特集

2009.6・7/vol.12-No.3・4

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広告効果をどう考えるか

 広告効果は、広告主企業の最大の関心事である。その広告効果が改めて問われている。背景には、多メディア化と生活者が接触する情報量の増加で広告の効果が見えにくくなったことに加え、経済情勢の悪化がある。今こそマーケティングの基本に立ち返って考える必要があるのではないだろうか。

オンリーワン広告とその効果

 第25回読売広告大賞で「読者大賞」を受賞したのはシャープ。同社が「国内で販売するテレビを2005年までに液晶に変える」と世の中に宣言したのは98年だった。それから10年たち、同社の「AQUOS」は今や液晶テレビの代名詞になっている。広告活動にも「選択と集中」で取り組むシャープの広告に対する考え方を聞いた。

――ソーラー発電「太陽とシャープ篇」を昨年スタートさせた背景から聞かせてください。
ソーラー発電「太陽とシャープ篇」2008年7月7日 朝刊
ソーラー発電「太陽とシャープ篇」
2008年7月7日 朝刊

 ソーラー事業を「シャープの新たな顔」にしたいという思いで始めた広告シリーズですが、直接のきっかけは、昨年の環境意識の高まりです。7月にG8洞爺湖サミットを控えていたこともあって、昨年は、年明けから世の中が環境一色になっていました。マスコミの論調も、「08年は京都議定書の約束期間スタートの年。なのにCO2削減目標マイナス6%どころかプラスに増えている。このままでは到底届かないのでは……」という、地球規模での危機感の大合唱でした。
 それで、洞爺湖サミットのタイミングを「ソーラー・カンパニーSHARP」を印象づける絶好の機会ととらえてスタートしたのです。サミットの記事が連日のように新聞の第1面を飾る、その時に広告が掲載されることが、非常に重要だったのです。
 シャープの太陽電池の歴史は液晶より古く、開発に着手してからすでに半世紀、50年になります。63年には世界で初めて量産化も開始しています。創業者の早川徳次が、クリーンで無尽蔵な太陽エネルギーに大きな夢を感じて以来、採算を度外視してまでも研究開発を続けてきた事業です。今でこそ太陽電池の累計生産量は世界の4分の1を占めるに至っていますが、当初はなかなか事業にはなりませんでした。それが、時代の大きな変化とともに、企業の新たな顔になり、「家電メーカーからエネルギーメーカーへ」と一歩踏み出したということなのです。

考え抜かれた広告展開

――洞爺湖サミットのときは新聞広告を5日連続で掲載しましたが。

 新聞広告のシリーズ掲載自体は、それほど珍しいことではないと思いますが、洞爺湖サミットはとても重要な意味を持った国際会議でしたから、このキャンペーンでは、そのニュースと密接に連携するメディアは何かということが大きなポイントでした。
 それで新聞をキャンペーンの核にしたわけです。
 新聞は、公共性や社会性を兼ね備えたメディアですから、広告でもその特性を生かすことが大切です。今回の場合、まさに世界が注目するであろう7月7日からの洞爺湖サミットのタイミングがとても重要だった、ということなのです。

2008年7月8日 朝刊
2008年7月8日 朝刊
2008年7月9日 朝刊
7月9日 朝刊
2008年7月10日 朝刊
7月10日 朝刊
2008年7月11日 朝刊
7月11日 朝刊
――他のメディアの展開は、どう考えられたのですか。

 テレビ、雑誌、ウェブ、ショーウインドーでも時を同じくして展開しました。
 まず、新聞広告の注目率を高めることも狙って、テレビCMをサミットの前の週からスタートさせました。
 地球温暖化に代表される深刻な環境問題は、いまや一刻の猶予も許されない状況ですが、それを従来通りの環境対策や環境配慮のレベルに終わらせず、エネルギーのあり方そのものを問う段階へと進化させるべきだと考えました。
 シャープが半世紀にもわたって取り組んできた太陽光発電。海上のブイや無人灯台、宇宙の人工衛星などの電源を支えてきたその抜群の信頼性をはじめ、全世界の4分の1を供給してきたナンバーワンの実績など、シャープならではの取り組みを広く紹介したい。それが「シャープは、世界のソーラー・カンパニーへ。」というメッセージに込めた思いでした。
 太陽のビジュアルとともに、「救うのは、太陽だと思う。」という吉永小百合さんのナレーションには、マスコミだけでなく一般ユーザーからも数多くの共感の声をちょうだいしました。
 また、テレビスポットに合わせてウェブサイトも開設しました。CMのイメージを踏襲しながら、SHARPソーラー50年の実績から最新の薄膜技術の紹介に至るまで、より奥の深い内容で信頼性をさらに向上させました。
 一方、難しいのは雑誌でした。新聞とテレビで集中的にキャンペーンをやっているわけですから、雑誌広告で再認されるだけでも、かなりの相乗効果は期待できます。しかしながら、雑誌はあまりにも細分化されていて趣味性も高い。そこに1ページの広告が入ったとしても、印象は薄いのではないか。
 そこで考えたのが、出版社と統合的にタイアップする方法です。小学館と組んで、女性誌から学年誌、情報誌、コミック誌に至るまで全24誌にわたって、それぞれ4ページのタイアップ広告を掲載しました。すべての雑誌を貫く「ソーラー大使」として『ドラえもん』を起用。例えば「CanCam」ならモデルと一緒に登場し、太陽エネルギーの偉大さ、太陽電池の仕組み、シャープソーラーの歴史や最新の技術に至るまで読者層に合わせて分かりやすく紹介する、という仕掛けです。

