from Europe

2009.8・9/vol.12-No.5・6

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不況下のカンヌライオン〜広告祭の意義を考える

 6月21日から27日、「第56回カンヌ国際広告祭」が開催された。経済危機を反映し、今回は出張を見合わせた広告関係者が多く、総来場者数は昨年比で2割減だった。毎晩、華やかに行われていた広告会社主催のパーティーは激減したが、広告業界誌で営業を務める知人は「ゆっくり人に会えて充実していた」と手ごたえを伝えてくれた。
 カンヌ国際広告祭では、テレビCMなどのフィルム部門のグランプリが一番最後に発表される。今年はDDBアムステルダム(オランダ)が制作し、オンラインで放映されたフィリップスのCM「シネマ21:9テレビジョン」が選ばれた。警官と強盗団の銃撃戦の一瞬を、映画「マトリックス」のような細切れの映像で俯瞰した斬新さが評価された。私自身は、“動かないテレビCM”の受賞に衝撃を感じた。
 アドバタイザー・オブ・ザ・イヤーには、フォルクスワーゲン(VW)が選ばれた。長年にわたる革新的なマーケティング活動が評価された。同社は1961年以来、各部門合計で実に150もの受賞を得ている。VWの伝えるメッセージはタイムレスだ。昨年、各部門で受賞した同社の「パークアシスト」機能の広告は、今年も形を変えてフィルム部門の銅賞を受賞しているし、多国籍企業を反映し、表現は各国さまざまでも、それぞれに風格を感じる成熟がある。
カンヌライオンズ・Tシャツグランプリの大賞作品と受賞者Sho氏
カンヌライオンズ・Tシャツグランプリの大賞作品と受賞者Sho氏
 さて、「取材でカンヌに行く」と言うと「映画祭?」とよく聞かれるように、「カンヌ広告祭」の認知度はまだまだ低い。今年の出色は、昨年サイバー・チタニウム両部門でグランプリのダブル受賞を果たしたユニクロが仕掛けた「カンヌライオンズ・Tシャツグランプリ」だろう。昨年の受賞後、事務局長から「まだメジャーではないカンヌを何とか盛り上げたい」と相談を持ちかけられたのだ。「Tシャツのメディアとしての可能性」を考えていた事務局と「Tシャツは個性を表すメディア」を標榜するユニクロの思惑が合致した。両者は“イケテなかった”公式Tシャツを一新しようと、昨年11月からデザインを公募し、世界51か国1448作品のエントリーの中で10作品を公式Tシャツに採用、1作品をグランプリに選んだ。
カンヌ速報のヘッドラインをプリントしたTシャツ
カンヌ速報のヘッドラインをプリントしたTシャツ
 また、会場では、現地で発行されるカンヌ速報のヘッドラインが書かれたTシャツを着たマネキンが、日替わりであちこちに出没し、最終日にはレッドカーペットで約30体のマネキンが授賞式への出席者を迎えた。
 ユニクロのグローバルコミュニケーション部部長、勝部健太郎氏は「世界のクリエイターが集まる場所でユニクロのプレゼンスをあげたことが成果」と語る。来年はさらに派手にやる計画があるそうだ。
 多メディア化に伴って、カンヌの各部門の境目はあいまいになってきた。一方で、ユニクロの仕掛けにより、カンヌに新たなメディアが生み出された。人がやったことがないことを試してみること、これこそがクリエイティブであり、人の心を動かす広告制作につながる。イギリスの広告業界誌「キャンペーン」のクレア・ビール編集長は「カンヌは広告主とのビジネスを広げるだけでなく、広告業界そのものの活性化のためにある」と語っている。

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