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2008.9/vol.11-No.6


「いい毒は薬。」に込めた出版への思い

宝島社 宣伝部 宣伝部長 鈴木朝美氏

 今年の宝島社の企業広告は、7月23日の朝刊に掲載された。見開き30段の紙面いっぱいに褐色のビンが並び、ラベルにはそれぞれ“毒気のある”出版物のタイトルが印字されている。見る人の想像力を刺激するビジュアルと、「いい毒は薬。宝島社の活字」のキャッチコピーに、思わずニヤリとさせられた読者は多かったはずだ。

「出版不況」へのアンチテーゼ

 同社の企業広告は、いつでも思い立ったときに始まる蓮見清一社長、コピーライターの前田知巳氏らによる「世間話」のような打ち合わせの中から生み出されるという。今回の企業広告について、宣伝部長の鈴木朝美氏は、「テーマの根底にあるのは、蓮見社長が発案した『本がいちばん!』という宝島社文庫のキャッチコピーです。久しく出版不況が叫ばれている中でも、『本が無くなることはありえないし、他には代えがたい絶大な力がある』ということを言いたかったんですね。それをどのようにビジュアル化するかがポイントでした」と語る。
8月6日 朝刊  「いい毒は薬。宝島社の活字」のキャッチコピー以外にボディーコピーのない新聞広告では、ラベルに書かれた出版物のタイトルがそれぞれコピーの役割を担っているように見える。一方、ホームページには「日本人にもっと毒を。」と題して、より社会性の強いメッセージを明確なコピーで打ち出した「Web用広告」を掲載している。
 「今までの新聞広告はボディーコピーの評判もすごく高かったので迷いましたが、みんなで考えた末に、今回の新聞広告ではビジュアルを中心にメッセージを伝えようという結論になったんです」
 Webなどを通じて寄せられた感想には、メッセージに賛同する声のほか、「この本を読みたいと思った」「これは読んだけど面白かった」などの声も多かったという。これまで同社が展開してきた社会的なメッセージを発信する企業広告に比べると、一見、書籍のタイトルを並べた商品広告のようだが、「この程度のタイトルの出し方で本が売れるとは思わなかったので、あまり販売促進的なことは考えませんでした。でも、新聞広告を見た読者の方が細かくタイトルを見てくれて、本の内容にまで興味を持ってくれたことは、宣伝の立場からすると驚きでしたね」。
 一方では、「不謹慎だ」などの批判的な意見も寄せられたが、「いつも企業広告にはネガティブな反応が来るんです。でも、それも一つの反応だと思って、ポジティブに受け止めています」と鈴木氏。
 同社では、編集、営業、広告、宣伝など関係部署の社員が集まり、一つひとつの出版物のタイトルからPR方法、価格戦略にいたるまで自由闊達に意見を出し合い、売るためのマーケティングをみんなで徹底的に考えているという。出版業界が口をそろえて「本が売れない」と嘆く中、活気にあふれた社内の雰囲気が同社の好調な業績を支える要素の一つとなっているのは、間違いないことだろう。
 「一度、社員研修で宝島社に残しておきたいものをテーマに話し合ったことがありました。男女差別や年功序列がなく、風通しの良い社風はもちろんのこと、多くの社員が『企業広告』を挙げたんです。社員の期待も高い企業広告は、やっぱり大切に続けていく意味があると思いました」

10年分の企業広告を一冊に

別冊宝島1502号

 98年の1月3日の朝刊に掲載された「おじいちゃんにも、セックスを。」以来、10年にわたって新聞に掲載してきた企業広告をまとめ、今年2月に「別冊宝島1500号突破記念号」の一つとして刊行した。
 「自社の企業広告をテーマに本を出すというのは手前味噌になりがちですが、できるだけ自慢話に見えないように制作秘話や苦労話などではなく、社会性や時代性を持つような内容を心がけました。売れ行きは予想以上に好調で、私たちの広告に興味を持ってくれている人がこんなに多いんだと、あらためて嬉しく思いましたね」
 過去にはテレビCMを流していたこともあったが、企業メッセージを発信する場は、同じ紙媒体である新聞広告をベースにしている。同じ日に多くの人に一斉に見てもらい、すみずみまで読んでもらえるというメリットも大きいという。
 「テレビCMはその場で消費されてしまって、意外と記憶に残らないことが多いんです。やっぱり、こうしたメッセージを伝えるのに最も適した媒体は新聞だと思います。これからも社会性を意識した宝島社らしいメッセージを、新聞広告できちんと伝えていきたいと思っています」

7月23日 朝刊
読者モニターコメント

(横尾)

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