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広告リポートfrom America

(Mon Oct 06 15:00:00 JST 2014/2014年10・11月号 from America)

「Hi there! My name is Doraemon!」
井上 武範   ニューヨーク駐在

  今年7月、ついにドラえもんが米国上陸を果たした。ケーブルチャンネルのディズニーXDで放送され、全米7800万世帯で視聴できる。単純な吹き替え版と異なり、箸の代わりにフォークとナイフで食事し、紙幣も円ではなくドルになるなど、随所で「現地化」されている。また政府も翻訳や広報宣伝費を助成するなど、官民一体となった取り組みであることも特色に挙げられる。

  満を持して登場したドラえもんだが、米国のアニメ市場からみると後発といえるかもしれない。米国では近年、アニメやマンガなどポップカルチャー関連企業のプロモーションや販売業者の物販、個人の作品販売を行うコンベンションが花盛りだ。試写会やトークイベント、コンサートなども催され、数日にわたって開催されるものも多い。アニメコンベンション情報を取りまとめたあるサイトには、今年米国で開催されるものとして、実に268のイベントが掲載されている。そしてその多くが、日本のポップカルチャーもカバーする。

  そのなかで私は昨年、ロサンゼルスの「アニメエキスポ」(AX)と、「ニューヨーク・コミコン」を見学する機会を得た。どちらも4日間で10万人以上を動員する、米国を代表するイベントだ。この分野に不案内だった私は、「半信半疑」「怖いもの見たさ」といった言葉がぴったりの気持ちで訪れたわけだが、行ってみてその規模と熱気に圧倒された。入口には入場を待つ列が絶えず、来場者の多くがなんらかのコスプレ(Cosplay)をしている。スパイダーマンやバットマンはもちろんのこと、ドラゴンボールやワンピース、ナルトにセーラームーンと、日本のキャラクターも多い。「進撃の巨人」では人間、巨人両方のコスプレイヤーがいて、私はこの場で初めてこの作品を知った。そして企業や個人の出展ブースも大賑わい。ポスターやTシャツ、パンフレットなどを抱えた大勢の来場者がひしめきあう会場では、米国経済の足踏みなどみじんも感じられなかった。

  なぜ日本のポップカルチャーはこんなにも受け入れられているのか。話を聞いたAX、NYコミコンの関係者は、この問いに興味深いヒントをくれた。米国には移民を受け入れてきた多様性があり、また、米国人にはUnderdog(弱者、目立たないもの)を探したがる国民性があるのだという。アニメコンベンションは、情報や商品を入手するのが困難だった時代に、ファンの間でこれを交換しあう場として始まった。それが今、出版社が英語版を制作し、公式のネット配信ビジネスも生まれて、リアルタイムに近いタイミングで入手できるようになった。もともとの国民性に環境の整備が重なって、一大消費市場を生み出したということだろう。

  この市場は波及効果も大きい。アニメやマンガへの関心が、日本食や日本語、日本旅行への興味へと広がることも期待される。経済産業省が設けたクールジャパン官民有識者会議の推計では、世界におけるコンテンツ、食、ファッションの市場規模は、2020年に932兆円に達し、2009年から倍増する。日本がここでどれだけのシェアを獲得できるかは、これからのポップカルチャーにかかっているともいえよう。一大消費地の米国へとドラえもんが海を渡った2014年は、将来振り返って「世界進出元年」と言われるのかもしれない。

井上武範・ニューヨーク駐在

息子は2歳半、いわゆる「魔の2歳児」の真っただ中で、とにかく愚図って日が暮れます。そんな話を知人としていたら、米国では「Terrible Twos」と呼ぶことを知りました。当然のことながら、同じ人間というのを実感します。