from Europe

2008.6/vol.11-No.3


個人のエコと国家のエコ

 東京を離れてからの私は少しだけ環境に優しくなった。大量の紙を毎日消費するのにいたたまれず、使用済みの紙を裏返してはコピー機に入れて再利用している。父親に「落書きはチラシの裏にしなさい」としつけられたのを思い出す。パリも分別回収が進んでいるので、ゴミ箱に捨てても何かに再生するのかもしれないが、このほうが、より気が楽だ。 
 新聞を見ていると、欧州が環境先進国であることを痛感する。
 4月中旬、7月の北海道洞爺湖サミットに関して、フィガロ紙の国際広告担当が「汎欧州の企画を提案予定。日本で環境に関心の高い企業は?」とアドバイスを求めてきた。同紙は、昨年10月、サルコジ大統領肝いりで、政府とNGO、地方自治体、企業が一堂に会した「環境グルネル懇談会」の最終会議の日程にあわせ、本紙内16ページの特集を組んだ。懇談会の政策発表とともに、グルネル家の家族4人が朝起きてから寝るまでどのくらいのCO2を排出するかを紹介し、読者の環境への関心を促す内容。フォルクスワーゲン、EDF(フランスの電力会社)、クレディコーポラティフ(金融)と、環境省などの広告が掲載された。
 欧州企業の環境政策は、国ごとの政策に加え、欧州委員会が定める法的な枠組みで固められる。自動車の場合、EU全体では2012年までにCO2排出量を走行1kmあたり120gに削減する目標があるが、現在、CO2排出量が少ない自動車への優遇税制を敷いているフランスに次ぎ、大型車が多いドイツでもCO2を基準にした税制が来年スタートする。こうした政策は消費者の購買行動にダイレクトに影響するため、各企業とも生き残りをかけて開発に必死だ。
 近ごろ最大の環境関連広告は、4月17日付ル・モンド紙のアウディの見開き広告だ。“大きな4ドアセダンがきれいになくなれば人は幸せになるだろう”というメーンコピー。アウディは、2010年の環境基準に先駆けて、全車種の85%でリサイクル対応の部品を使用しているが、2015年までには95%をリサイクル対応型にシフトするという。
 2012年まであと4年。次の夏季ロンドンオリンピックの年がCO2削減のゴールの年だ。欧州では、個人のエコ意識を高めることと並行して、政府や企業単位での政策、競争が活発だ。日本でも最近、CO2排出量取引が注目されているが、すでに市場の80%を欧州が握ったそうだ。今後、国家間の取引が活発になると、石油のように高騰してしまうのだろうか?
 さて、この時期見た新聞広告の中で印象に残ったのが、4月17日付のル・モンド紙に掲載されたタクシー会社「G7」の広告。CO2削減を宣言する企業広告だが、ビジュアルが新鮮だ。トヨタのハイブリッド車プリウスのフロントからバックミラー、ドアにいたるまで緑の芝が生えていて、トヨタマークと、ルーフに載った「TAXIパリジャン」の看板だけが生々しい。パリは東京に比べてタクシーが少なく、あまり利用しないが、こんなアートのようなタクシーがあったら絶対に乗ってみたい。G7は、この日から、プリウスの採用を2倍に増やし、運転手は環境に優しい運転を心がけるそうだ。

4月17日 ル・モンド紙
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