特集

2009.4/vol.12-No.1・2


不況に打ち勝つブランド戦略

激戦ヘアケア市場での存在感

 ユニリーバ・ジャパンのLUX(ラックス)は、ヘアケア製品の年間売り上げシェアで98年からナンバーワンを維持している。3月11日には主力商品を改良新発売。キャサリン ゼタ・ジョーンズ主演のショートフィルムを制作し、新たなキャンペーンを展開している。競争が激しいといわれるヘアケア市場の中で、トップブランドをどう維持してきたのか。ブランドマネジャーの光宗晃子氏に話を聞いた。

――3月11日にラックスの主力商品をリニューアル発売しましたが、広告にも力が入っていますね。
TVCM
ラックスの世界観を伝えるショートフィルム「アルケミスト―輝きの秘密―」

 今回は、「スーパーリッチシャインシリーズ」「スーパーダメージリペアシリーズ」を全面改良、新製品も追加して発売しました。開発に約5年の年月をかけ、特にシャンプーとコンディショナーはイギリスにあるユニリーバ中央基礎研究所が開発し、国際特許出願中の技術を採用しています。モニターテストでも、従来の商品の使用感を大きく上回る評価を得ています。ラックスの総力を挙げて投入した商品なので、今回のキャンペーンもラックスの世界観を強力に押し出すものにしたい、ということから作られました。
 キャンペーンの核となるのは、キャサリン ゼタ・ジョーンズ主演のショートフィルム「アルケミスト―輝きの秘密―」です。魅惑の成分「美容液」をめぐりキャサリンが活躍するアクション、アドベンチャー、ロマンスの要素が入ったスリリングなストーリーです。制作スタッフもハリウッド映画の実力派のクリエイターを起用しています。
 約7分の作品ですが、ラックスのサイトではフルバージョンが見られます。また、2分と5分バージョンもあり、地上波放送やCS放送でも展開しています。そうすることによって、15秒のテレビCMでは伝えられないラックスのハリウッド的世界観がより深く伝わるのではないかと思っています。
 あらゆる女性の美しさを実現させることがラックスというブランドの大きな夢ですが、それをどう実現させるかを映画に描かれたラックスの世界観を通して伝えていく。これをメーンに年間を通してコミュニケーションしていく考えです。

ラックスブランドの特質

――ラックスブランドの世界観というと、やはりハリウッドですね。

 ヘアケア製品のメーンは「スーパーリッチシャイン」で、これまでも一貫してハリウッド女優を起用してきました。実は、キャサリンも今回が初めてではなく、ラックスが日本のヘアケア市場でシェア1位を獲得した98年頃のキャンペーンも彼女でした。ロイヤルユーザーからも、その時の広告が一番好きだという声が多かったのです。
 ラックスはイギリス生まれで、ブランド名は英語の「luxury(ラグジュアリー)」に由来しています。海外から来た高級感のある世界を表現するために、輝く女性の代表、憧れの対象として長年、ハリウッド女優を起用してきたということです。
 日本人は美に対する要求が強いこともあり、ラックスのヘアケア製品が一番売れているのは日本です。キャンペーンも日本独自の展開を行っています。

――ラックスが、日本のヘアケア市場でトップを維持している要因もそこにある?

 突き詰めれば、そういうハリウッド的なブランドの世界観と「製品のたゆまぬ改良」、この2点に尽きると思います。
 実は06年に、「ラックススーパーリッチ」から「スーパーリッチシャイン」にネーミングを変えているのですが、それまでのラックスのヘアケア製品は、この1シリーズしかなかったのです。「スーパーダメージリペアシリーズ」が追加されたのは、06年になってからです。
 ラックスの特徴は、その一つのシリーズを発売後も1年半か2年に1度、改良を続けていることです。また、4、5年に1度は製品の全面的な改良を行っています。昨年、「10年間、選ばれてNo.1」キャンペーンを行いましたが、その時点で、ラックスがこれまでに作った試作品は1万8000個を超えていました。
 その5年に1度の大きな改良のタイミングが今回だったということです。通常は1シリーズごとの改良新発売ですが、今回は「スーパーリッチシャイン」「スーパーダメージリペア」の二つのシリーズを同時にリニューアルしました。それだけ、ラックスにとって今回の全面改良新発売は大きな出来事なんです。

