from America

2009.3/vol.11-No.12


大統領就任式という、国を挙げての「お祭り」

 1月20日、第44代米国大統領が誕生し、当日の各メディアはまさにオバマ報道一色となった。就任式の模様はNBC、CBSといった全国ネットワークのみならず、各ローカルテレビ局や新聞社サイト、さらにはMTVやMLB.comといった、エンターテインメント系メディアでもライブ中継され、膨大な数の視聴者が釘付けとなったのである。
 ニールセンによると、就任式当日の午前10時から午後5時の間にテレビで生中継を視聴した人間の数は合計で約3,800万人にのぼる。さらにオンライン中継を視聴した人数は約4,000万人にもなり、なんとテレビでの視聴者数を超えてしまった。これは就任式が昼間に行われたため、仕事中でテレビを見られない人々が、こっそりアクセスしたケースが多かったためと思われる。
 そうまでして見たい就任式。米国のマーケターが、この「お祭り」に乗らないわけがない。ペプシはメーンコピーの「OPTIMISM(楽観主義)」を前面に出し、200万人が訪れたワシントンDCの街を就任式に合わせてジャック。バス停、地下鉄駅をはじめ、大型ビルボードからビルの外壁までも「Yes We Can」「All for One」といったメッセージと共にまさにペプシ一色にして、祝賀ムードを盛り上げた。外食チェーンのTGIフライデーズは、夜9時に全米の各店舗で「乾杯」を行うと予告、無料の料理を提供してオバマ就任に浮かれる人々を集客した。スターバックスも、無料でコーヒーを配布するキャンペーンを実施している。
 しかし、この大統領就任式を最も利用したのは、実は米国企業ではない。ドイツ企業のアウディである。同社は、就任式当日の主要メディアを買い占める勢いで露出を行い、延べ5,700万人を超えるリーチを成し遂げたのだ。まず、全国ネットワークのABC、CBS、NBC各局の夕方6時台のニュース番組でスポットCMを流し、約1,900万人に到達。さらに、主要テレビ局やワシントン・ポスト電子版などのオンライン中継サイトを丸一日買い切って3,000万人、さらには、就任式当日のUSAトゥデー、ウォール・ストリート・ジャーナル、NYタイムズなどの主要紙に、「Progress is beautiful」と題した8ページの広告別刷りを折り込んで860万人、といった具合であり、アドエージ誌が「就任式当日、アウディからは逃れられない」と表現したほどだ。ちなみにこの別刷りはアウディ側が制作したものを折り込んでおり、体裁は各紙共通で題字などは一切入っておらず、各新聞社としては独自の特集別刷りとは区別している。
 就任式に合わせて大規模なキャンペーンを行った理由を、米国アウディの最高マーケティング責任者であるキーオ氏は、「前進する魂は、アウディのDNAでもあるからだ」と話す。米国のマーケターからすれば、自国の一大イベントをうまくさらわれてしまった格好だ。
 米国経済の復興、これはオバマ大統領の緊急課題である。

10面
1月20日 アウディ別刷り <1面>
1月20日 アウディ別刷り <1面>
<7面>
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