from America 2008.5/vol.11-No.2

ケンカするほど仲がいい?
 米検索最大手のグーグルは、サーチエンジンとしての検索データベースを作成するために、「クローラー」と呼ばれるプログラムを用いて世界中のありとあらゆるウェブページを回収、分類して保存している。つまり、ウェブ上にあるものはすべて勝手に取得されてしまうわけで、世界各地で著作権者から訴訟を起こされる要因となっている。新聞社サイトの記事も当然ながら回収の対象であり、グーグルニュースとしてまとめられユーザーが閲覧している記事も、プログラムが自動的に回収したものである。
 このことに絡み、3月13日にはパリに本拠をおくWAN(World Association of Newspapers:世界新聞協会)が、グーグルに対する抗議文を発表した。WANは77の各国新聞協会、102か国の単体新聞社、12の通信社などを始めとする合計18,000以上の新聞社を代表する組織である。『グーグルは著作権に敬意を払え』と題したそれは、新聞社のウェブ記事を勝手に収集・整理して検索対象としないように新聞社側でコントロールすることができるACAP(Automated Content Access Protocol)と呼ばれるプロトコルを導入することも強く求めている。ACAPはWANを始めとする出版関係集団が開発し、イギリス、フランスなど世界16か国以上の主要新聞社・出版社ですでに使用されている実績があると紹介されている。
 これまでもrobots.txtというプロトコルがその役割を果たしていたのだが、WANによると、これはあまりにもシンプルすぎて、新聞社側で十分なコントロールができないのだという。そこでこれに代わるACAPの導入をかねてから両者で協議していたところに、グーグルヨーロッパの役員が「robots.txtは多くの出版社が要求するニーズを満たしている」と発言、WANの逆鱗に触れたというわけだ。
 WANのオライリー会長は、自らはコンテンツ開発力を持たないグーグルが、新聞記事のような第三者の著作物を「検索結果」というコンテンツとして、検索連動型広告を始めとする収益に直結させていることを快く思っていない。例えばACAPの導入によりプログラムによる自動的な記事回収を十分にコントロールできれば、その見返りに課金することも可能になる。新聞記事は何のコストもなしに生み出されたものではなく、背景には相当の人的努力と多大な経費がかかっている。「グーグルは他人の褌で相撲を取るな」という論理である。
 しかしその反面、ACAPは検索対象に制限をかけることにつながり、検索エンジンとしてのグーグルの存在意義に影響を及ぼすことにもなる。さらに、検索結果で記事の見出しを確認し、そこから新聞社サイトへとリンクしてくる一般ユーザーが、各サイトのページビュー数を押し上げていることを忘れてはならない。そのページビューは、新聞社側が広告主に1pv当たりいくらとして販売できる「在庫」となる。ページビューが増えるほど在庫も増え、売り上げも増える。特に米国では中小規模の新聞社が多く、新聞社サイトを最初から目指してくるユーザーよりも、検索結果から記事にたどり着く方がよっぽど多いだろう。
 検索サイトと各新聞社サイトは、敵対関係でもあり、共存関係でもある。抗議文から1週間後、グーグルのシュミットCEOは「ACAPに間違いなく協力する」と声明を出した。両者が互いに最大の利益を求めてどう協議していくのか、注目である。


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