from Europe

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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フランス版「活字のチカラ」キャンペーン

 ─先生! うちの息子が新聞を読んでいます。なにか重い病気じゃないでしょうか?
 ─うちの娘が食卓で話をするようになった。一体何が起きたんだ?
 フランス政府と新聞社59社が合同で10月末にスタートさせた新聞購読活性化キャンペーン「Mon Journal Offert(私にもらえる新聞)」の新聞広告のメーンコピーである。
「Mon Journal Offert」の新聞広告
「Mon Journal Offert」の新聞広告
 サルコジ大統領が今年1月の活字文化審議会で発表した活字メディア支援策が早速実行に移されたもの。フランスの新成人にあたる18歳から24歳までの若者が1年間週1回好きな新聞を無料で購読できる、というのが目玉だ。「新聞購読の習慣は若いうちにつくるべきだ」という大統領の考えをもとに、政府では3年間で1500万ユーロ(約20億円)の緊急予算が組まれた。
 キャンペーンへの応募は、インターネットで行われ、先着20万人の若者が無料新規購読を行うことができる。結果は大成功。開始から1週間足らずで、15万9000人の応募があった。参加社には、各発行部数に基づいた新規獲得目標(ノルマ)が設定されたが、全国紙のほとんどと一部のブロック紙がすでに当初目標を達成したそうだ。本キャンペーン内には、特定の新聞社に誘導するような仕掛けもないので、成功の秘訣は、知名度あるいはこれまで行ってきた購読キャンペーンの成果ということになるだろう。
 フランスの新聞は、日本の新聞と比べて宅配の割合が非常に低い。今回のキャンペーンでは週1回の宅配が目玉になっているため、新聞代は各新聞社が負担するが、配達費は政府の費用でまかなわれる。
 年初の大統領の発表では、「18歳の若者全員に1年間無料購読の権利を与える」という計画だったが、その後「週1回の定期購読」に変わったのは、“購読習慣を急に強制することで拒否反応が起こるのを防ぐため、まずは新聞を読む習慣をつけて、将来的に正規の定期購読に移行してもらう”ことを狙った作戦だそうだ。
 キャンペーン広告は、レオ・バーネット社が担当した。新聞広告のコピーは、どちらかというと、子女に新聞購読を勧めたい親の世代を意識しているように見受けられるが、テレビCMのほうは、すべての年代にダイレクトに刺さることを狙っているように感じた。CMには全く映像を使わず、無声映画を思わせるような音楽のみを背景に、新聞記事の活字が次々と断片的に表れ、視聴者が潜在的に持っているであろう“活字欲”をそそる内容となっている。応募サイトでは、好きな新聞を指名できるほか、居住ブロックごとに地方紙も紹介され、いずれも各紙の紹介ページ(新聞1面の写真とインターネットサイト)に誘導し、商品を選ぶための工夫がなされている。
 11月第1週の時点で、応募サイトのトップページには「キャンペーン大成功につき、一部の新聞社はすでに申し込み人数を締め切りました」という“おわび”が加えられていた。目標20万人という設定はフランス国民のニーズより少し少なめの絶妙なサイズだったのではないか、とちょっと意地悪な憶測をしたくなる。しかし、もし「有料でも購読してみたい!」という若年層からの申し込みが今後出てくるとすれば、このキャンペーンは本当に大成功といえるだろう。

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