こちら宣伝倶楽部 2008.4/vol.11-No.1

広告クリエイティブの戻る場所
イラスト 4月は多くの社にとって新しい会計年度のスタート、いわば会社の新年事始めだ。キャンペーンも始まるし、新体制も動きだす。カレンダーは4分の1過ぎてもう後には引けない。広告活動にエンジンがかかり、初期の感触も早いところではわかる。それはそれで動かしておいて、「これでいいのか今のこと」を考えてみる。例えば広告の発想と仕事ぶりについて、次の10項目を考え直してはどうか。

グラフィックとイラストレーション
この洗練と説得力の研究を急げ

 サントリーの松浦由一さんからいただくミュージアムポスターのカレンダーにはいつも絶句する。忘れかけていたグラフィックデザインの魅力に刺激を受け、日本の広告にイラストレーターの出番がなくなっていることに気づき、広告表現は原点を見失っていると思い、サヴィニャックの絵に広告の企画そのものが刺激される。私たちは育てなければいけないクリエイターのことを忘れている。

文字できちんと伝える
それが良識ある広告の基本だ

 企業や商品はきちんと伝えなければならないことを必ず持っている。だからこそ広告をし、宣伝費を投入するのだ。そのことを片時も忘れないこと。「知らせる」と「伝える(わからせる)」は違うもの、それを忘れると広告が横道にそれ、無駄のたねができる。
 宣伝部の思惑が会社の決心覚悟とずれてはいけない。広告のほとんどは正座してきちんと伝えることが多い。文字や言葉がそれを助ける。企業の良識は言葉でこそ伝わる。

タレントから考え始める
宣伝部長は辞めなさい
 1億円タレントがいるらしい。3千万や5千万円はざらだ。選挙のために働く政治家がいるように、CMのためにがんばるタレントもいる。無能なバイヤーは商品コンセプトよりCMタレントに興味を持つのが増え、メーカーの広告作法を狂わせている。広告の主題から目をそらさず、広告の正論と正攻法に知恵を絞ること。タレントは脇役、脇役が主役をしのぐような道を選んではいけない。

相手に考えるきっかけを与える
結論は顧客に出させること

 さきに発表された子どもの学習到達度調査で、日本の15歳の読解力は世界で15位(1位は韓国)、詰めこみの暗記や公式主義にはしりすぎ、読みとって考え、表現するという能力が日本人に不足しつつあると報告された。
 広告とてなにがなんでも主張しまくり、結果や結論を示してどうだといわんばかりの広告でなく、相手に少し考える余裕を与え、相手に信用の結論を出させる広告を考えたい。

有名クリエイターに媚びるな
仕事を投げ出す行為だ
 広告づくりのプロや名人と思いこんでいる広告職人は多い。広告は広告主を主役にした共同作業とわかれば、個人の力というのは大したことでなく、むしろ変に突出しすぎていると迷惑になることが多い。広告職人のネームバリューに溺れぬこと。それに頼りすぎやもたれすぎは仕事を半分投げだしたようなもの、いかにいいチーム編成ができ、気持ちよく仕事ができるかのディレクターは宣伝部長だ。

モノクロ写真の端正
ブランドの品格はモノクロでつくる

 カメラマンの塗師岡弘次さんからいただくカレンダーは、いつもパリの風景がモチーフでしかもモノクロだ。よく考えた構図と繊細はモノクロでこそ光る。写真の原点はモノクロ、カラーは想像力を刺激してくれないがモノクロだと写真と対話ができる。周囲に良質のゆっくりした空気が流れる。けたたましい広告がよいという発想はこれからさき古くなっていく。モノクロの品位を再確認しよう。

一流と組んで学習せよ
純制作費は惜しまないように
 牛丼じゃあるまいし「安くて早くて従順」だけが理由でクリエイターを固定してはいけない。タレントやロケ撮影などの不透明部分の多い経費はマークしなければならないが、純然たる制作にかかるコストは惜しみすぎないこと。二流はいつまでたっても二流だし、二流のネットワークはいつの間にか自分もその中にまざりこんでしまう。一歩すすめ、一段あがってクリエイティブを改善すること。

機械加工しすぎないこと
広告は作品づくりではない

 コンピューターの普及でクリエイティブのほとんどは不可能を可能にした。最後は商品としてきちんとしたものを「作品提出」したいと考えるディレクターは、機械操作でそれを修正、加筆、訂正、転換する。途中で季節や場面をごっそり替えてしまうのも珍しいことでなくなっている。最近の広告画面では作られすぎたビジュアルが多すぎる。そのことが広告の感動を少しずつ確実に弱くしている。

静かな宣伝部では駄目
パソコンなど閉じなさい

 宣伝部に限らず「静かな職場」が増えている。特に朝一番はメールの確認で職場が死んでいる。隣や向かいに座っている仲間にもメールで連絡しあったりするのは堕落だ。
 こういう時代は激しく熱心な仲間との議論がいる。内部で納得するまでの話しあい、意見交換が本当の仕事になっているはずだ。それを聞いている周囲からも参加し、方向や共通認識やチーム結論がでたりするものだ。

町に出なさい 店をのぞきなさい
自分でたしかめて気づきなさい
 広告は投げたボールだ。次の一球はどんなタマにするか考える。結果をシーズン終了後の報告で判断するのはまちがいだし怠慢だ。
 フィールドへ出よう。町に出る、売り場を訪ねる、若い営業マンから聞きとりをする。場合によっては家人に意見や感触を聞いてみること。自分でたしかめ、自分で気づき、自分で修正や巻きかえしの緊急案を見つける、広告の送り手は広告の受け手でもあるべきだ。
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