マーケティングの新レシピ

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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タダになるのはうれしいですか?

 この原稿を読まれる頃には、鳩山内閣発足から3か月がたっていることだと思う。高支持率でスタートした「ハネムーン」期間が終わり、だんだんと国民の目も厳しくなってくることだろう。
 とりわけ、新政権初の予算編成は、さまざまな議論を呼ぶものと思われる。
 もっとも、新政権の特徴的な政策は、いわゆる政権公約(マニフェスト)に掲げられていた。したがって、それらの趣旨に賛同した人が多かったから民主党が政権を得たと考えられる。
 ところが、世論調査を見ると必ずしもそうはいえないようなのである。
 読売新聞が10月の2日から4日にかけておこなった世論調査では、鳩山政権が掲げるさまざまな施策についての賛否を問うている。そして、その結果は実に興味深いものになっているのだ。

「もらえるから賛成」ではない日本人

 幾つかの目玉政策について、賛否をたずねた結果を図表に示したのだが、これを見ると面白いことがわかってくる。
 各政策で「反対」が多いものから順に並べると次のようになるのだ。

  • ・高速道路無料化
  • ・返済猶予制度
  • ・「子ども手当」支給
  • ・インド洋での海上自衛隊の給油活動終了
  • ・八ッ場ダム建設中止
  • ・温室効果ガス25%削減

 なぜ、興味深いと思ったのか? それは、「反対」の多い政策の内容が、現象面だけで見れば、「国民の利得」になるものだからである。
 有料のものが無料になったり、借金の返済が猶予されたり、現金が給付されたりする。しかし、一見「お得」ではあるものの、そういった制度は決して手放しで歓迎されているわけではない。高速道路の無料化などは、7割近くが反対しているが、他の報道機関の調査などでも同様の傾向を示している。
 一方で、温室効果ガス削減のように国民に一定の負担を求めるような政策への賛同が高い。
 この数字を見ると、大筋において日本人の志向は堅実であり、かつ自立を大切にしていることがうかがえる。
 たしかに、これらの政策が実行されれば、国民は直接に経済的恩恵を受けることができる。だが、それはあくまでも一時的現象である可能性も高い。
 財源の必要なものばかりなのだから、どこかで歪みが起きたり、無理な借金をする可能性もある。
 そうしたことを感じているからこそ、このような調査結果になるのではないかと推測される。
 今年の総選挙結果について「バラまき公約」が功を奏した、と評する人もいたが、どうやら多くの日本人は「バラまき」を期待したわけではなさそうだ。

図1 鳩山内閣の目玉政策に対する国民の賛否

政策にこそ「ニーズ」の発想を

 この原稿を読まれている方も、個々の政策の賛否については、それぞれの意見をお持ちだと思う。私も、ここで政策論を展開するわけではない。
 ただ、一つ言えることは、これからの政策決定には、「真のニーズは何か」という発想が求められるということである。
 経済が成長して人口が増加した時代は、ニーズが明確である。良質な住宅の供給、交通網の整備などインフラの整備が求められ、成長で得た果実は、高齢者や子どもなどの弱者に再配分していた。
 しかし、これからの時代は再配分のための「原資」に限界がある。本当に困っている人を助ける一方で、成長が期待できる分野には大胆に投資する必要がある。
 こうしたメリハリは、既に多くの民間企業でおこなっていることである。マーケティングに優れた企業経営者は、真のニーズに絞り込む一方、余計なコストを削減して、「良品廉価」を実現している。
 時代が変化した結果、政策決定にもマーケティング的な発想が必要になってきたのである。
 ただし、政治の世界はまだまだ硬直的なところがある。仮に国民の賛同が低い政策を修正したりすると、今度はたちどころに「公約違反」という批判が飛び出てくるだろう。
 しかし、経営環境が変化したときに「中期計画」にこだわるような経営者では会社は傾いてしまう。真の利益のためにプログラムを修正することは、政治の世界でも評価されていいはずである。
 政治に求められることは「理念」への固執から、「ニーズ」への傾聴へと変化しているのだ。
 そして、政策実行に優先順位をつける一方で、我慢を強いることがあれば正直に言わなければならないだろう。
 それでも、筋の通った話であれば、「我慢する」準備ができているのではないだろうか。先の世論調査からは、日本人のそうした傾向もうかがえる。
 国民に準備ができているのなら、次に行動するのは政治家の側なのである。

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