ojo interview

2008.10/vol.11-No.7


直川 隆久氏

直川隆久氏

 「藤原紀香さんおめでとうございます」
 結婚披露宴の当日、昨年5月30日の朝刊に掲載されたKINCHOの新聞広告で、2008年度OCC賞(大阪コピーライターズ・クラブ主催)の最高賞に輝いた。社長からの祝辞の形をとりながら、さりげなく商品を宣伝するしたたかさと嫌みのないユーモアは、数々のCMをお茶の間の話題にしてきた電通関西支社「堀井組」の過剰なサービス精神を受け継ぐ者の面目躍如だろう。
 「まあ、あれは話題性への乗っかりです(笑)。でも、その日限りの一回性の強さや即時性は新聞ならではのものですね。あと、新聞は書き手と読み手の距離が近くて、対話が成り立つ気がするんです。例えば、連載小説風の広告でも雑誌より新聞のほうが、読むということに対して読者が好意的な感じがしますね」
 大阪・南河内の実家を離れて入学した東京大学では、「マイナーな音楽を聴いて酒を飲んでダベる」というマニアックなサークルや、現代美術を教える神田の「美学校」に通うなど、あえて「暗くてウジウジした大学生活」を送った。堀井博次氏らが手掛けた大阪の面白CMに憧れ、95年に電通に入社。「根っからの受け身体質」を自認するが、やることさえ見つかればコピーを書くのは早いという。新聞小説風のシリーズ広告や、ACCグランプリを受賞したラジオCMなど、長い文章を苦もなく書けるのも強みだ。
 「思わせぶりで、なんとなくわかるというのが好きなんですよ。ズバッと核心をつく15秒CMとは違って、新聞や雑誌、ラジオでは、長いコピーで輪郭を描けば、核心をわかってもらえますからね」
 尊敬する中治信博CDに誘われ、10年前から「堂島サバ吉」の芸名で劇団(満員劇場御礼座)に参加。年一回の公演では、個性的な喜劇役者として活躍中だ。
 「僕はCMコンテでも、人のリアクションの描き方が過剰でマンガ的だとよく言われます。それは、小学生の頃に自作のマンガを見せて、級友たちにウケた快感が忘れられないからかもしれませんね」

文/横尾一弘  写真/西村敦

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