「スーパーリッチシャインシリーズ」「スーパーダメージリペアシリーズ」
3月に全面改良新発売した「スーパーリッチシャインシリーズ」(上)と「スーパーダメージリペアシリーズ」

ヘアケア市場を牽引する

――ラックスがヘアケア市場でトップになったきっかけは、何だったのですか。

 ラックスが日本市場に参入したのは89年ですが、当時のヘアケア市場は、「フケやかゆみを防ぐ」「優しく洗い上げる」といったファミリー系、マイルド系と呼ばれるカテゴリーが市場の多くを占めていました。一方、ラックスは「洗うだけでなく髪を美しくする」ビューティーシャンプーというコンセプトを当時から打ち出していました。「輝く髪にする」が、ラックスが一貫して使ってきた言葉です。
 それをより具体化させ、髪の保湿効果に加え、補修効果まであるシャンプーを発売したのが97年です。それがナンバーワンとなった直接的なきっかけだと思います。今ではビューティーシャンプーが主流になり、市場のほぼ7割を占めています。

――その日本のヘアケア市場は、非常に競争の厳しい市場だと言われていますね。

 日本の場合、シャンプーとコンディショナーの使用率はほぼ100%になっていますし、人口も減少傾向にあります。今後、シャンプー・コンディショナー市場が劇的に伸びることは考えられません。限られたパイを各社が奪い合うということでも、厳しい市場なんですね。
 ただ、「トリートメント」は今後も伸びていくのではないかと考えています。最近は髪にカラーリングをしたり、パーマをかけたりする人が非常に多くなっていますが、それに比例して髪のダメージに対する意識が高まり、トリートメント商品へのニーズが高まっているからです。ラックスも今春、新たにトリートメント2品を発売しています。

コミュニケーションの重要性

――ラックスのターゲットですが、どのように設定しているのでしょうか。

 通常のコミュニケーションターゲットはF1層(20〜34歳女性)です。実際の購入者は、それよりも上の年齢層まで幅広いですが、コミュニケーションターゲットの年齢設定を上げると、下の年代を取り込めないことがあるというのが理由です。
 もちろん、目的によってコミュニケーションターゲットは変えています。例えば、先ほど言ったラックスの「10年間、選ばれてNo.1」キャンペーンのコミュニケーションターゲットは、ラックスのロイヤルユーザー、つまり実購買層でした。その際、ナンバーワンブランドらしい広告のやり方ということと、ロイヤルユーザーへの感謝の意味を込めて、ラックスのサイト以外では、新聞とテレビという2大メディアを使って展開しました。
 また、この10年でいうと、新聞と雑誌への広告掲載が増えているのも事実です。イメージだけでは伝えられないブランド特性は活字にした方が伝えられるということがあります。
 ラックスがコミュニケーション活動を重視するのは、絶え間なく新製品が発売される競争の激しい市場だということがあります。コミュニケーションで常に新鮮なイメージを作り続けないと、なかなか新規ユーザーの獲得が難しいんですね。

2008年7月2日 朝刊
2008年7月2日 朝刊

揺るぎないブランドの根幹

――ここ数年、国内メーカーもシャンプーの新ブランドを次々に投入していますが、ラックスがナンバーワンを守っている理由は、どこにあるのでしょう。

 短期的には首位の座を譲ったこともあったのですが、やはり、これまでの路線からぶれなかったことが、売れ続けることにつながったと思います。長い間改良を重ねてきたブランドですので、一度お使いいただくと処方の良さがわかる。ラックスは、ユーザーのリピート率が非常に高いブランドなのです。それから、ハリウッド女優というゴージャスな世界観のあるラックスですが、店頭に行ってみると、価格帯もそれほど高いわけではない。しかも、実際に使ってみると良さを実感できる。それが、ラックスが売れ続けている理由だと思います。
 この十数年で流通チャネルも変わってきています。当時まだ少なかったドラッグチャネルが主流となり、GMSやスーパーはもちろん、この春からはコンビニでの取り扱いもかなり増えます。やはり、ナンバーワンブランドであることが、取り扱いを広げている大きな理由です。
 もちろん、競争が非常に激しい市場なので、現状に満足はしていられません。店頭まで含めたコミュニケーション活動、プロモーション活動を強化していく必要があります。ただ、その時も、女性たちの「美しく輝いていたい」という願望に応えるブランドの根幹が揺らぐことはありません。


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