特集 2008.3/vol.10-No.12

メタボ市場は拡大するか!?
 メタボリックシンドローム、略して「メタボ」。心当たりのある中高年には少々耳の痛い言葉だが、この4月から始まる「特定健康診査」「特定保健指導」をきっかけに、新制度に直接関係する分野だけでなく、食品・飲料メーカーからIT企業まで巻き込んで数兆円の新市場が生まれると期待されている。メタボ市場は拡大するか!? 主なターゲットである中高年男性の攻略法も探った。
健康市場の中のメタボ市場

 予備群を含めると対象者が約1900万人と推計されるメタボリックシンドローム市場。この4月から実施される特定健康診査・特定保健指導でにわかに注目を集めるようになったこの市場は、どんな特色を持っているのだろうか。新制度の概要と市場の可能性について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有元裕美子氏に聞いた。

――この4月から始まる「特定健康診査」「特定保健指導」とは、どのような制度なのでしょうか。
 健康保険組合や国民健康保険組合などの医療保険者に、40歳以上74歳未満の被保険者・被扶養者全員を対象とした「特定健康診査」、いわゆるメタボ健診と「特定保健指導」が義務づけられるという制度です。特定保健指導では、健診結果から得られた生活習慣病のリスクに合わせて該当者に生活習慣改善の指導が行われます。


 ――実施が保険組合に義務づけられるということですか。
 そうです。厚生労働省は、これまで生活習慣病の予防に重点をおいて、一人ひとりの自主的な生活習慣の改善を促す「健康日本21」を推進してきましたが、成果がほとんど出なかったんですね。それで、今度は自治体や個人の自主性に任せるのではなく、健康診断を実施する保険者、つまり企業が組織する健康保険組合などに責任を持ってやってもらおうとなったのです。健診・保健指導の実施率やメタボ該当者・予備群の減少率などが厳しく評価され、達成度が低い医療保険者にはペナルティーが科せられます。そういう制度がこの4月から始まるのですが、皆さんあまり知らないですね。

 ――健診の結果、腹囲(ヘソ回り)が男性は85センチ以上、女性は90センチ以上は特定保健指導を受けなければならないということですが。
 はい、腹囲がまず基準になります。もう少し詳しく言うと、腹囲が基準以下でも体重(キログラム)を身長(メートル)で2回割った値(BMI)が25以上の人も対象です。さらに、追加リスクとして血糖、脂質、血圧の基準値が設けられています。
 特定健康診査の対象者は、健診の結果によって「情報提供レベル」「動機付け支援レベル」「積極的支援レベル」の3段階に階層化されます。腹囲が規定以上の人は、血糖、脂質、血圧が二つ以上基準値を上回れば「積極的支援レベル」、一つが「動機付け支援レベル」、ゼロが「情報提供レベル」と分けられます。
 また、追加リスクが一つでも基準値を上回った人で喫煙歴がある人はさらに1プラスされます。つまり、喫煙者は血糖、脂質、血圧が一つでも基準値を上回れば「積極的支援レベル」になるということですね。
 BMIが25以上の人は、追加リスク三つで「積極的支援レベル」、一つから二つで「動機付け支援レベル」、ゼロで「情報提供レベル」になります。
 「積極的支援レベル」と判断されると、3か月から6か月の面談やメールなどによる食事と運動の指導が行われることになります。

 ―― 今回の制度は、生活習慣病による医療費の削減が大きな目的になっていると言われていますね。
 日本の医療費は現在、年間30兆円以上になっていますが、メタボリックシンドロームによって引き起こされる生活習慣病が3分の1を占めていると言われています。今回の制度を見てもわかる通り、日本の場合は「予防」がクローズアップされていますが、メタボリックシンドロームの概念が生まれたアメリカでは肥満はさらに深刻で、完全に医療の問題、投薬による治療が主なんです。日本のように運動して痩せましょうというレベルの問題ではないんですね。

制度によって生まれる新市場

 ――特定保健指導の基準ですが、中高年男性のかなりの人が当てはまりそうですね。
 制度の対象者である40歳以上74歳未満で、メタボリックシンドローム該当者が900万人強、予備群が1000万人、両者を合わせると1900万人と言われていますね。男性が予備群を含めると1400万人で、女性は500万人強です。

 ――メタボリックシンドロームは男性のほうが圧倒的に多いのはなぜですか。
 健康に対する男女の意識の差が大きいと思いますね。男性の場合、健康は生活の中で優先順位が低いということです。男性に比べ、女性は全般的に健康意識が高いんですね。
 男性と女性、どちらが太りやすいかと言えば、本来はホルモンバランスの変化で女性の方が太りやすいのですが、実際は女性の方が肥満は少ない。また、肥満気味の女性も、調査を見ると魚や海藻を食べるなど他の女性よりむしろ健康にいい行動をしていて、健康意識は高いのです。
 メタボリックシンドロームの中心は、中高年男性と言っていいと思います。

図1 メタボリックシンドローム発生率(単位:%)
 
図2 メタボリックシンドロームの推計人口(単位:千人)
メタボリック症候群・予備群発生率:厚生労働省「平成16年 国民栄養調査」、
推計人口(2005年):総務省統計局「推計人口(平成17年10月確定値)」

 ――有元さんは、新制度をきっかけに作られるメタボ市場を最大1兆7000億円と推計されていますね。
 新制度によって生まれる市場を二つに分けて考えています(表2)。一つが「アウトソーシング市場」で、特定健康診査、特定保健指導に付随する市場が生まれると考えています。保険組合が制度を遂行するためのアウトソーシング市場は約2000億円程度になります。
 これまでもほとんどの保険組合の健康診断はアウトソーシングされていましたが、それがさらに拡大するということです。個人のデータの管理から始まって、受診券の送付、健診に付随する業務までアウトソーシングされる。それから特定保健指導の実施ですが、今回の場合、今までの健診のようにやりっぱなしではなくて、指導の結果を分析、評価しなくてはいけないことになっています。報告書の作成もアウトソーシングされると思います。これらはおそらく、今までの健診事業者がそのまま引き継ぐでしょう。
 それから、今まで健診結果を電子化していない健保組合がかなりありました。医療の世界ではカルテの電子化が進んでいますが、今回の制度を機に健診分野でも電子化が進むと思います。先進的な健保組合では、健診の電子化だけでなく、医療機関とのデータの統一化に向かうと思いますね。
 また、各自にウェブ上にマイページを用意して、体重や体脂肪率などの推移がわかるようなサービスも、すでに各社取り組んでいますね。



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