from America

2009.4/vol.12-No.1・2


収益性はある米国「新聞事業」

 景気後退の影響を受け、休刊や破綻が相次ぐ米新聞業界だが、一般的にその要因として捉えられがちな「新聞メディアというビジネスモデルの苦境」と、「新聞社経営への逆風・失敗」は分けて考える必要があるとの見方が浮上している。広告業界誌アドエージは、現在の米新聞業界の地盤沈下は、新聞メディアそのものではなく、メディアオーナーや経営者に原因があると断じている。実は米国において、特に大都市圏以外では、新聞事業自体はいまだに高い収益性を維持しているのである。
 新聞業界アナリストのモートン氏によると、全米の日刊紙約1,400紙のうち、1,300紙は赤字を計上していない。それどころか、株式を公開している(個人オーナーでない)新聞全体では、平均して10.8%の営業利益率を記録している(2008年7−9月期)。
 オーナーによる経営の失敗として挙げられるのが、不採算事業によって抱えた負債や、先行き不透明な事業に対する無計画な投資であり、例えば連邦倒産法第11条の適用を昨年12月に申請したトリビューン社や、債権者への経営権委譲を検討中のフィラデルフィア・メディアグループが当てはまるとされる。
 米新聞業界、特にメディアオーナーや経営陣を苦しめているのは、会社価値における「評価損」である。23州で56紙を発行するリー・エンタープライゼスは、昨年1年間の営業利益率が20%を記録したにもかかわらず、自社の資産価値が目減りしたことを原因として、約8.9億ドルの純損失を計上。マクラッチーのように負債に苦しむ新聞社もある。同社は2006年にナイトリダーを買収して米新聞業界第2位にランクアップしたが、その買収額46億ドルのうち20億ドルが負債として残っており、そのせいで企業年金を凍結したうえ、さらに年間1億ドルのコスト削減を目指している。その一方で、同社発行32紙の平均営業利益率は21.5%と非常に高水準である。
 全米最大の日刊紙であるUSAトゥデーを発行するガネットも、全社員の一時帰休や株主配当90%カットなどコスト削減を行っているが、やはり新聞事業そのものの営業利益率は全国で18%(2008年)と高い。また、破綻したトリビューン社ですら、昨年1−3月期の営業利益率は5.4%だったのである。
 しかし、この高収益性は安泰ではない。米国を代表する数紙以外では、オンラインメディアへの対応は遅れがちであり、ボーダーレスで読者がアクセスできるオンラインメディアの台頭は、地方都市密着型の新聞社からすると、読者を遠隔地の大新聞に奪われてしまう危険性をはらんでいる。NYタイムズは試行錯誤を続けながらも、全売り上げにおけるオンライン部門の割合が、昨年12%を超えた。ウォール・ストリート・ジャーナルは、記事への課金に唯一成功しているといわれる。恐らくこの2紙のみが新聞社によるオンラインメディア化の勝ち組であり、それ以外の新聞社は、既存新聞メディアの高収益性にあぐらをかいていると、メディア変革の流れに大きく取り残されてしまうことになる。
 ただし新たにオンライン部門拡充に投資することは、重要な経営判断である。そこで判断を誤ると、それが新たな経営リスクを招きかねない。米国の新聞業界は死んではいない。が、重症であることは確かである。新聞業界アナリストのドクター氏は「この3年間にわたり、毎年0.25〜0.33ポイントほど営業利益率は低下し続けており、2009年はより大きな落ち込みになると思われる」と話している。

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