特集

2009.4/vol.12-No.1・2


不況に打ち勝つブランド戦略

エントリーからミドルクラスへ

――マーケティング戦略としては、どのようなことを考えていますか。

 「EOS」全体の話にもなるのですが、お客様をどう底上げしていくかを、ここ1、2年のテーマにしています。
 一つは、エントリークラスの「EOS Kiss」からミドルクラスへという底上げです。もう一つは、ミドルクラスもこれまではハイアマユーザーを囲い込むことだけを考えてきましたが、07年に「EOS 40D」が出たころから、ミドルクラス自体の中でもステップアップをテーマに掲げています。

――ミドルクラスの広告には、俳優の渡辺謙さんを起用していますね。

 広告に渡辺謙さんを起用したのは、今言ったミドルクラスへの底上げが目的です。まず、「Kiss」で写真に目覚めた人たち、あるいは、フィルムカメラで長年、写真を撮ってきて、これからも趣味としてずっと楽しんでいきたいという人たちを取り込んでいくことが狙いです。具体的には、今は団塊世代をメーンターゲットにしています。
 ミドルクラスに力を入れる理由は、いくつかあります。まず、ミドルクラスの一眼レフが価格的にも手頃になってきたことです。それから、写真用プリンターの性能も非常に向上しています。数年前のプリントは色あせも激しかったのですが、今は「ChromaLife100」と呼ぶようにフィルムのプリントと遜色ありません。ネットを使えばカメラに関するさまざまな情報も仕入れられ、自分なりの楽しみ方を見つけられる環境も整ってきています。ミドルクラスの一眼レフは、以前のように敷居が高いものではなくなってきていると見ています。
 さらに、50年以上の歴史があるキヤノンフォトサークルや、自然発生的に90年代から始まっているEOS学園といった活動を通して、ミドルクラスのユーザーを育てることにも力を入れています。
 キヤノンフォトサークルはこれまでも会員から寄せられた優秀作品などを掲載した月刊会報誌や年鑑を発行してきましたが、07年からは従来のレギュラー会員制度に加え、ウェブ会員制度を設けるなど活動に力を入れています。
 また、EOS学園は一眼レフ初心者からハイアマチュアの人たちまで、写真の知識やテクニックを学べる教室です。これまでは東京に1教室だけだったのですが、東京に3教室、大阪、名古屋にも1教室を常設しています。
 フィルムカメラ時代からフォトカルチャーをバックアップしてきたことも、我々が誇っていい点だと思っていますし、カメラ、プリンター、フォトカルチャーと、カメラを取り巻く環境をトータルにサポートできるのも我々の強みだと思います。

2008年10月4日 朝刊
2008年10月4日 朝刊

一眼レフ市場の更なる活性化を

――ちなみに、一眼レフにエントリークラスができたのはいつ頃でしょうか。

 90年秋に「EOS1000」というカメラが出ました。当時としては画期的に小型軽量で、かつ価格も安かった。そこからですね。その後継機種の「1000S」のフルモデルチェンジが実は元祖「EOS Kiss」です。KissはKeep It Smart and Silentの略ですが、当時は社内、社外で賛否両論ありました。しかし、「EOS2000」というような呼称だったら、一眼レフは一般の家庭に広がらなかったと思います。
 ただ、その後も順調にきたわけではなく、90年代後半にはデジタル・コンパクトに押されて一眼レフ市場は本当にガタガタに落ち込みました。回復し始めたのが「EOS Kiss Digital」の1号機が出た03年からです。そういう歴史を作ってきたからこそ、「EOS Kiss」はデジタル一眼レフのデファクトスタンダードだという自負があります。
 家電メーカーが参入し、一眼レフ市場も今後さらに競争が激しくなると思います。その一方で、これまでのカメラにない価値や提案が行われるとしたら、業界全体が活性化する大きなきっかけにもなります。我々も負けていられないですね。


もどる