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2009.8・9/vol.12-No.5・6

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低価格の「KY」キャンペーン「びっくり・納得・おもしろい」広告で

西友 マーケティング本部 バイス・プレジデント 富永朋信氏

 西友の低価格キャンペーン「KY(カカクヤスク)」の広告が、昨年11月から今年6月まで6回にわたって読売新聞朝刊に掲載された。一昨年の流行語「KY」をアレンジして前面に打ち出した同キャンペーンは、読者に強いインパクトを与えた。
 同社は「KY」を「カカクヤスク」として打ち出したが、この言葉は認知度が高い反面、「空気が読めない」というマイナスの意味合いもある。同社はこれを逆手にとってキャンペーンの旗印としてうまく活用した。
 「『KY』を『空気を読んだ』とすると『自分の意思を自分の身の丈で貫く』といったポジティブなニュアンスに読みかえることができます。人は正論だけではなかなか共感せず、面白いことに反応を示す傾向がありますので、広告でアプローチを図るには『びっくり・納得・おもしろい』の3ステップが必要だと考えています。『KY』はその『びっくり』なのです」と話すのは、同社マーケティング本部バイス・プレジデント富永朋信氏だ。

レシートの比較広告で反響

 キャンペーン開始を告知する広告では、口を開けて叫んでいる女性と「KYでいこう!」という文字がレイアウトされ、爽やかなブルーと同社のコーポレートカラーでもある赤で、決意の強さをシンプルに表現した。
 昨年12月4日と今年3月5日には、商品購入合計金額を記した同社と他社のレシートを並べて対比した比較広告を掲載し、各種メディアに取り上げられるなど、大きな反響を巻き起こした。
 「リアルな買い物を再現しないとアンフェアになるので、実際に購入されがちな商品を組み合わせました。個々の商品ではなく、購入金額の合計がいかに安いかを表現しました」と富永氏は説明する。3ステップ「びっくり・納得・おもしろい」の「納得」を意図したものだ。

2008年11月13日 朝刊
2008年11月13日 朝刊
2009年3月5日 朝刊
2009年3月5日 朝刊

 6月6日と7日には、ファッションイベント「SEIYU FASHION PROJECT」をラフォーレミュージアム原宿で開催した。同社の衣料品ブランドGEORGE(ジョージ)の衣類が展示され、来場者はスタイリストの監修で洋服のスタイリングを行える。その上、希望者はプロのカメラマンによる写真撮影でモデル気分を体験できるという。この入場無料のイベントは、3ステップの「おもしろい」に当たる。
 開催前日の6月5日には告知広告を掲載。GEORGEブランドを着た外国人モデルを右半分にレイアウトしたビジュアルは、従来の「西友」のイメージを刷新する斬新なものであった。
 事前告知はポスター掲示やWeb等で展開。イベント開催両日には、原宿・表参道の街頭で、読売新聞の題字が入った特別PR号外2種を計1万部配布した。フロントには新聞記事体裁でイベント開催の背景や詳細を載せ、裏面は新聞広告と同じビジュアルとした。
 「原宿というのは常に刺激にあふれている街で、何か最後の一押しがないと、なかなか人をリアルに動かすことはできません。特別号外は、多様なメディアを使いながらの最後の一押しとなりました」
 その結果、会場は特別号外を手にした幅広い年齢層の来場者であふれかえったという。
 「各メディアを通じて幅広く情報発信した結果、石を池に投げて波紋が広がるような『ケミストリー』を起こすことができました」

6月5日 朝刊
6月5日 朝刊
PR号外
PR号外

新聞の特性を生かしたメディアミックス

 6月18日の広告は、「I〈ハートマーク〉KY」と中央に大きくレイアウトし、左下に小さな赤文字で「レジで、うふふ。」と記載。「KY」という言葉が浸透し、消費者との関係が深まりつつある中で、新聞広告として初めて消費者の視点でメッセージを投げかけた。「今までのラブレターに消費者がこたえてくれるのではないかと期待を込めました」。受け手との距離を縮めようとしたものだ。
 この広告掲載当日にはテレビでスポットCMも流した。家事や育児に追われる主婦の多忙な一日の中で、唯一「うふふ」と笑顔になれる瞬間として西友で低価格商品に出くわす場面を取り上げている。シンプルな新聞広告で謎掛けをし、CMの具体的な表現で答えるという形にし、メディア連動の相乗効果を生かして印象を高めたという。
 「新聞は社会的なメッセージを投げかけるメディアです。そして様々な場所で読まれるため接触が比較的長いという特徴もある。非常に広告しがいのあるメディアですね」

6月18日 朝刊
6月18日 朝刊

安定した「安さ」を追求

 2005年、西友は米国大手小売店ウォルマートの子会社となった。一連の低価格キャンペーンは、ウォルマート社に代表されるビジネス手法「Everyday Low Price」が軸となっている。消費者が欲しい商品をいつでも安く提供し、消費者が主体となって消費行動をハンドリングできる安定した「安さ」である。
 「特売を行うと売り上げと在庫が安定しませんし、低価格商品に特化した特売コーナーづくりには余分な費用が発生します。結果、売り上げが平準化せずリスクが生じます」と苦労を語る富永氏。しかし、この悪循環を一度打破して「Everyday Low Price」のサイクルを作り上げると、自ずとコストが下がり、それが売価に反映され、消費者の購買行動の促進につながるという。こうしたサイクルを構築するまで同社は試行錯誤し、2年近い年月を要した。
 企業努力と一連の広告活動によるキャンペーンによって、「西友」=「KY(カカクヤスク)」という認知度は高まった。
 「お客様からの『安い西友が好き』というエンゲージメントを引き続きつくっていかなくてはいけません。低価格戦略はぶれない軸として打ち出し続けます」
 景気後退が進み、自社の売り上げに主眼を置く企業が多数みられる中、常に消費者の「better life(より良い生活)」を追求している姿勢に、昨今各企業が唱える「サスティナブル(持続可能な・環境にやさしい)」のもう一つの意味「困難や衝撃などに屈しない」という企業の力強さと強い意志を感じた。

(樋口)

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