インテグレーテッド・コミュニケーションの時代 2008.4/vol.11-No.1

「戦略的ビジネスプロセス」の視点
 今回からは、次世代のマーケティングコミュニケーションの視点をもって、新しい広告コミュニケーションサービスのあり方を考えてみたい。題材とする新しいサービスのあり方を「インテグレーテッド・コミュニケーション」と呼ぶことにする。JAAA(日本広告業協会)でも昨年「インテグレーテッド・コミュニケーション新時代─統合キャンペーンのフレームワークとコミュニケーションデザインとは─」と題してセミナーが実施された。

ネット社会での最適化

 インテグレーテッドというワードを使うとなると、IMC(インテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーション)という概念はずいぶん前からあって、シュルツ教授、コトラー教授など名だたる研究者たちが、マーケティングコミュニケーションを統合するという考え方を提唱してきた。ただインターネットがマーケティングコミュニケーション環境を劇的に変えてしまった以前からの概念なので、ひと時代前の、ちょっと古い考え方と理解している方も多いだろう。
 しかし、その本質は、今のネット社会でも決して色褪せてはいない。むしろ企業のインターナルな組織体制なども含めた「戦略的ビジネスプロセス」として考える視点は、ネットによってあらゆるマーケティングコミュニケーション構造が変わってしまう今だからこそ意味を持っている。
 ただネット社会のコミュニケーションの本質を体感的に理解している世代のコミュニケーションの有り様をつぶさに見ると、その考え方や手法は実に大胆かつ本質的に変化しており、送り手であるマーケターより、そうした消費者、生活者が主導権を握る時代だということを前提に、発想の大転換を図った上で、「統合」する要素を選別したり、変換したりする必要がある(そこが従来のIMCと多少違うかもしれない)。
 そういう意味で、クロスメディア、クロスコミュニケーションの次の概念がまた「インテグレーテッド」というワードで表現されるのには訳がある。クロスコミュニケーションという考え方は、「消費者にとって価値のあるコンテンツをブランデッドコンテンツに変換し、それを様々なコミュニケーションチャネルの機能に応じた役割をもたせてキャンペーン全体をデザインする」というものだ。
 しかし、これはキャンペーンデザインの新しい考え方ではあるものの、こうした活動を企業の「戦略的ビジネスプロセス」に組み込むには、企業自身がいわゆるスルー・ザ・ラインで全体最適が図れる組織構造と人的スキルを手に入れる必要がある。もちろん最適化のための極めて重要な活動としての、ROIを常に測定するという行動様式を含めてである。

広告と販促と広報の統合

 手法としてのWebマーケティングは、企業にどんどん採用されているが、企業自身のマーケティング推進体制は、従来のマスマーケティングをベースにしたものになっている。広告と販促と広報は組織もミッションも別々である。これはそれぞれの効果が別々にしか分からない時代のものである。顧客獲得活動だけとっても、ネットをマーケティングに活用することで、どんな広告スペースやメッセージに反応してきたユーザーが、単価やリピート率も含め、どんな顧客となったかが追跡可能であり、その費用対効果を詳らかにすることができる。こうした環境に合わせて企業の組織概念も再編が必要である。

統合のための体制やスキル

 インテグレーテッド・コミュニケーションという考え方を、次世代マーケティングコミュニケーションの視点の最初に提示したのは、クロスコミュニケーションを「戦略的ビジネスプロセス」に組み込むことまで意識した、コミュニケーション開発スキルを定義してみたいからだ。これはある意味コンサルティング領域のスキルも含まれる。ただコンサルティングサービスが具体的なアウトプットを用意できない場合が多いのに比べ、具体的な施策と新しい施策遂行のためのマーケティング体制を提案することになる。
 インテグレーテッド・コミュニケーション発想に立つと、まずアバブ・ザ・ライン、ビロウ・ザ・ラインという考え方がなくなる。従来販促施策と呼んでいたことのほとんどは、消費者とのコミュニケーションチャネル施策であり、広告と販促を分離して、それぞれの部分最適に走ることは意味がないばかりか弊害が多い。販促を消費者接点プランニングの部分とインターナルな施策(営業マンマニュアルなど)に一回整理して、従来アバブ・ザ・ラインと呼んでいた要素と統合を図る必要もあるだろう。
 「『戦略的ビジネスプロセス』に我々の提案している広告キャンペーン提案を組み込むことができるものなのか」を再考してみる必要がありそうだ。
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