特集

2010.2・3/vol.12-No.11・12

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社会的課題と広告コミュニケーション

募金改革推進に求められる広報力と企業との連携

 自分の応援したい都道府県にインターネットを通じて寄付ができる「ふるサポ」(ふるさとサポート募金)が、昨年10月からスタートした。共同募金では1995年をピークに募金額が減少する中で募金改革に取り組んでいるが、「ふるサポ」もこの一環として行われたものだ。こうした改革を進めるために今まで以上に必要になっているのが、広報の充実と企業との連携だ。

──「ふるサポ」を始めた理由は何でしょうか。
地域を選んで募金できる「ふるサポ」のトップ画面 地域を選んで募金できる「ふるサポ」のトップ画面

 若い人たちに募金に関心を持ってもらいたい、という思いがあって始めた募金プログラムです。パソコンや携帯電話から、自分の応援したい都道府県と助成分野を選んで24時間いつでも募金できます。地域を選べるというのは共同募金としては初めての試みで、今回はその第1弾として試行的に始めたものです。
 このほかにも、最近はアフィリエイト(注)の仕組みを利用した「お買い物募金」やチャリティーオークションなど募金機会の拡大に取り組んでいます。

(注)ウェブサイトやメールマガジンからECサイトにリンクを張って、閲覧者がそのリンクを経由して商品を購入した場合、リンク元のサイト主催者に報酬が支払われる仕組み。

共同募金改革への取り組み

──共同募金が新しい募金方法に取り組んでいる背景は、どこにあるのでしょうか。

 共同募金は2007年度で60周年を迎えたのですが、それを機に共同募金改革を進めています。新しい募金方法に取り組んでいるのもその一環です。
 共同募金は1947年に発足した国民助け合い運動で、国と民間活動が一体化して始まったものです。貧しかった時代ですから、お互いに助け合うのが当たり前で、皆さん赤い羽根に親しみを持ってくださって、その後募金活動は秋の風物詩と言われるほど身近なものになりました。
 それが、1996年から募金額が下がり始めたのです。いろいろな要因があると思うのですが、まず、「何に使われているかわからない」と思われるようになったことがあります。それから、社会が豊かになる中で、互いに助け合うことは大事だと頭ではわかっていても、体験や実感として持ちにくい社会になってきたこともあると思います。

──共同募金の仕組みは、どういうものなのでしょう。

 都道府県ごとに共同募金会という事業主体があり、内部組織として支会・分会という市町村ごとの組織があります。そこで地域で活動する社会福祉施設やNPO、ボランティアなどのニーズを集めて、それを足し上げて各都道府県の募金の目標額が設定されます。共同募金は、その目標額に市民のみなさんが協力するという計画募金です。ですから、集められた募金は海外や日本の他の地域に行くのではなく、その地域の福祉活動に役立てられます。
 また、地域の自治会などに協力をお願いして一戸一戸集める「戸別募金」が全体の7割を占めています。そこにも実は課題があって、共同募金が定着していく中で、自分たちの地域のために必要だから、みんなで協力しましょうという部分がいつの間にか抜け落ちて、強制的に集められているのではないかと感じる人たちが増えてきています。

──募金改革の方向とは、どのようなものなのですか。

 今までは募金を集める人たちと集めたお金を使う人たちがバラバラに活動していました。それを、寄付する人たち、募金運動に協力するボランティア、実際に助成をもらっている人たちのコミュニケーションの場を作っていくことを始めています。公募による公開プレゼンテーションの取り組みは、助成を求める団体が市民参加の公開の場で活動の必要性をプレゼンテーションし、この結果を踏まえて助成先を決定していくもので、市町村レベルで始められています。
 そういう場が「地域をつくる市民を応援する共同募金」という実感にもつながり、地域の課題解決のためにいろいろな活動をつくり出していく機会にもなります。これまでの募金は、困っている人たちを助けるというイメージだったと思うのですが、そうではなく、社会変革を呼び起こすような活動を生み出す「助成」という事業に変えていくことを考えています。

市町村ごとの募金の使い道がわかる「はねっと」のトップ画面 市町村ごとの募金の使い道がわかる「はねっと」のトップ画面
──赤い羽根の助成先は、今どのくらいあるのでしょうか。

