from Europe

2008.9/vol.11-No.6


青いエッフェル塔

 アパートが近くにあるので、いつも守り神のように眺めているエッフェル塔に、6月30日の夜、異変が起きた。普段のオレンジ色がブルーに変わったのだ。中心部には12個の黄色い星のマークが張り付けられ、EUの国旗を表している。フランスが7月1日からEUの首長国となることを記念したイルミネーションだ。
 仕掛け人の一端を担ったのは、フランスに本社を持つ原子力グループ「アレバ」社だった。この夜、エッフェル塔で行われたEU首長国就任の前夜祭パーティーも同社が主催。さらに、6月30日と7月1日の両日、フィガロなど仏主要5紙と、ドイツ、ベルギー、フィンランドの主要紙、欧州版のフィナンシャル・タイムズに、夜景に浮かぶ青いエッフェル塔のビジュアルで、フランスのEU首長国就任のお祝い広告を出稿した。
 7月14日(革命記念日)の夜、エッフェル塔の対岸トロカデロなどで花火があがったが、普段は1時間に1回ぴかぴかと点滅するエッフェル塔は、花火が連射される間はすべてのライトアップを消し、終わりの余韻が消え、暗闇に戻る瞬間に、また静かに青い光をともした。
 アレバは、人々がバカンスに出かける直前の7月末にも、仏主要紙に同じ広告を出稿した。
 同社は、1970年代から原子力政策に注力してきたフランスの原子炉プラントメーカー、フラマトム社と、独シーメンス社の原子力部門とが、2001年に合併してできた比較的新しい会社だ。現在はフランス国内だけでなく、ヨーロッパ、中国、カナダなど世界各国のプラントを手がけている。EU管内での収益は同社の半分以上を占めるという。
 アレバの広報担当者に聞いたところ、この広告は、EUをリードする立場になったフランスと、ヨーロッパのエネルギー産業のキープレイヤーである自社をオーバーラップさせることが狙いだったそうだ。グランゼコールENS(高等師範学校)を卒業した超エリートで知られるアレバの会長兼CEO、アンヌ・ローヴェルジョン女史は、今回の協賛内容についての公式コメントで、「アレバが今後加盟27国の電力事業でキープレイヤーとして活躍していくという方向性の表れだ」と断言した。
 EU管内でエネルギー産業の自由化は進んでおり、フランスの電力公社EDFのイギリスの電力大手ブリティッシュ・エナジー(BE)買収に向けた交渉が話題になっている。BE社が保有する八つの原発がEDF社の狙いの一つだという。アレバの目的は、こうした競争の中での主導権掌握にある。
 ローヴェルジョン女史は、今年4月、フィヨン首相とともにフランス経済代表団の一員として来日、三菱重工との提携を発表した。現在、日本の総発電量に占める原子力の割合が約3割なのに対して、フランスは7割を超えている。アレバは、CO2排出量問題を追い風に積極的な戦略を進めている。
 フランスは、ファッションとグルメの国という印象が強いが、実は、こうした科学技術面で優れた企業も多く、国の独立性とプライドを支えている。
 「青いエッフェル塔」は9月中旬まで続くという。

7月29日 ル・モンド紙
もどる