Creativeが生まれる場所

2009.12・2010.1/vol.12-No.9・10

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妻へ“感謝の指輪” 広く習慣定着図る

電通 アートディレクター 浜島達也氏(写真中央) ドリル コンテンツ・プランナー 西田淳氏(写真右) 電通 プロデューサー 藤岡宏嗣氏(前列右)

浜島:電通第4クリエーティブ局から(株)ドリル設立に参加。現在は電通ソリューション・クリエーティブ室に在籍。
西田:アサツー ディ・ケイ雑誌局、クリエイティブ局を経て(株)ドリル設立に参加。CM等の映像を中心に、WEB、モバイル、プロモーションのコンテンツ企画制作を担当。
藤岡:電通テレビ局、メディア・マーケティング局を経て(株)ドリル設立に参加。現在は、電通コミュニケーション・デザイン・センターに在籍。

 定年退職の日に妻に感謝の指輪を贈ろうというプラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)の「サンクスデイズ・プラチナ」キャンペーンは、3年目を迎えた。今年も、テレビでは俳優の寺尾聰を起用した情緒あふれるCMを、新聞では「よい夫ドリル」というユニークな突き出し広告を連続出稿した。
 新聞広告やテレビCMはもちろん、ウェブや雑誌、ラジオから店頭でのコミュニケーションツールまで、このキャンペーンをトータルに手がけてきた3人に話を聞いた。

──「サンクスデイズ・プラチナ」キャンペーンが生まれた経緯をお聞かせ下さい。

 藤岡 団塊の世代が定年退職にさしかかる2007年に、クライアントのPGIから、団塊の世代に向けた新たなジュエリーマーケットを開拓したいというお話をいただいたことから考えたキャンペーンです。
 退職を機にプラチナを贈るという習慣は欧米にもなく、「サンクスデイズ」という言葉も、我々が提案したものです。夫と妻としてあらためて向き合い第二の人生をはじめるために、これまでふたりで歩んできた日々に感謝し、これからふたりで歩んでゆく日々の幸福を願うというのがコンセプトです。
 しかし、単純にプラチナの指輪を贈るだけでは文化として定着しない。贈る指輪に何か特別な価値がなくてはいけないということで考えたのが、結婚から退職までの累積日数、「結婚日数」を指輪に刻印するというアイデアでした。結婚日数は、ウェブサイトでも計算できますし、店頭にも簡単に計算できる結婚日数計算表を置きました。

ドリルで「よい夫」を学習

──俳優の寺尾聰さんを起用したテレビCMはかなり反響を呼びましたが。
テレビCM
テレビCM

 藤岡 そうですね。キャンペーンを始めた2007年と昨年は、定年退職当日を描いたテレビCMですが、今年は世界観はそのままに、定年退職の翌日を描いた内容にしています。
 西田 寺尾さんも団塊の世代で、初年度から役づくりに力を入れてくれました。今回も、退職して少し元気がない姿と、退職後に奥さんとの初デートで次第に元気を取り戻していく姿を演じ分けてくれています。

──新聞では突き出し広告を継続的に出稿されましたね。

 浜島 キャンペーンは、情緒的価値を高めることを目的としています。それで、テレビCMは、リーチよりもフリークエンシーを中心に設計しました。新聞で突き出し広告を連続出稿したのも、フリークエンシーを獲得したかったからですが、内容は「よい夫ドリル」という、よい夫になるための練習問題形式にしています。
 藤岡 問題は、主に、妻のことをどれだけ知っているかということに重きをおいたものになっています。長年一緒にいた妻でも、意外と知らないことがあったりするもの。わからなかったら、妻に聞いてもよいのです。逆に、新聞広告を読んだ妻が夫に質問することも想定しました。つまりこのドリルは、よい夫を養成するという表面的な目的ではなく、妻と新しいコミュニケーションをとるきっかけになれば、という思いもあります。
 昨年も新聞広告では、「よい夫検定」というクイズ形式の広告を展開しました。よくある手法ではありますが、こうすることで通常の広告よりも長く見てくれたり、考えたりしてくれると思ったんですね。新聞は、同じ人が毎日見る媒体なので、継続的に楽しめて、次が期待できるものにしたかったんです。
 この「よい夫ドリル」は店頭にも冊子として置きました。先ほどの結婚日数計算表もそうですが、店頭でお客様とコミュニケーションするためのツールとして活用してもらおうと考えたんです。

9月9日 朝刊
9月9日 朝刊
11月8日 朝刊
11月8日 朝刊
──テレビCMを連想させる広告を何回か挟まれましたが。

 藤岡 これは、まだサンクスデイズ・プラチナを認知していない人にも、寺尾さんのビジュアルを見ることで、テレビCMから思い出してもらう広告のリマインド効果を狙ったものですね。

──「よい夫ドリル」の問題は、かなり身につまされる問題が多いですが。

 西田 周りに悪い夫の見本がたくさんいるので、その逆をいけばよかったんです(笑)。身近にいる団塊の世代に話を聞きながら、メンバーで知恵を出し合って考えました。「よい夫ドリル」はウェブでも展開していて、新聞広告よりも難しい問題になっています。問題を作った僕も100点がとれませんでした(笑)。せっかくウェブに来てもらうのだから、ウェブなりの楽しみがなくてはいけません。サイトにアクセスするたびに、ランダムに問題が変わって、5段階の評価がされるようになっています。

──ウェブでは「よい夫エピソード」というエッセー募集も行っていますね。

 藤岡 「よい夫エピソード」を実施した狙いは、夫婦で楽しんでもらうことでした。「よい夫ドリル」は夫が対象なのに対し、「よい夫エピソード」は妻を対象にしています。実際、数多くのエピソードが投稿され、夫への感謝の気持ちを示したい妻が多いことに、我々も驚かされました。最終的には、投稿作品の中から最優秀作品を選定、投稿された奥様とその旦那様を「プラチナ夫婦アワード」に認定し、表彰式を行いました。

「よい夫ドリル」のサイト
「よい夫ドリル」のサイト
店頭に置かれた「よい夫ドリル」の冊子
店頭に置かれた「よい夫ドリル」の冊子

コンテンツの重要性

──キャンペーンの反響はいかがでしたか?

 藤岡 今年も広告を見たという言葉を多くの方からいただきました。新聞広告にはサイトのURLを入れていますが、ターゲットとする団塊の世代は、そこまでアクティブに反応しないだろうと思っていたところ、予想を大きく上回るアクセスがありました。
 西田 それと突き出し広告を、個人のブログで取り上げてくれる人も多かったですね。
 浜島 ブログを見ると、若い世代の書き込みが目につくんです。ある程度予想はしていたのですが、いい広がり方だと思います。というのも、彼らは数年後、あるいはもっと後かもしれませんが、顧客になるからです。これは、若い世代にも、新聞広告は届いているということでもあるんですね。

──今後はどのような展開を考えていますか?

 藤岡 調査をすると、ほとんどすべての夫は、妻にとても感謝しています。ただ、この世代の男性は、照れ屋な人が多く、その感謝を表現するきっかけが足りなかっただけなのです。このサンクスデイズ・プラチナが、新しい夫婦の人生のイベントに定着してくれるといいなと思っています。
 また、これは今回のキャンペーンにも言えることですが、いわゆる広告然とした広告では、今の消費者にはなかなか振り向いてもらえない。メディアの広告枠を使って広告≠ナはなく“楽しめるコンテンツ”を作るという意識でコミュニケーションしていくことが重要だと思っています。

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