Fashion Insight

2009.1・2/vol.11-No.10・11


ブランドビジネスのトップに聞く(1) ラグジュアリーの本質はクオリティー”

クリストフ・ドゥ・プゥス氏
クリストフ・ドゥ・プゥス(Christophe de Pous)
1968年6月19日生まれ。フランス トゥールーズ出身。ISGビジネススクール卒。2004年、ブルーベル・ジャパン株式会社代表取締役社長に就任。妻と1男2女の5人家族。趣味は薬学、アジア文化、オペラ、ジョギング。

ブルーベル・ジャパン
http://www.bluebellgroup.com/jp/

 世界的な景気後退の中で、ラグジュアリー業界も、その影響から逃れることはできない。
 しかし、その中でも売り上げを維持し、また伸ばしている企業もある。ラグジュアリー業界はこれから、この大きな嵐を乗り切るために、どのように舵をとろうとしているのだろうか……。
 香水からファッション、シガーまで輸入販売しているブルーベル・ジャパンのドゥ・プゥス代表取締役社長にお話を聞いた。
   

――昨年のリーマンショックをきっかけに世界的に景気が後退しています。消費の冷え込みも懸念されますが、どのような対応をお考えですか。

 ブルーベル・グループのポリシーは小売価格を適正に設定することです。ここ数年のユーロ高で日本の消費者には価格がちょっと高くなっていたフランスのシューズブランド「ジェイエムウェストン」については、今回、急激な為替の変動があり、ちょうどいいチャンスだと思い20%値下げしました。
 オーバープライスは意味がありません。利益の面ではちょっと厳しいですけど、やはり大切なのは、消費者が満足できるレベルで価格設定することだと思います。消費者からの反応はものすごくいいですね。

――ほかのラグジュアリーブランドも相次いで値下げをされました。やはりこれからはプライスダウンの方向に行くのでしょうか。

 クオリティーよりもプライスを優先、というのが今の社会全体の傾向です。80年代、日本の消費者が買い物をするときの基準はクオリティーでした。でも、92年以降、消費のしかたが徐々に価格志向になってきて、2〜3年前から完全にプライスオンリーになったという感じです。いわゆるファストファッションが伸びてきて、ラグジュアリーブランドは苦戦しています。

――プライスだけで選ぶと、みな同じものを着るようになってしまう。そういう服もあっていいけれど、それを果たしてファッションと呼べるかという疑問がありますね。

 私も個人的にはベーシックなものは好きですが、問題はクオリティーです。安くてデザインもいいと思って買っても、2週間後には捨てるようだと……。

――ディスポーザブルファッションというやつですね。

 環境的にもよくないですね。だから、私が考える本当のラグジュアリーとは、高いクオリティー。本当にクオリティーがよければ20年間でもキープできるんですよ。

――今、余りにも社会全体の流れがプライス一辺倒で、まずクオリティーありきというラグジュアリーの本質というのが忘れ去られているような気がします。

 それは世界的にあらゆるビジネスでそうです。でも、これから変わっていくのではないでしょうか。食品も利益率だけを追求すると変なものが出てきてしまう。やはり価格よりも「安全」や「おいしさ」というクオリティーのほうが大切でしょう? ファッションやラグジュアリーも同じです。

写真3
ブルーベル・ジャパンが扱う代表的なブランド。左から靴で有名な「ジェイエムウェストン」、ファッションでは「ブルマリン」「トゥエンティー エイト トゥエルヴ」
――ブルーベル・ジャパンでは、2009年春夏のシーズンから女優のシエナ・ミラーと姉でデザイナーのサヴァンナが手がけるレディスブランド「TWENTY8TWELVE by s.miller」(トゥエンティー エイト トゥエルヴ バイ エス・ミラー)を展開していますね。

 みんなが欲しがっているのに日本の市場にないモノがまだあると思うんです。「トゥエンティー エイト トゥエルヴ」は、本当にファッションセンスのあるブランド。プライスに敏感な層に対して、新しいプライスゾーンを開発していけると思っています。

――ブルーベル・ジャパンの取り扱う商品でいうと、香水の占める割合がいちばん多いと思うのですが、こちらはそれほど景気に左右されていないような気がしますが……。

 おっしゃる通り。元気がないといわれるデパートの中で例外的に元気があるのがお菓子と香水です。それでも日本の化粧品市場の中で香水の占める割合はまだ1.3〜1.4%。まだ伸びる市場です。香水をつければ、不景気でも、少し元気が出るでしょう?

――そうですね。ちょっと贅沢な雰囲気を味わえますね。

 香水は、つけるとその人の個性が出ます。先ほどの話に戻ると、価格一辺倒で、みんなが同じものを着るというのは無個性的でつまらない。そのことは消費者も徐々に感じていると思います。確かに2009年は、厳しい年になるでしょう。でも、消費者のマインドをつかむことを怠らなければ2010年は逆によい年になると思っています。

写真1
ブルーベル・ジャパン社内に新設された香水のショールーム。扱うのは「クロエ」「ブルガリ」「ドルチェ&ガッバーナ」「ボンド・ナンバーナイン」「マーク ジェイコブス」など多数
写真2
オフィスでのドゥ・プゥス社長。流ちょうな日本語を話す

★★★

 クリストフ・ドゥ・プゥスさんは自称スーパーエコロジスト。通勤も自転車を使い、また将来、田舎(フランス、トゥールーズ市の郊外)に戻り、農業をやりたいという。そんな彼だからこそ、食とラグジュアリービジネスの本質を結びつけて考えられるのかもしれない。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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