経済カフェテラス

2008.10/vol.11-No.7


広がるB to B企業の展示施設 技術力を示し、相手を育てる“種”に

経済カフェテラス

 最近、B to B企業の「我ここにあり」といったテレビCMや広告ポスターが目にとまる。その存在感や企業理念を短い言葉に凝縮してみせる切れ味のよさが印象的で、妙に耳に残る。
 新幹線でも車両の前方と後方によくB to B企業の広告をみかける。名前を知らない、あるいは名前を聞いたことはあっても何を作っているのかよく知らない企業のものもある。しかし、それでも堂々と広告を出しているというだけで、隠れた世界的大企業に違いない、というオーラを感じてしまう。高度な技術力や未来志向を表現するために、一種の謎解きのようなコピーライティングに出くわすことがあるが、そうなるとこちらもつい一生懸命頭をひねって、その正体を見極めたくなる。

「知る人ぞ知る」専門的施設

 かつてのB to B企業は、自らの技術や理念をどう伝えるかということにあまり力を入れていなかった。施設をつくり、自社の製品や技術を子供たちや一般消費者、株主、個人投資家などに見学してもらうのは、B to C企業が中心であった。
 しかし最近では、本格的な展示館やスタジオを設けるB to B企業が現れてきたのである。しかも、地価が高い都心にある本社にそれらが併設されている場合もある。ただ、「その数は?」と聞かれても、定かではない。というのは、その存在がオープンになっているBtoC企業の施設とは違って、原則一般公開はせず、特定の人、知ってもらいたい人だけ案内をする「知る人ぞ知る」というところが少なくないからである。
 一般向けでない分、展示の内容は高度で専門的だ。日常の見学者は、取引先企業の営業担当者や技術者である。そういう人たちに、自社技術をより深く理解してもらい、意見交換の機会を設けることが、営業関係をより密接にし、商品企画につながるのである。
 説明のレベルはビジネスパーソンに照準が合わされており、見学は予約制で、複数の見学者が重ならないような配慮が行き届いている。
 グローバルな展開をする企業では、海外からの来賓の見学も多いそうだ。中には、評判が評判を呼び、海外から元首や政治家が来日する際の視察先の定番ルートになっている展示施設もあるそうだ。こうした場合は見学者が必ずしも技術に精通しているわけではないが、それなりにその技術のすごさ、将来性に興味を持ってもらえるような展示や説明の工夫がこらされていることは言うまでもない。
 見学者が厳選されているのは、展示してある技術のレベルが高く、また未来技術のヒントもあるため、「敵に塩を送る」ことにもなりかねない場合があるからだという。

イラスト

タイトルカット&イラスト・谷山彩子

最先端医療の研修の場も

 医療器具、医薬品、医療用機器などを手掛けるテルモでは創立80周年および85周年事業として、神奈川県に「テルモ メディカル プラネックス」という医療技術の習得と普及を目的とする大型施設を建設している。
 ここには最先端の医療設備や精緻な血管モデルやシミュレーターモデルが配置され、医療技術の研修を行うことができる。またICU、オペ室、ナースステーションなどをそっくり再現し、医療スタッフが看護の研修や動線のシミュレーションを行うことができるようにもなっている。
 2002年の開所以来、月平均250人ほどの利用者があり、利用延べ人数は1万1000人を超えた。利用者は、テルモの顧客である病院単位での申し込みが多いが、こうした医工学ラボは、製品やサービスにかかわる分野での研究機関や企業とのコラボレーションの場にもなっている。
 これらの展示は、企業が自社の技術力を展示するだけでなく、研修の場として、取引先企業に役立ててもらおうというコンセプトを持っていることも一つの特徴だ。
B to Bの一方の技術だけが進歩しても、それを利用するもう片方の「B」が相応の技術力を持たなければ意味がない。

農家を吟味する種苗会社

 先日、トキタ種苗の時田社長にお会いした。種苗会社は種をつくるのが仕事であって、その種で実際に野菜や花をつくるのは農業者であるという意味では、これもまたB to B企業である。
 いまトキタ種苗は「トマトベリー」という新種のハート形をしたミニトマトが人気商品になっている。しかし残念ながら、需要の半分ぐらいしか応じきれていないという。「種をわけてほしい」という注文は後を絶たないが、注文がくるとまずその農家の畑に足を運んで技術力を確認する。同じ種でも、作り手によって、トマトの味が違ってしまう。種苗会社は販売先を育てると同時に、相手先を吟味する眼力と、発掘する努力が必要だ。この会社では農場オープンデーというイベントを定期的に行っている。
 最近、私が見学した中では帝人グループの「帝人未来スタジオ」や京セラの本社の2階にある展示スペースも興味深かった。新聞などで話題の新素材に直接手を触れたり、ソーラーパネルを間近でしげしげと眺めたりする機会は今までなかったからだ。
 よくわかる人はよくわかる人なりに、素人は素人なりに、想像力をかきたてられるのがB to Bの世界ではないだろうか。

もどる