from America

2009.1・2/vol.11-No.10・11


広告料お支払いは、現物で

 米国政府が正式にリセッション(景気後退)入りを宣言するなど厳しい不況が続く中、支出を余剰在庫商品や使用していない不動産などの「現物」で支払うことができたら、と考える企業もあることだろう。実際、バーター取引に携わる産業団体である国際互恵取引協会(IRTA)によると、世界の全取引の8%は現金のやり取りを伴わないバーター取引で、その額は640億ドル(約6.4兆円)と試算されている。そして米国においては「現物」で広告を出稿することは、もはや珍しいことではなくなりつつある。
 米広告業界においては、バーターは長らく「最後の手段」とされてきた。広告料金を物納というと、そこはかとない悲壮感が漂いがちで、あったとしても小規模ビジネスが地元メディアに出稿する際のものであった。しかし不況が深刻さを増す中、大型広告主でも検討を開始するところが増え、これまでよりもオープンに取引が実施されていると広告業界誌アドウィークは伝えている。
 アバスグループのメディア広告会社であるMPGのランザノCOOは、「これまでバーター出稿を行わなかった広告主が、熱心に問い合わせをしてきている」と話している。MPGは外部の専門会社に委託して受けつけているが、グループ内にバーター専門のハウスエージェンシーを設けている広告会社グループも多い。インターパブリックグループはマグナ・グローバル・トレーディング、オムニコムグループはアイコン・インターナショナル、エイジスグループはカラ・トレードといった具合である。
 これら専門広告会社の多くは、設立からすでに10年以上の歴史を持っている。彼らはメディアバイイング能力を持つメディア広告会社であると共に、広告料金支払いのために広告主の資産を売却して現金に換える金融会社でもある。対象になる資産は、余剰商品在庫や使用していない工場・土地などの不動産が多いという。広告主としては別途売却して自分で現金化する手間が省けるだけでなく、ワンストップでメディアバイイングも依頼できるうえ、キャッシュフローへの影響なく出稿でき、さらには資産維持費の解消という利点もある。バーター専門広告会社は預かった資産を独自のルートで売却し、広告主専用の口座を開設して、クレジットポイントを発行する。広告主はそれを広告スペースに換える、という仕組みだ。
 前述のマグナによると、バーター広告出稿は北米だけですでに年間30億ドル(約3,000億円)もの市場となっている。さらにヨーロッパやアジアで顕著な伸びを見せており、業界全体では2008年で30%、2009年はさらに35〜40%の成長が見込まれている。現在フォーチュン500企業の多くがこの取引に興味を示しており、その中には、「現在経営危機に陥っている、ある自動車メーカー」も含まれているという。
 IRTAはバーター専門広告会社を選ぶ際の目安として、いくつかのポイントを挙げている。
・広告会社でトレーニングを受けた、メディアバイイング専門のスタッフがいること
・もともと契約しているメディア広告会社を、プランニングに参加させてくれること
・そして何よりも、支払った「現物」を売却するルートが自社の本業と競合しないこと、である。
 米広告業界の裾野の広さに驚くと共に、ここまでやって業界が発展してきたのだと思い知らされた。このビジネス、今後は日本でも需要が高まるのではないだろうか。進出するのなら、早い者勝ちである。

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