 全国で約7万の、地域のために活動しているNPOやボランティアを助成しています。その助成先は、2002年に作った「はねっと」というデータベースをホームページに公開し、市町村ごとに紹介しています。
 そういう努力はしてきたのですが、一方で先ほど言ったように、募金が何に使われているのかわからないという人たちが多くなっている。赤い羽根を作ることもムダではないかと言われる中で、事務費も広報費も限られた予算でやりくりしてきたのですが、これまで広報に十分な手立てを講じてこなかったことも我々の反省としてあります。

募金機会の拡大を図る

──「ふるサポ」は、募金機会の拡大が目的だと言われましたが、どういうことですか。

 戸別募金中心で、新しい募金がなかなか生まれないというのが、もう一つの課題です。募金額の割合が下がっているのは戸別募金ではなく、実は学校募金や職域募金です。
 以前、学校で募金と言えば赤い羽根でしたが、最近は学校にも海外のNGOの募金活動が入ってきています。また、子どもの時は学校で募金していたけれど、社会人になったら途端につながりがなくなるという人たちも多くなっています。学校などに対しては直接「協力をお願いします」ということは言えますが、社会人、特に20代、30代、40代のサラリーマン層に対しては従来の方法ではアプローチがむずかしいんですね。それで、「ふるサポ」のような募金機会の拡大に取り組む必要があるのです。
 ただ、中央共同募金会の役割は連絡調整で、募金運動の実施主体はあくまで都道府県の共同募金会です。その活動を応援したいということで、募金実績につながるような仕組み作りに中央共同募金会が取り組んでいるということなんです。

──「ふるサポ」では、どんな告知をしたのでしょうか。

 新しい試みを多くの人に知らせたかったということで、新聞広告を使いました。日本地図はQRコードになっていて、携帯電話から各都道府県の寄付のページに飛べるようにしています。
 それから、東京には地方の人たちが集まっているということで、都内にある各都道府県のアンテナショップや郷土料理などの飲食店にも協力をお願いしました。こうした「ふるサポ協力ショップ」には、QRコード付きのポスターやステッカー、カード、都道府県のキャッチコピーを印刷したコースターなどを配布しています。

2009年11月11日 朝刊 都道府県がQRコードに 2009年11月11日 朝刊 都道府県がQRコードに
QRコード付きのコースターも作成 QRコード付きのコースターも作成

「ふるサポ協力ショップ」で配布されているカード 「ふるサポ協力ショップ」で配布されているカード。募金できる分野を選べるのも「ふるサポ」の特徴
──自分の応援したい都道府県に寄付できるということですが、その結果はどうだったのでしょう。

 約6割の人が今住んでいる都道府県を選んでいます。それから、アクセス時間は勤務時間以外が7割で、夜の9時から夜中の1時ぐらいがピークになっています。もともとインターネットで募金を始めたのは、既存の募金方法では集まりにくくなってきたことがあるのですが、方向としては間違っていないと受け止めています。ただ、サイトへのアクセスは多いのですが、それが募金額にまだ結びつかず、今後、改善していく点はあると思っています。

企業との連携も視野に

──最近の取り組みである「お買い物募金」と「チャリティーオークション」とは、どういうものなのでしょうか。

 「お買い物募金」は、ウェブのアフィリエイトの仕組みを募金に応用できないかということで、リンクシェア・ジャパンの協力で昨年9月から始めています。「赤い羽根共同募金」の「お買い物で募金」ページにあるスポンサー企業のリンクから買い物してもらうと、商品金額の数%が募金される仕組みです。
 それから、「チャリティーオークション」は、ヤフージャパンの協力で2001年から始めています。ここ数年取り組んでいるのが野球、サッカー、バスケットボールなど、地元に密着したプロスポーツとの連携です。試合を「赤い羽根募金 イベントデー」として行ってもらい、選手が着用していたユニホームや関連グッズをオークションに出品しています。

──企業の社会貢献意識は高まっていると思うのですが。

 最近は、「マッチングギフト」と言って、従業員の寄付金と同額を負担して寄付してくださる企業もあります。社員の社会貢献意欲も高まるということで、CSR的な観点から制度を導入する企業が増えています。
 共同募金というと、お金を集める機関のように思われがちですが、本来は、社会的課題解決のために活動をしているさまざまな団体を応援することが仕事です。複数の企業の社会貢献活動のプラットホームにもなれます。例えば、今回の「ふるサポ」の新聞広告でも、企業とともに展開できればもっと広がりが出たと思います。今後は、社会貢献を通した企業との連携も考えながら、募金改革に取り組んで行きたいですね。


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