチハイクをする若者にしばしば出会う。これだけ頻繁に遭遇するということは、乗せてくれる人も多いのだろうと想像する。

  2012年にサンフランシスコでスタートしたLyft(リフト)は、いわば車の座席を有償でシェアするヒッチハイクだ。ユーザーは携帯電話のアプリで送迎可能な車を呼び出す。一般の市民が運転する自家用車だが、前面に派手なピンクの口ひげがついているので見逃すことはない。支払いはLyftを通じてクレジットカードで決済するため安全・確実で、利用後には運転者と乗客双方が互いを評価するため、自然とマナーが向上するという。今では米国内65都市で利用可能で、3月には楽天を筆頭に投資家グループから5億3000万ドルもの資金を調達して勢いに乗っている。タクシー配車サービスの先駆けUber(ウーバー)も、UberXの名で同様のサービスを展開している。

  シェア上級者向けには、自家用車をそのまま貸してしまうものも。2010年創業のRelayRides(リレーライズ)が代表的だ。車の所有者が車の概要や料金などをウェブサイトに掲出しておき、利用者が見つかれば直接会って鍵を貸し出す。やはり双方が相互評価するため、汚い車の貸し手やマナーの悪い借り手は淘汰(とうた)されるようになっている。

  一般的にシェアに向くのは高額で使用頻度の低いものとされ、車はその最たる例だ。ところが最近では、その枠に留まらないものも次々と現れて市民権を得ている。自宅に人を招いて料理を提供したい人と食事したい人を結びつける、おすそ分けともいえるサービスを提供しているのがFeastly(フィーストリー)だ。2012年にニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンDCでスタートし、現在はシカゴを加えた4都市で利用できる。料理を提供するのはアマチュアコックが中心だが、プロが試作メニューの反応を探るのに利用することもある。メニューや価格、ドレスコード、過去の参加者の口コミなどを見比べて参加を申し込むスタイルは、まるでレストラン検索サイトを見ているようだ。

  一風変わったものでは、Airpnp(エアピーアンドピー)というトイレのシェアサービスも。言うまでもなく空き部屋シェアのAirbnbをもじった名称だが、関連はない。料金は無料から10ドルを超えるものまでさまざまあり、個人の住宅のほか公衆トイレ、自由に使えるホテル・店舗のトイレも掲載されていて、緊急時には重宝しそうだ。

  アイデア次第で無限に広がるシェアだが、ここで紹介した事例に共通するのは、サービスを提供する人と受ける人が対面する機会があるということだ。顔を合わせるコミュニケーションから人を遠ざけてきたITが、このような経済活動を生み出したことは興味深い。先述のRelayRidesは当初、車内にカードリーダーを設置して施解錠するシステムを目指したが費用面から断念、直接鍵を手渡しすることに変更した。すると貸し手、借り手双方からのクレームやトラブルが減ったという。「顔が見えるとなんとなく心が通う」というところに、シェアが支持される理由を垣間見た気がする。

  この号で私のレポートは終わります。3年間ご愛読いただき、ありがとうございました。

井上武範・前ニューヨーク駐在

今冬のニューヨークは特に寒さが厳しく、65年ぶりに最低気温の記録を更新しました。氷点下が当たり前の日々が長く続きましたが、3月も中旬になってようやく寒さが和らぎ、一躍観光名所となったブライアントパークの噴水も、氷がとけて本来の姿を現しています。