Fashion Insight

2008.12/vol.11-No.9


政治家とファッション(2)”

 11月5日、第44代アメリカ合衆国の大統領は民主党の候補であるバラク・オバマ氏に決まった。
 今回の選挙ほどファッションの話題が多かった選挙も珍しい。
 例えば民主党の指名演説で、ミシェル夫人が着用していたグリーンのドレスとアクセサリーはとても評判がよく、彼女の評価もそれによって高まった。また共和党の副大統領候補に指名されたペイリン・アラスカ州知事は、当初その眼鏡(日本製)が人気商品になったが、選挙日間際には、衣装代に15万ドルも使ったことが暴露され、共和党内部からも彼女への非難が高まったという。
 伝統的にアメリカの小売業界のエグゼクティブには共和党支持者が多く、またデザイナーたちは今回オバマ支持が多いとのもっぱらの噂。

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 大統領選挙期間中にオバマ氏のオフィシャルサイトにアクセスしたところ、多くのニューヨークの若手デザイナーがオバマ氏を支援していることがわかった。そのサイト名はOBAMA STORE「RUNWAY TO CHANGE」。
 ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターでもあるマーク・ジェイコブスがデザインしたトートバッグが75ドル、多くのデザイナーがデザインしたTシャツは60ドルで販売されている。
 オバマ氏に賛同するデザイナーはその他にザック・ポーゼンやCFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)議長のダイアン・フォン・ファステンバーグ、アレキサンダー・ワンなど錚々たる顔ぶれ。モダンアートのアーティストまでもが支援していて、彼らの作品もこのサイトで購入できるのだ。勿論これらの売り上げはオバマ氏への支援になる。
 オバマ氏の集金力の強さは以前から話題になっていたが、このようなサイトを見ると、なるほどとうなずける。しかもインターネットやファッション、アートまでも巻き込んだ戦術は、今回の勝利の原因といわれる、若い人たちの支持とは無縁ではないだろう。

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 カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事は、『ターミネーター』などでも知られるハリウッドスターだが、彼は共和党支持で、今回の大統領選でもジョン・マケイン氏を支持していた。その支持演説でオバマ氏のことを腕も脚も細くて頼りないと揶揄していたが、今のメンズ・ファッションのトレンドをご存知なかったのかも知れない。オバマ氏の着用しているスーツは以前にもこの連載で書いたが、トレンドであるスリム・ラインのスーツ。上着の身幅や袖幅も、パンツのラインも細身なのだ。
 007の新作でジェームス・ボンドの衣装を担当したトム・フォードは、90年代グッチに隆盛をもたらしたカリスマデザイナーだが、彼は『TIME』誌で「オバマ氏にはどのデザイナーも、自分のデザインした服を着てほしいと思っているはずだ」とコメントしている。
 たかがファッション、されどファッション。大統領となるオバマ氏とファーストレディーとなるミシェル夫人は、これからどんな服を着るのだろう。

*トム・フォード氏は2001年、第45回FEC賞を受賞、マーク・ジェイコブス氏は2005年第49回FEC賞を受賞している。

日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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