こちら宣伝倶楽部

2008.8/vol.11-No.5


プライベートブランドの誤解

イラスト

 スーパーなどのチラシからカップ麺が姿を消した。原材料高から容器含みで値上がりし目玉商品でなくなったからだ。チラシだけでなく店内でも肩身の狭くなったものが増え、刺し身はさりげなく薄切りになったし、とんかつも細身のダイエット揚げになった。鶏は餌代のせいで高値になったが、その卵は餌を食べないので高くなっていないのに、それを使ったマヨネーズは高値更新している。日常生活レベルであらゆる角度から息苦しさを増長させ、暮らしにくい国の地固めが進んでいる。

メーカーの投資があるからPB

 大手GMSのトップは「こういう時こそ我々は価格維持のために全力を発揮すべきだ」とコメントした。まことに美しい。小売業のふんばりどころだし、お客様第一の実践だ。
 そしてでてきたのが「プライベートブランド(PB)」の強化、急拡大だ。最大手のイオンは「トップバリュ」ブランドを、10年後までに5000から6000品目にして売上高は約3倍にもっていくというし、セブン&アイは「セブンプレミアム」ブランドの09年度売上高を07年度の4倍に、西友は「グレートバリュー」ブランドを1.5倍にするという。ユニーは傘下のサークルKサンクスと共通のグループブランド「UUCS」を立ち上げ、ライフは「くらしモア」ブランドを強化する。ダイエーは「セービング」ブランドをイオンの「トップバリュ」に切り替えるそうだ。PBの安値感はこの時期、消費者に与えるインパクトは大きい。
 ものにもよるが、印象としては通常のメーカー品よりPBは1〜3割ほど安く、冒頭にあげたカップ麺のように、大手メーカーが値上げせざるを得なかった商品と同じアイテムが各店とも好調なのは想像できる。今のところ食品が主だが家電製品や衣料品にもPBが増えつつあり、知名度はないけど売り場で納得した割安商品が家庭にはいりこんでくる。
 PBは「うちだけのブランド」、いわば店舗限定商品で、小売業者が商品企画と開発をすすめ、メーカーに製造を依頼して小売業者が独自のブランドをつけて責任販売するもの。だからメーカーはその販売促進のために表向きはなにも協力しない。しかしコンスタントに売れてくれないとメーカーは計画がたてられないし、コスト計算も狂ってくる。弱みと強みのあいだでいろいろなかけひきがきっとあるはずだ。たいていはメーカーが呑みこむことが多いはずだが、すべての責任は販売店にある。がんばっても売り上げ構成は10%以内だろうし、PBだらけの店は魅力に欠ける。そのリスクも小さくない。

宣伝しないから安いなんて

 一般にPBはメーカー品より安い。安いものを求める消費が増えるとPBは伸びる。問題はその「安い理由」。ほとんどのコメントは「PBは商品CMなどの宣伝費はほとんどかけず、容器や包装コストも最小限におさえているから」であり、「宣伝費がかからず、余分なコストを削減しているから」とある。間違いだとは思わないが「宣伝費がかからないから安くなる」はどうもひっかかる。簡単にコメントしてもらっては困るし、簡単に記事にしてもらっても困る。PBの場合は広告しないのではなく「広告できない」が正しい。店舗限定商品だからエリアと客すじが限定されるし、全社売り上げの数パーセントのシェアでは常識的に広告費はでにくいし、ロスもでる。この場合は広告でなく「狭告」「店内告知」でいいわけだし、せいぜいチラシが主たるメディアになる。企業広告の素材として自社のPBをあしらう場合のみマスメディアを必要とする。
 PBが安定ブランドになって通常のメーカー品とせり合うようになってくると「安いには理由がある」ということに関心が移ってくる。今のところ食品中心だからこそ、その「安全性」「品質の安定」など「ブランドのクオリティー」が急速に注目されるようになる。PBが支持され続けるための条件だ。最近ひんぱんに発生する手抜きや手抜かりの不祥事がでると、店全体の一大不信になってしまうことがある。PBのもつ小売業の責任とリスクとはこういうことだ。現場で割安感を供給することはいいことだが、そのPB商品に取り組み、積極的に開発する小売業(企業)としての自覚と責任は、企業広告として熱く語るべきだ。日本の農業をどうするのか、安全な水をどこに求めるのか、あいまいな指示にふり回される地方の酪農をどう支えるのか、日本の漁業をどう考えるか。こういうことに堂々と立ち向かって経営領域に取り入れていく、その成果としてPBを堂々と出してほしい。

「なじませていく」ことのコスト

 広告するから商品が高額になるというが、メーカーはそのひとつひとつの原価計算書に広告宣伝費を加算しているわけではない。総売り上げ、全体成果の中から、企業としての戦略費をひねり出し、その一部が宣伝費になるというのが通常だ。そこがメーカーと小売業の違いだ。消費者心理として「知っているブランドと知らないブランド」は区別するし、「行ったことのある店と行ったことのない店」も区別する。「聞いたことのあるなし」もチェックして、それが「信用」や「信頼」の芽になる。安いからという理由だけで今のところPBに関心があるとしたら、物価が安定してくると本来は全品買いとりが原則のPBはそれぞれのお荷物になる可能性がある。だからこそ全体シェアの上限が計算されている。そのうちゆるやかにPBはメーカー品より高値、つまり高品質、高級、本物志向にもっていく知恵が必要になってくるだろう。
 単純計算で広告しないから安くつくというのではなく、広告はそのブランドとの「なじみ」を育てること。売り手(作り手)と買い手(使い手)が「なじんでいくこと」。短期でなく長期で考えるのが広告を使うビジネスだ。

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