Creativeが生まれる場所

2009.10・11/vol.12-No.7・8

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角の立ったクリエイティブで女性の共感を呼ぶ

オレンジワークス  クリエイティブディレクター 松永健二氏(後列右) オレンジワークス  アートディレクター 田野聖貴氏(前列左) オレンジワークス  デザイナー 三井大地郎氏(後列左) アサツー ディ・ケイ  コピーライター 安井かおる氏(前列右)

山本:女性自身で16年、STORY創刊に携わり、2005年よりSTORY編集長に。今年6月から美STORY編集長を兼務。
清水:1970年生まれ。映像制作会社を経て、1999年ウイーズ・ブレーン入社。プロモーション全般の企画・制作を行う。
小田島:1967年生まれ。デザイン制作プロダクションを経て、1994年オクスデザイン入社。

 8月18日、光文社の女性誌『美STORY』が創刊された。
 創刊キャンペーンでは、創刊前日の夕刊1面の広告欄をティザー的に使い、テレビ欄でタネ明かしをする仕組み。創刊日当日の朝刊では、女優の中山美穂を起用した大胆な写真と童話「白雪姫」になぞらえたコピーで大きな反響を呼んだ。
 この広告を手がけた清水、小田島両氏とクリエイティブディレクター的な役割を果たした山本編集長に話を聞いた。

──『美STORY』のコンセプトからお聞かせ下さい。『STORY』から派生した美容誌という位置付けでしょうか?

 山本 美容誌というよりは、ビューティー誌ですね。僕たちは、「美・食・習」と言っています。「美」は、肌そのものを美しくするためのスキンケアやメークなどです。「食」は、インナービューティー。つまり健康面を含め、何を食べてキレイになるかということです。そして「習」は、小顔マッサージや最近だと腸もみマッサージなど、美しくなるための習慣のことです。つまり、美しくなるためのライフスタイル誌なんです。

雑誌の広告らしくなく

──大胆な紙面使いですが、このプランが生まれた経緯は。

 山本 広告代理店に向けて、『美STORY』のオリエンテーションを行った際に、「潤沢な広告予算ではないので、頭を使ったプランがうれしいです」と伝えたんです。いくつか提案してもらったプランの中で、今回の紙面の使い方が、一番魅力的でした。
 清水 『美STORY』のコンセプトや山本編集長の考えを踏まえ、いくつかプランを持っていきました。その中の一つが、創刊前日の夕刊1面とテレビ面の広告欄ジャックと創刊当日の朝刊全15段のパッケージでした。
 山本 まずは前日の夕刊で、雑誌のコンテンツを盛り込み、当日の朝刊では、いわゆる“雑誌の広告”っぽくないビジュアルで、“雑誌のコンセプトを伝えるための広告”を作ろうと考えたんです。

8月17日 夕刊〈18面〉
8月17日 夕刊〈18面〉
8月17日 夕刊〈1面〉
8月17日 夕刊〈1面〉
──夕刊の紙面使いの狙いは?

 清水 1面で新聞読者に「何これ?」と思わせて、興味を持ってもらいたかったんです。ティザー的な使い方ですね。
 山本 あえて、中山さんの力強い目や魅力的な口元だけを切り取ることで、読者の興味も強まると考えました。
 小田島 モデルに中山美穂さんを起用して、このトリミングは通常ありえないと思うんですね(笑)。ただ、『美STORY』という雑誌が伝えたいメッセージは何かといったら、それは「美」だと思うんです。「美」というのは抽象的なものですから、そのメッセージに強さを持たせるために、あえて断片的な情報を見せました。読者全員には刺さらないかもしれないけれど、興味を持った読者には情報がより深く刺さると思うんですね。

──当日の朝刊ではグリム童話「白雪姫」をベースにした表現をされていますが、これはどのように生まれたのですか。

 山本 鏡を使った撮影をしている時に、「白雪姫」の本当の主役は誰だろうかという問いかけを創刊号のコンセプトにしようと思いました。
 「白雪姫」の主役は、当然白雪姫なんですが、『美STORY』が考える主役は継母の方です。本来なら、人生で最も豊かで美しい時間を過ごせるはずの人が、鏡を相手に自分の美しさを実感することができなかった。だから、若くて美しい白雪姫に嫉妬して、悲惨な結末を迎えてしまう。ただ、こんなふうに若さに嫉妬し出すと、救われないですよね。だから読者に対して「そうではないんだ」ということを言いたかったんですね。

8月18日 朝刊
8月18日 朝刊
──大きく背中が開いたドレス姿の中山美穂さんの写真も、インパクトがありましたね。

 山本 従来のような雑誌の創刊広告にはない“新しさ”をうまく表現したかったんです。新聞の朝刊に、こんなセクシーなビジュアルがあったら新鮮ですよね。僕は雑誌を作る時に、“セクシー”という要素をすごく大切にしています。性的な美しさというのは、男女関係なく、人の目を引く要素なんですね。
 そうすることで、この広告に目を留めて、雑誌のコンセプトをしっかり読んでもらいたかったんですね。
 小田島 ビジュアルは、撮影現場の緊迫した空気を伝えることを意識しました。山本編集長の考えが一貫していたので、振り切った表現ができました。
 清水 今回の表現は、一つのチャレンジだと思うんですね。普段は、プレゼン段階では角のある表現でも、制作が進むにしたがい、次第に保守的な方向に向かうことが多い。しかし、このキャンペーンでは山本編集長の考え方にブレがなく、最初から雑誌の広告らしくない少し過激な表現を認めてくれていたので、このような展開ができたと思っています。
 山本 広告は、人の目を経れば経るほど、保守的でつまらなくなりますよね。だから、僕も、まともには上に通しませんでした(笑)。

新聞広告にアイデアを

──キャンペーンは新聞広告を中心とした展開でしたが、反響はいかがでしたか?

 山本 すごく大きかったですね。創刊当日、全国およそ60店舗の紀伊國屋の雑誌部門で、一番売れたようです。今回のように、読者に創刊コンセプトをきちんと読んでほしいと思った時に、それができて、なおかつ説得力がある媒体といったら新聞以外にはないんですよ。
 新聞広告がどれだけ効果的かというと、実感できない部分があって、懐疑的になってしまいがちです。しかし、これは雑誌広告にも言えることですが、数字に現れないところでの生かし方はある。アイデア次第で到達すると思うんです。
 これは、増刊発行の『美STORY』の頃からやっているんですけど、雑誌発売から1週間ぐらい後に、夕刊に追広告を出稿しているんです。読売新聞の夕刊にはマンガがないから、読者が「マンガ、始まったんだ」と騙されるかなと思ったんですね(笑)。
 雑誌の創刊広告について言えば、半5、全5段など決まりきったことをしていると目立てない。そこに何かしらのアイデアが必要だと思うんですね。そのアイデア次第で、新聞広告の可能性は広がる。今回新聞を使って、改めてそう思いましたね。

8月21日 夕刊
8月21日 夕刊
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