――地元の北海道や海外でも展開されたということですが。
デイリーヨミウリ 7月7日
デイリーヨミウリ 7月7日

 G8洞爺湖サミットは、文字通り世界中が注目していました。ということは、各国の首脳はもとより、同行する人々や報道関係者も大勢来日するはずです。つまり、そういった海外からの有力なスタッフの人たちにもシャープという企業の取り組みを効果的に知らせることができるチャンスでもあったのです。
 そのため、内外のスタッフ、報道陣が利用する千歳空港では、6月よりショーウインドー広告を全面リニューアルしました。ソーラーによる創エネと液晶による省エネで、一歩先行くシャープの環境への取り組みをアピールしたのです。QRコードによる携帯サイトへのアクセスも飛躍的に上昇しました。
 さらに、会場周辺のホテルに泊まる外国人に向けて、デイリーヨミウリをはじめとする英字紙にも5日連続で広告を掲載しました。また、テレビではCNNジャパンなど英語ニュースチャンネルに英語版のCMを入れたのです。
 さらに、欧米の現地でも、同時に展開しました。
 アメリカでは、ニュース局を中心にテレビCMを展開するとともに、大都市の主要新聞に、これも5日連続で広告を掲載しました。
 ヨーロッパでも、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの主要新聞に、3日連続で出稿しました。これらは、すべてサミットの始まる7月7日から一斉に掲載をスタートしたのです。

――新聞では12月1日と1月5日から7日にもシリーズを掲載されていますね。

 12月は、ポーランドのポズナニで開催された国連気候変動会議(COP14)に合わせたものです。また、今年のお正月にも3日連続で掲載しました。
 テレビスポットをお正月休みの間、集中投下したあと、仕事始めの1月5日から連続掲載するというタイミングを狙いました。
 ご存知の通り、通常、新聞の閲読率というのは、一部の新聞を除いて平日よりも土曜日や日曜日のほうが高いはずです。しかし、帰省から戻って疲れている時より、仕事始めの朝、「さあ、会社に行くぞ」という時の方が、じっくり紙面に目を通すでしょうし、職場で話題にも上りやすいのでは、と考えたわけです。

2008年12月1日 朝刊
2008年12月1日 朝刊
2009年1月5日 朝刊
2009年1月5日 朝刊
2009年1月6日 朝刊
1月6日 朝刊
2009年1月7日 朝刊
1月7日 朝刊

宣伝にもオンリーワン商品を

――メディア選択やその使い方に、そこまで徹底的にこだわるのはなぜでしょうか。

 私どもの競争相手は、どこも非常に大きな会社ばかりで、企業規模では当社の何倍もあるところが少なくない。
 会社は、オンリーワン商品を次々に開発すること、すなわちオンリーワン経営を旨としています。単なる規模の戦いでは話にならないが、オンリーワンを積み重ねれば、それぞれのカテゴリーでナンバーワンも見えてくる、という考え方です。
 それと同様に、宣伝においてもオンリーワンを目指せ、というのが方針なのです。マス広告にかけられる広告宣伝費では、おそらく競争相手に比べるべくもない。だからこそ、創意工夫をして宣伝のオンリーワン商品といえるものを生み出す必要があるのです。

――宣伝のオンリーワンとは、具体的にはどういうものですか。

 要するに、これまで誰もやらなかった、初めての試みにチャレンジしよう、ということです。ある意味、従来の常識を覆す、タブーを破るということにもつながります。例えば、読売新聞の朝刊1面下の書籍欄をレギュラーで確保できたら、それはすごいことです。たとえそれが無理でも、別の視点から画期的なことはできないだろうか、と考えるわけです。
 新聞は歴史のあるメディアで、その歴史を重んじることが信頼にもつながっている。だから、タブーを破ることが一番難しいメディアでもあるわけです。マス広告に限らず、過去にないこと、ユニークであることが効率をも上げる、という考え方が広告戦略の一つの尺度になっています。

――方で、こうしたら効果的だという広告のセオリーもあると思うのですが。

 例えば、テレビ媒体でいえば、15秒のスポットCMを、この時期に、こういう時間帯でこれだけの量を入れれば、1人当たりの到達コストでは一番効率が良い、というようなデータはあります。

――新聞であれば土日のほうが閲読率は高いというのもそうですね。

 それも広告のセオリーの一つです。しかし、セオリー通りのことをそのままやっていて、力の強い相手に勝てるかというと、どうでしょう。広告でも、商品づくりでも、同質競争に陥らないように、日々努力を怠ってはいけないと思うのです。

広告効果をどう見るか

――これまで広告に対する考え方を伺ってきましたが、その効果は、どう評価されているのでしょうか。

 広告宣伝の目的にもよるのでしょうが、一つ一つのキャンペーンだけで判断しないようにしています。もちろん、個々の広告キャンペーンごとに、接触率や注目率、好感度、理解度などは調査しています。
 それによって広告手法を見直したり、次の機会の表現やメディアを改善したりできるからです。
 ですが、最終目標は、シャープという企業ブランドを強化向上させること。それには、広告だけでなく、業績や株価、企業活動に関する報道記事、実際に商品を購入、使用したときの体験、アフターサービスの対応、社員の印象など、あらゆることが大きく影響しています。
 そのため、一般ユーザーの心の中のブランド評価を把握するべく、定期的な調査も行っています。
 それらをトータルにとらえて、シャープという企業ブランドやAQUOSという商品ブランドが今以上に強く信頼していただけるよう、全社を挙げて取り組んでいくことこそが最も重要だと考えています。


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